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珈琲に魅せられた話 (完杯)


珈琲豆の自家焙煎を繰り返す日々。
今度は、珈琲の淹れ方の違いでどうなるのか気になってくる。


気がついたら、V60円すい型ドリッパー、水だし珈琲セット、エスプレッソマシーン等、様々な器具が目の前にあった。もちろん、珈琲ミルもエスプレッソ用から粗びきまで好みの粒度で豆が挽けるモノに変わった。

とりわけ水だし珈琲にはまり、何故か水だし珈琲を使ったゼリーまで作り始めた。ゼリーにはゼラチンしか入れず、珈琲の味を引き立てるために、バニラアイスクリームをトッピングして楽しんだ。

同じ頃、洋酒にもはまっていて、珈琲ゼリーを手土産に馴染みのスナックに通っていた。

マスターや馴染みのお客さん達は美味しいと言ってくれていたが、それは珈琲ゼリーに添えた高級バニラアイスクリームのお陰だったのかもしれない。


ある時、取引が多かった商社の担当から、会社の保養所に泊まりで行こうと誘われた。もちろん、珈琲セットと共に参加した。

その日の夕食後、少し落ち着いてから珈琲を淹れることになった。

お湯を沸かす間に、サーバー、ドリッパー、ペーパーの準備をした。そして、珈琲豆を挽こうとしたが、いくら探してもミルが見当たらない。

何と、肝心なミルを入れ忘れて来てしまったのだ。

しかし、無いものは仕方がない。
色々考えた結果、硬いモノで粉々に砕くことにした。

選んだものは、インスタントコーヒーの瓶の底。

正に愚の骨頂。
珈琲豆でドリップした珈琲を淹れるために、インスタントコーヒーの瓶で砕くという愚行。

淹れては見たものの、そんなモノは当然美味しいはずもない。結局、おとなしくインスタントコーヒーで乾杯したのであった。



おしまい。

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