真実の盗撮事件簿 十七 白浜町の怠慢

少し話しは飛ぶのだが……和歌山盗撮事件の終了後も黒木氏との付き合いがあった。2件の殺人事件の取材を協力する中で、二人の黒木昭雄を見た。「元警視庁警察官としての黒木昭雄」そして「捜査するジャーナリスト黒木昭雄」

 すべての犯罪に怒り、被害者や遺族の悲しみを背負い、二人の黒木昭雄が事件を追う。「現場百回」という言葉の通り徹底的に足取りを追い情報収集のため動く。「和歌山県警東警察署留置所内リンチ殺人事件」「奈良県平群町で発生した少女殺人事件」その取材過程の中で、捜査官黒木昭雄を見て魅了されていた頃、大きな盗撮事件が発覚したのだった。

  2005年2月、私達は和歌山県田辺市で昼夜通しの仕事を終え冷え切った体を温めるため、女性スタッフYと少し足を延ばし、隣町の白浜町にある温泉へ少しばかりのリフレッシュと向かった。

 先にも書いたが、大の温泉好きの私にとって何気ない提案であり、まさかこの温泉でのリフレッシュが「和歌山盗撮事件 二」として配信する事になるなど夢にも思っていなかった。

  シーズンオフの白浜町は、人も少なく、リフレッシュにはもってこいの場所であり、年間を通じて数十回は訪れている。仕事の疲れを落とし帰宅した2日後、私は何時もの様に事務所を訪れた知人に、盗撮の話をしていた時のことだった。私は未特定の現場の盗撮ビデオを見せ、「この場所での盗撮映像が多いけど分からない」「水着の女性が多いことから、海岸沿いの施設だとは思うのだが」と話していると、スタッフYが「あれ…?」と言ってモニターを食い入る様に乗り出して見だした。

 私は「どうしたん?」と聞くと「平松さん、この場所が映ったビデオ他にもある?」と私に聞くので、「和歌山ACの合宿シリーズは大半ここで撮影されているよ。」と言うと、スタッフYは資料庫からビデオを取り出し、自分の席のビデオデッキにテープを入れ早送り再生しながら何かを探し出した。

全4巻中1.2巻のジャケット
和歌山アクション倶楽部・関西女風呂 共に白良湯・牟婁の湯で撮影されている。

 私は「突然どうしたんな?」と聞くと、スタッフYは「平松さんこの場所、先日調査の帰り入った温泉に似ているんです。」
「え・・・本当に・・・・・」画面を食い入るように見ていた彼女は「ここの場所の反対側にタオルをかけるハンガーがあるよ」と記憶の中に在る位置関係を話し出した。

 私はその場所が映っている他のテープを引っ張り出したところ、確かにハンガーらしき物が映っているのを確認した。

 スタッフYはビデオを早送りしつつ、記憶にある位置関係を思い出しながら場面を探した。その結果、「ほぼ間違いないであろう」ことが判明したのだった。

 この盗撮現場は、和歌山ACが過去二十年近く盗撮のホームグラウンドとして撮影いる場所で、その施設の運営を「白浜町」が行っているのだ。私は何時ものように黒木氏に連絡を取った。

平松「もしもし盗撮ビデオの未確認の場所で本当に酷い現場の特定が出来そうです。」

黒木「それ、どこ?」

平松「和歌山の白浜町営の温泉施設です。
以前先生と行った海岸沿いの温泉施設です。そこの映像は数百本程ありますから」

黒木「それはマジなの?町営の温泉で盗撮されているの?」

平松「早急に確認して連絡します。」

ここで一旦電話を切った。
当社の資料庫にはその場所で盗撮されたビデオだけでも結構な量がある。
また、データで判明しているだけでも数百本は確認しているだけに、徹底的に調べ直す必要がある。徹夜で確認作業を行った。

 いつもの様に盗撮場所の復元をデータ上実施した結果、完璧な形で2件の浴場施設の復元が出来てしまったのだ。

 私達は現状確認の為、南紀白浜町に向けて高速を飛ばした。南紀白浜は、和歌山県の中程に位置し日本三古湯(白浜、有馬、道後)の三大温泉地に数えられる。古くは飛鳥、奈良朝の時代から「崎の湯」「白良湯」「牟婁の温湯」「紀の温湯」 の名で知られ、斉明、天智、持統、文武天皇をはじめ多くの宮人たちが来泉された千三百年余りの歴史を持つ由緒ある温泉観光地なのです。

