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【幼馴染】ショウ



「レイちゃんから。これ。」
登校するとミキが下駄箱で待っていて睨みつけるような顔して手紙を胸に押し付けてきた。

クラスメイトが何かと見ている。

「ショウ、ラブレターか〜〜」
「ヒュー、ヒュー」


「何か違う学校の子に頼まれたらしい。親の関係だと思うわ」
「なぁ〜〜んだ。つまんね〜〜の」


ほんと、つまんね〜〜の。
手紙の裏を見る。レイからか。
めんどくせーな、
レイお嬢さまの言うことは絶対だ。


下校すると、レイの手紙を開けた。

ショウくんへ
わたし、ショウくんのことが好き。
彼女にしてください。
お返事は日曜日の群れの集まりで
聞かせてください。


ミキは何でこんな手紙を渡してきた?
最近は避けられているようにも感じる。
ミキは僕を好きなんじゃないのか、
勘違いか。好きなら頼まれないよな。

レイの親父さんは群れの長老だ。長老は絶対だ。
逆らったりしたら家の親の立場がない。
何が彼女だ、レイの事は嫌いだ。
嫌いでも受け入れるしかない……よ、な…。

レイと付き合うようになったのは中2の冬。
言われるがままだ。
「お父さんが図書館でデートならって。もちろん、健全なお付き合いね。分かるでしょ?」

お嬢さまが飽きるまでの我慢。
「もちろん分かるよ。レイの家に迎えに行く」


レイ、早く飽きてくれ。解放してくれ。
僕は家でも君を好きなふりだ。
本当の自分は何処だ。


高1の春、ミキとルカは群れが変わった。地域によって群れの編成が行われたんだそうだ。ミキとは、あれからずっと目も合わさないままだ。そりゃ、そうか。長老の娘の彼氏だもんな、下手に仲良くしていると見られたらめんどうだ。



⌘⌘⌘


あれから、何年たっただろうね。
もう、その他大勢の子供じゃなくなったよな?
ミキ、何処にいる?

親の連絡簿を見たら自宅番号はわかる。
けど、自宅はダメだ。
僕は群れから離れてしまった。
群れから離れた僕を受け入れてくれるだろうか?


高校に入学してさ、軽音部に入部したんだよ。
ミキ、褒めてくれたろ?
「ショウくんは、いい声してるね」
って。

かすれた声が嫌いだった。
だけど、ミキに褒められて好きになったよ。

僕は歌うことにした。
水曜だけ夕方からのバイトがない。
講義が終わるのが4時過ぎ、
大学から駅前まで1時間。

君に届いてくれ!!
ミキに届け!!!

週に1回1時間だけ、
決戦の水曜日だ。
ミキが駅前に来るかは分からない。
もし、神さまがいるなら、
僕らはきっと、また会える。


ふぃ〜〜寒っ。
何か敷くもの持って来たら良かったな。
まぁ、いいか。
時刻は5時半。6時半まで謳おう。
今日の決戦は何回目だ??


目を閉じて、
深く息を吸って、

ミキに届け!!

ギターを鳴らす、声を鳴らす!
届け。届け。ミキに届け。



目の前に缶コーヒーがコトッ、置かれた。
つま先がとんがった黒のピンヒール。
弾かれたように顔を上げると、

「ミキちゃん?」
うなずいて、前髪が揺れて、
僕は鼻がツーンとしたんだ。

やっと、会えたね。
これは、奇跡だ。
僕たちは一緒にいる運命なんだよ。


〈追記〉

ミキへ
僕はブラックコーヒーは飲めないんだよ。
ミルクと砂糖たっぷりじゃないとね。
「もう、知ってるよ」
頬をぷく〜〜って膨らます顔が見えそうだね。

もう、とんがったピンヒールは履かなくていい。
つまりは、そうだね、そういうことだ。


【才の祭】応募作品です。


【ミキ】



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