自転車に乗り始めた理由 ~初めてトラック競技用自転車に乗る~
ダイエット目的で始めた自転車だった。
「君は短距離向きだから、トラック競技やろう」
その一言にのせられ、トラック競技用の自転車にも乗ることになった。
トラック競技は、ツール・ド・フランスのようなロードレースと異なり、鉢状の周回コースで行う。解りやすく言えば競輪場だ。
数日後、自転車は貸すから練習行くぞ!と練習に誘われた。集合場所だけ教えられ、車に乗り込んだ。
車のなかで聞いた行き先は、県境を2つ越えた秋田県内にある、周長333メートル、最大勾配34°の町営の競技場だった。
競技車両にはブレーキがない。そして、後輪とギアが固定されている。つまり、タイヤが周り続ける限り、クランクペダルも回り続ける。
さらに、ペダルとシューズは、ペダルに固定されたトゥークリップと呼ばれる器具と革ベルトでガチガチに固定しなければならない。どうやってベルトを締めるかというと、クランクペダルを回しながら締めるとのこと。
不安だらけだ。
そんな気持ちのなか自転車にまたがり、ペダルを軽くふみこむ。
ゆっくりと回るペダルの動きに合わせて、シューズをトゥークリップに差込む。ペダルの動きに合わせて革ベルトに手を伸ばすが、ちょっとの差でベルトが通りすぎて行く。
そんな事を繰り返しながら、何とかベルトの締め付けが終わった。いよいよ周回練習の開始だ。
深く息を吸い込んだ後、息を吐きながらペダルを少し強く踏み込んだ。
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?