 そして、今回盗撮されていた場所は湯崎七湯の一つでもある「白良湯」と「牟婁の湯」は、私の知る限り「合宿」「新合宿」シリーズ「盗撮女風呂」のタイトルで和歌山AC・マジカル企画・ホワイトピーチ など無数のレーベルから個別タイトルで販売されている。

その数は計260本以上の盗撮ビデオの舞台として使用されている。
また、同作品の特徴として水着を着た女性が9割以上であり、かつ建物や脱衣所の構造に特徴がある。

 週刊文春に掲載された関西女風呂については、全4巻発売されており、白浜町の2ヵ所の温泉施設で撮影されている。

私達は「白良湯」が開店する午前11時前に到着した。
私は、スタッフYにチェックポイントを最終確認し、小型のカメラでポイントだけを撮影することを指示した。

 そして一般客を装って入浴券を購入し、別々に扉を開け中に入った。
私は、映像で確認した部分と似ている装備品を男子脱衣所で確認しながら「言われて見れば盗撮映像と雰囲気は似ているな」と思いつつ服を脱ぎかけた時、携帯メールが入った。

 それは女湯に入ったスタッフYからだった。「ポイント箇所すべて映像のままで間違いありません。」と…。私は「やはり」という複雑な気持ちの中、早々に入浴を切り上げ、1階ロビーでスタッフYが出てくるのを待った。

 入浴を終え階段を降りて来たスタッフYは、撮影して来たカメラを私に見せ、「施設内の様子が映像のままである事」を説明しながら私に見せた。

 私達は複雑な思いのまま、「白良湯」から車で2分程の所にある町営「牟婁の湯」へ向った。
「白良湯」を出て県道31号線を三段壁の方へ向かうと、1分程で観光名所の白良浜が見えてくる。
過去に大ヒットしたドラマ「グッドラック」の最終回でのロケ地にも選ばれた白い砂浜が綺麗な観光名所である。
その海岸線を通り抜けたところに、町営「牟婁の湯」がある。
私達は一旦通り越し「和歌山県警白浜警察署湯崎交番」前でユーターンし、「牟婁の湯」前の駐車場へ車を停めた。

 「まさか……交番から徒歩1分以内の所で盗撮はされてはないやろ」
そんな冗談を言いながら入浴料を支払い、男風呂の中へ入った瞬間、私の視界に飛び込んできたのは盗撮映像の場所そのものだった。

「あちゃ~ここもか。」情けないというより、本当に信じられないの一言だった。交番から徒歩一分の所で長年盗撮され続け誰も気付かなかったのか?私は入浴する事もなく一旦外に出て確認した現状を黒木氏に伝えた。

平松「もしもし今現場からなのですが、2件とも間違いありません。」

黒木「そうか・・・近い内に和歌山に入るから・・・」

そんな簡単な報告だけ伝え電話を切った。
私はスタッフYが出てくるのを待ち、その後は話すこともなく無言に近い状態で一旦現場確認を終え和歌山に戻った。
その夜、簡単に資料を整理し、黒木氏へ送った。

 その数日後、黒木氏から私に電話がかかってきた。「平松さん、資料確認しました。今回の盗撮事件について週刊文春と話をしているので一度現地確認の為、和歌山に行きます。」といった内容だった。
「本当に文春で・・・」がこの時の感想だった。

数日後、黒木氏は再度和歌山の盗撮事件解明と根絶に向けた取材活動の為、和歌山入りしたのだった。いつもの様に関西国際空港で黒木氏と合流し、事務所で簡単な打合せの後、すぐさま南紀白浜へ向かった。

 この頃、黒木氏は週刊誌の連載をかかえており、締切り前の多忙な中、現場確認の為飛行機で来たものだから一寸の暇もない。
車内で盗撮映像と簡単な資料を確認しながら一路海南湯浅道を下り南部インターで下り国道42号線を飛ばしたのだった。 

 国道42号線を南へ少し走ると、南国独特の海岸線が見えてくる。この時、黒木氏はポツリと「何で、こんな良いところで・・・」と呟いた以外、無言のまま私達は白浜町の「白良湯」へ着いた。

 前回同様、特定資料を最終確認後、黒木氏と施設に入り一つ一つのポイントを説明した。本当狭い空間で撮影されている為、説明は2分もかからない。入り口のドアを開けた瞬間に全てが見渡せる広さである。

 黒木氏は、浴室の窓から白良浜を眺めながら「残念だね……」と言った目が印象的だった。

その後「白良湯」を後にした私達は、2件目の「牟婁の湯」に向かった。黒木氏は人を捜すかのように番代の人に断り、脱衣所に一歩足を踏み入れた瞬間、「これは間違いないね」とだけ言って出てきた。

  黒木氏は、和歌山到着後原稿の締切日だったため、一旦宿舎に戻り、翌日一旦東京へ戻った。

その翌日、黒木氏から電話があり、「和歌山盗撮事件 二」として週刊文春と打ち合せの結果「今回は巻頭グラビアと本文4ページ・それとすべて実名でいくから、数日以内にもう一度和歌山に入る・・・・」と言う連絡があった。

 国内最大の部数を誇る「週刊文春」が和歌山盗撮事件を取上げるということは、和歌山に激震が走る。

 週刊文春の読者層は、国会議員をはじめ幅広い層の方が見ていることから、「一気に盗撮防止法に近づく事ができる。」

そんな事を考えながら黒木氏が再度和歌山入りする日を待った。

  私は黒木氏と出会い、闘う為の方法を教えて頂き、その言葉の通り一つ一つの問題を解明する為に走ってきた。
 振り返ればこの数年間、目に見えない敵と闘ってきた。その結果、どれだけ数の被害者を見て来ただろうか?もう数えられる数ではない。

 現実に、何本の和歌山を舞台とした盗撮ビデオがあるのだろうか?
それすら数えることも出来ない現状である。
 まるで和歌山県全体が盗撮スタジオ化している。

 その和歌山県の盗撮事件と本気で闘えるのは、黒木氏以外にはいない。
ただ一人、本気で闘ってくれる黒木氏を影で支えたい。
私が唯一出来る事は、多忙な黒木氏が短期間で中身の濃い取材活動ができるように情報を集めて整理することしかない。
それは、私達にしか出来ないのだから……
そんな事を自分に言い聞かせながら資料を作り、東京にいる黒木氏に送っていた。

 そして2005年4月初旬、黒木氏は再度和歌山盗撮事件解明の為、和歌山に来たのだった。
空港の到着ロビーから現れた黒木氏の顔の表情から強いパワーが感じ取れた。
声のトーンも高い。前回の疲れた黒木氏とは別人の様に感じる程だった。
私は取材資料として作成した資料をプリントし、黒木氏に渡した。
資料を見ていた黒木氏は「これ何本あるの?」と聞かれ、「私の資料では約260本以上、推定2千人以上の被害者がいると思います。」と答えた。

「そんなに酷いの?この現場」「はい。和歌山ACをはじめとして様々なレーベルから出ていますから」「そうか、本当に酷いな。」
私が過去感じてきた「苦しみと怒りを受け止める」かのような黒木氏の顔が凄く印象的だった。

 その日はホテルにチェックインしたまま電話もなく、翌朝10時に宿舎へ迎えに着てとだけ連絡があった。

 翌朝、私はいつもより早く起きて資料を用意し、黒木氏を迎えに行くと「平松さん、今から和歌山県警へ行って仁義だけは通してくる。
それから白浜に行こう。」私は「イキナリ県警ですか?」と聞くと、「一応、仁義だけは通して盗撮の件で白浜に行く事を伝えてくるよ。」

 私は黒木氏から警察内部の伝達の話を聞いていたから、その意味するところは察しがついていた。

 午前10時に和歌山県庁前に車を停め、何時ものように黒木氏にカメラを向けると「撮らないで」と言われた。
その為か、この取材の中で彼を撮れたのは後姿を数カットだけ。桜が満開の中を行く黒木氏を見送るだけだった。

 それから十数分で黒木氏が戻って来た。
黒木氏に、「和歌山県警の対応は如何でした?」と伺うと、「担当者が居ないので解らない。」というなんともお粗末な対応だったらしい。
「後程電話させます」と言う話だったらしいのだが、今までの経験上どうせかかって来ないだろう。
あてにならない和歌山県警の電話を待っている程、私達は暇ではない。そこで黒木氏は、「白浜町へ盗撮の取材に行く」とだけ伝え戻って来たみたいだ。

 黒木氏は「筋はキッチリ通した。行くぞ。」と一言、気合を入れ私達は白浜町に向けて走った。

 春というよりも、初夏に近い晴天の中南紀の海は、未だ静かにブルーの海を輝かせていた。今回、新たに盗撮の現場であることが判明した町営温泉の「白良湯」と「牟婁の湯」を経営する白浜町はどう答えるのか。
私自身、大変興味があった。行政として、他の民間施設のように言い逃れは出来ない。
 一体何て答えるのだろうか……過去ウンザリするほど馬鹿げた管理者を見てきただけに、行政として襟を正した模範的な回答を私自身期待していた。

 私は黒木氏を白浜町役場へ送り届け役場近隣で待機していると、黒木氏から電話が入った。
約1時間の取材時間だった。いつもなら「終わったよ~平松さん今どこ?」と言った軽いノリの電話なのだが、この日は少し不機嫌そうに「黒木です。今終わりました。」とトーンの低い声であった。

 その後、役場近くで黒木氏と合流した私は「役場の反応は如何でしたか?」と聞くと、「白浜町長の立谷誠一町長さんと会って、前向きに対策を検討するって」と。「例えば?」と私が言うと「盗撮注意の張り紙」をするって言っていたと。
張り紙?「何をのん気なことを言っているのか!」と黒木氏に訴えたが、黒木氏は「逃げ惑う浴場施設ばかりの中で、盗撮を文字に入れて書くと言うのだからそれも進展じゃないの?」と苛立つ私を宥めるかのように説得した。

 それも一理あるが。それ以上は、私も言わなかった。

次に私達が向かった先は、白浜警察署である。
黒木氏が事前に白浜に向かうことは県警の広報には伝えている。
黒木氏の経験から言うと、通常なら県警は所轄の白浜警察署へ連絡を入れているのが当然である。
観光地白浜町を統括する警察署として毅然とした姿勢を期待していたのだが、白浜警察署の対応は「県警からの連絡は入っていない。また白浜町からの告発もないので応えられない。」と言った何とも「南国ボケ」した回答だった。

 黒木氏が白浜警察署へ取材に向かっている間、私は警察署の写真を撮っていたのだが、既に黒木氏は出てきたのだから、モノの十分程度の時間だったと思う。
「盗撮犯罪の酷い実態を知らせに来ている」のだから、何がしかの対応があるのが通常だ。
日頃から黒木氏が私に言うことのひとつとして、「事件の臭いがしたら追うのがデカとしての習性だ」と言うのとはかけ離れたお粗末な対応である。
和歌山県警は、目先の事件は追うが面倒な事件にはまったく関心を示さない。本当に馬鹿げたとしか言い様がない。

 さらにそれに輪を掛けたのが白浜町である。私達が白浜町を訪れた翌日、黒木氏の携帯電話に白浜の企画観光課の溝端雅芳係長 より一本の電話が掛かった。

 「映されている人の人権を考えて警察への被害届は出さない。」と白浜町は言うのだが、人権とは本来「人間が人間らしく生きるために生来持っている権利」のことであり、盗撮犯罪の紛れもない被害者に対し、人権をこの場で出すこと事態、不適切な回答である。行政として、浴場施設を運営管理する側の解答として納得が出来るものではない。

 私はこの出来事について疑問を提示することを黒木氏に提案した結果、継続して私のホームページで白浜町の対応を追うこととした。私達は、「本当にこれでいいのだろうか?」と疑問が残る中、「和歌山盗撮事件 二」の取材を終えたのである。

 そして大型連休目前の4月28日、「和歌山盗撮事件 二」を掲載した、週刊文春が発売された。

 文春発売日の反響は凄いものだった。発売日から数日間は事務所にある2本の電話は鳴り続けていた。その反響に、私自身驚きがあった。所詮探偵事務所と言っても、そう一日何十本も電話がかかることがないものだから、スタッフが交代で対応に追われる程だった。

 まともに被害相談の方の話を聴けたのは、数日後だった。簡単なチェックシートに相談内容を書き込み簡単な対応しか出来なかったのだが、問い合わせの中で最も多かったのが「盗撮の事実確認」・「ビデオの販売先」・「白浜町の対応」・「警察への不満」など興味本位の問い合わせより「行政の対応への不満」や「被害の確認方法」や「もし被害者となった場合どうすればいいのか」など。それだけ白浜町を利用する方が多いということだろうけど、それだけに行政の態度には苛立ちしかなかった。その酷い白浜町のお殿様対応について、相談の中から私が直接面談した和歌山市在住の女性のことを少し書きたいと思う。

 相談者 和歌山市在住30代の女性
この女性の方は、ご主人が購入して来た文春で盗撮の実態を知り驚いたという。白浜町の某リゾートの会員であることから、毎年夏に何度と行くのだが、海岸で子供達を遊ばせた後に「白良湯」や「牟婁の湯」で砂を落とし入浴するのだが、その場所が何十年にもわたって盗撮されていた事実に驚いた。そこで、黒木氏が誌面で警鐘を鳴らしている2次犯罪について不安を覚えたことから、現状を確認する為、ご主人と共に誌面に記載の盗撮ビデオ「女風呂盗撮」を探しにビデオ屋を回ったのだが、見つける事が出来ない。白浜町へ確認の電話を入れたところ、その酷い対応に苛立ちを覚えた結果、当社に連絡して来たという。

 気が気でないのは分かるし、万が一可愛い子供の盗撮映像が巷に流出したらと考えるのは親として当たり前の事である。
私が盗撮事件を追及してきたのも同じ気持ちからであり、そのことをお話した上で詳しく話を聞いて見ると、余りにも酷い白浜町の対応に驚いた。
また、相談者女性はその時の様子を録音していると言うではないか。
私は女性にお願いし、「その録音している音声をお聞かせ願えないか」と申し出たところ、今後の活動の為になるのならと了解を頂き、後日来所して頂ける事となったのだ。

 その電話から数日後、私の事務所に来所したのは、その女性とご主人だった。最初に、一部映像をお見せする事に対する注意事項と活動の主旨をご理解頂き、秘主義務を条件に女性が録音したテープを聞かせて頂いた。
本当に白浜町の馬鹿げた対応に、はらわたが煮え繰り返る思いだった。
相談者が週刊文春で実名記載していた溝端雅芳企画観光課長 と直接話した内容が明確に録音されていた。

 女性「私は毎年夏に家族旅行に白浜町に行きその時「白良湯」も「牟婁の湯」も利用させてもらうのですが、この誌面に書かれていることは事実ですか?」

溝端「私達も、突然黒木昭雄という方が来られてそのような話を聴いただけで、事実は分かりません。」

女性「事実は分からないということは、どういうことですか?」

溝端「「白良湯」や「牟婁の湯」で盗撮されたと言われても、それがうちなのか分かりませんし、当施設に似たところは他にもたくさんありますから。」

女性「ビデオは確認されたのですか?その結果、そちらではないのですね。」

溝端「職員が黒木氏の言うビデオを捜したのですが、どこに行ってもその様なビデオはありませんし。この辺では販売されてない。だからお宅さんが見つけたらそのビデオの販売店でも教えてよ。」と非常に馴れ馴れしい対応だ。
この時点で溝端雅芳企画観光課長は盗撮の事実を確認しており、黒木氏が取材中、当社の資料である「関西女風呂全4巻」を資料として貸し出している。その中でも十分確認できるのだ。また施設で勤務している従業員に20枚ほどのキャプチャー資料を見せただけで「この施設に間違いありません」認めているのに対し、4本ものビデオ、それも「白良湯」と「牟婁の湯」だけしか映っていない「関西女風呂」を4巻を見れば、施設を確認できているはずだ。

 あまりにも馬鹿げた対応と、被害の状況を確認できていない馬鹿げた回答に呆れたのは言うまでもない。
 
 私が調査した結果には、それなりの裏づけを元に黒木氏に提供している。映像を何度も確認し、現場に何度も足を運んだうえでのその結果だから、自信もある。
 その裏づけを覆す事など出来るはずがない。
また、白浜町は本当にビデオを探しに行ったのかもについても疑問が残る。この話をお伺いする前後、私は現状確認の為、ビデオの販売状況を確認しに行っている。白浜町の隣街にある某セルビデオ販売店には「関西女風呂」はなかったが「新合宿」が販売されている。

 この店舗は田辺市の国道沿いにあり、通常アダルトビデオの中に少量の盗撮ビデオが販売されている。
普通なら、盗撮ビデオを探しに店に入っているのだから、どの様なモノが販売されているのか見ているはずだし、「新合宿」には「白良湯」と「牟婁の湯」がジャケットに写っているのだから、当然気がつくはずだ。
それすら気付かずにいる事に疑問を感じる。
本当に「お役所仕事」と言わざるをえない現状なのだ。

  ここで、週刊文春に掲載されていない「その後の白浜町の対策」について少し書きたい。

 白浜町は、黒木氏の取材後「お願い」と書かれたプレートを脱衣所に張り出した。

 「お願い」

入浴利用者の皆様に、安心快適にご利用いただくため、ご協力をよろしくお願いします。「白良湯」「牟婁の湯」管理人 公衆浴場内での盗難、盗撮等の防犯対策のため、下記の事についてご注意ください。又、不審者を見かけた方は、管理人までお知らせください。

一 脱衣コーナーで、物色などの不振な行動をとってる人
二 入浴に不要な器具を持ち込まれた人
三 ビデオカメラ、携帯電話、小型機器を脱衣コーナーに置き、しばらくの間脱衣コーナーで過ごす人
四 脱衣コーナーで衣類のまま、一人又は複数で長時間過ごす人と書かれていた。
私は、黒木氏が言う様に「まあ、これも対策か」と思いながらも入浴券を購入し、文春掲載後の白浜町の誠意ある対応を見るべく脱衣場内へ入った。ところが、すぐにその異変に気が付いた。

 「なんか変!」

 「お願い」と書かれたプレートがなんと張り替えられている。4項目書かれていた内容がたった数週間のうちに3項目に変更され、上からシールで貼り直している!その後、1ヶ月もしない時点で、一番重要な部分が削除されていたのだ。

 一 脱衣コーナーで、物色などの不振な行動をとっている人
二 入浴に不要なものを持ち込まれた人
三 脱衣コーナーで着衣まま、一人又は複数で長時間過ごす人

それと「警察官立寄所」の看板が追加されただけである。

みなさんどう思いますか? この白浜町の対応。対策する気なし。

 この看板になんの意味があるのだろうか?「牟婁の湯」の目と鼻の先に交番がある。それも徒歩1分以内のところにあるのだが、白浜町は……その後の対策を期待して、わざわざ白浜まで高速を使って行ったのに。「以前とは何ら変わらないズサンな対策は盗撮犯罪被害に対するお勉強する気持ち、あんたらないの?」と私は言いたかった。本心で!

 加えて従業員の対応も、本当に酷い。「牟婁の湯」の番台の人は愛想を振りまくだけで私の居る間、脱衣所への見回りは一切していなかった。もう一方の「白良湯」では、テレビを見ているわ。
以前となんら変わりない。

 だが、白浜町が私のホームページを日々何度となく見に来ているのは、ログ解析で知っていた。だから盗撮に関する対策方法を書いていたのだが、その「影ながらの私の支援」を無視した対応に苛立ちしかなかった。
下記に記載のログは、当時の記録から書き写したものだが、週刊文春発売日より記録日までの間158回も来ている。

 ページ回数158サイト回数158前回2005/07/058:26:39初回2005/04/2817:00:07国/言語日本語REMOTE_HOSTmb.town.shirahama.wakayama.jpProxy情報Squid[1●2・1●.1●0・1●1]白浜町のホームページアドレスがhttp://www.town.shirahama.wakayama.jp/

  公務中に158回も見に来ているのに、何も分かっていない。
文春の取材後、毎月白浜町を視察に訪れてはいた。そして7月初旬、視察を兼ねて初夏の白浜町を調査員と盗撮現場「白良湯」に訪れが、結果としてこれを最後に止めた。
その理由は、毎回高速費を使い視察し、少しでも防犯対策につながるのならと思っていたのだが、文春掲載後3ヵ月目でこの堕落した実態を知ったからだった。

 正午過ぎ、白良の湯に到着したのと同時に、白浜警察署のパトカーが同所横のコンビニへ停車した。私は気にもせず同所2階にある入浴券販売機にて入泉券を購入し、入口の方を見ると、警察官立寄所と書かれたプレートが設置されている。

 以前はここには無かったものだ。そして入浴準備にかかろうとすると、突然ドアが開いた。「すいません白浜警察です。」と制服の男性警官が顔を覗かせた。番台の方はブルーのノートを手渡し巡回チェックをしたら、なんといそいそと退散して行った。「あ~、一応は、巡回しているんだ。」その程度の内容に笑けた。

 その後、入浴を終え出てきた私は、掃除中の女性従業員に名刺を出しお話をお伺いした。
 その方の話では、文春掲載後、盗撮に対する対策方法等について白浜町から職員に対して盗撮の事実と、簡単な指導はあったようだ。

 その女性従業員の方は事件発覚後、不審な動きをする者に対して目を向けるようになったと言う。
お話を聞き、従業員の潜在意識の中に盗撮事件があるならば……発見する方法として、私は女性従業員の方に対し盗撮犯人の手口を少し話していると、水色に白良の湯のTシャツを来た男性従業員の方が入って来た。

 私はその方にも名刺を渡し、少し盗撮事件のお話をしたところ、その男性従業員の方は、付け焼刃の生半可な知識とふてぶてしい対応で「忙しいときは構ってられへん」と言う。

 その言葉に頭に来たのは事実だ。私は心の中で、「これじゃ今年も盗撮されるね。必ず。」と思った。

 男性いわく、盗撮犯は電波カメラを使用し遠隔操作で撮影しているから対策は無理だと言う。無知とは怖いものだ!!確かに盗撮ビデオの中には無線を使用したと思われる盗撮映像もあるが、白浜に関しては電波で撮影されたものではない。それは、何百本と同所の映像を見てきた私が言うのだから間違いない。撮影方法はピンホール直付けの撮影だ!!何故ならば販売されている映像には電波特有のノイズが無いからだ。通常の電波を用いた撮影には、必ずノイズや画面の乱れがあるがどの作品にもある。そして映像に写るピンホールの影と明るいレンズで撮影されているからだ。

 なおさら呆れたのは、私が女性従業員と話をしているところに割って入ってパチンコの話にすり替えるとは。
もし私が白浜町の従業員なら、その様な話をする方が居るなら耳を傾ける。

 それが対策に悩む者の姿勢だろうと思うが、被害者意識の無い男性従業員に怒りを感じたのだった。こんなズサンな対策では今年も確実に映像が出るだろう。もしその映像を見つけた場合、次は法整備後だと思うから、「管理者に対する努力義務」を徹底して突くつもりだ。

 和歌山盗撮事件を取材する中で「なぜ警察は犯人を逮捕しないのか」という疑問を私自身、いつも感じていた。また、私の事務所に寄せられた相談の中でも多く聞かれた事なのだが、これは和歌山盗撮事件の最後にその事を少し書きたい。

  和歌山を舞台にした盗撮犯の逮捕は、「大阪府警の地道な捜査」にて数度犯人を逮捕しているのだが、和歌山県警にて盗撮犯を逮捕した記憶は、私の知る限り一度もない。(※執筆当時)

なぜ逮捕しないのか。

捜査に非協力 なのかは知りませんが、県民としては悲しい限りですね。
それと「なぜ白浜町は、刑事告訴しない」にも連動すると思うのですが「映されている人の人権を考えて」とコメントがあります。
しかし、人権と言う事に疑問を感じています。
私自身、そこに何らかの圧力の存在を感じています。また漏れ伝える話によると、和歌山県警はマスコミに対して「記者クラブへの圧力」をかけ握りつぶしているという話を聞いています。
詳細は、この場では差し控えます。
「和歌山盗撮事件 二」は黒木氏を先頭にこうした形で市場に出たのだが、「本当にこれでいいのか?」という気持ちが私達の中にある。これで白浜町を舞台とした盗撮はなくなるはずがない。そんな思いが私の中から消えない。

追記 
私達の追跡取材は、文春、テレビ朝日、週刊朝日、その他のメディアで追求してきたが、令和6年現在 この場所で撮影された映像が今現在も配信されている。 そしてこの当時白浜町に対し抗議した女性から提供を受けた白浜町のなまくらな音声をここで公開するために使用許可をお願いしています。 本当に行政の怠慢・和歌山県警の怠慢・そして許せない盗撮犯罪について私達はこれからも監視の目を緩める気はない。

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