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猫様と飼い主さんに届けるデザイン

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Catlogは2020年度グッドデザイン賞を受賞しました!
私たちが信じる世界は変わらずですが、まだ若いスタートアップのプロダクトがこうして世に認めてもらえることは更なる自信にも繋がりますし、とても嬉しいです。

私は、Catlogの開発元であるRABO, Inc.でVP of Designをしている香林(通称zomi)といいます。デジタルデザインに限らず、撮影、動画編集、イラストレーション、印刷物といったCatlogにまつわる様々なものを作っています。

受賞という事実だけでなく、審査の過程はプロダクトの本質を捉え直す良い機会になりました。Catlogは何をどうデザインしているのか、どうやって今の形になったのか。今回は私たちが日々試行錯誤して作っているCatlogのデザインエッセンスをご紹介します。


1. テクノロジーを日常に落とし込む

Catlogは留守中の猫様が今何をしているかをアプリで確認できる首輪型デバイスです。それを支える技術基盤は、バイオロギングと機械学習です。

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どちらも日常生活で意識することはあまりないかと思います。気になっているけど手を出さないといったレベルではないし、気にしたこともないでしょう。実際私も関わってから初めてバイオロギングという研究分野を知りました。Catlogは猫様の様子が分かるキャッチーな機能をもつデバイスであり、テクノロジーの結晶なのです。

そんな未知のものに手を出したくなる理由は、猫様の生活を知りたい欲求に他なりません。

ただ、それはあくまでスタートラインです。

私たちが目指すのは「世界中の猫と飼い主が1秒でも長く一緒にいられる」世界。猫様の生活を一瞬垣間見れればいい訳ではありません。ブランディング検討の中で代表の伊豫が「私たちはおもちゃを作っているんじゃない」と強調していました。

Catlogは、ただ楽しいだけじゃなく、蓄積データがあってこそ真価を発揮するツールです。使い続けてもらわないと意味がない。でも、テクノロジーの素晴らしさを謳っても今度はとっつきづらくなってしまいます。


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テクノロジーをそれと意識せずに日常に取り入れてもらうために、私たちはプロダクトにファッションの要素を取り入れました。ファッションはより日常に近く、オンオフの切り替えやトレンド、季節感などを楽しむことができます。

デバイスの名称はPendant、専用ベルトはカラーバリエーション豊富で最近はコットン100%素材も。ブランディング議論の中でコスメブランドに例えるなら何か、という話題が挙がっていたのも懐かしいです。猫様への負担が極力少ないことは大前提として、人間のファッションアイテムと同じくらい、形状・機能性・見た目にもこだわって、人間がおしゃれを楽しむように生活に取り入れたくなる存在を目指しました。

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また、既存のペットブランドとは違う方向性を貫いています。

既存のペットブランドには「可愛らしい存在」というステレオタイプがあるように感じます。私はふだん黒い服ばかり着ているのですが、モード系ファッションが好きなのにペット用品に限ってはキラキラファンシーパステルなものしか選択肢がない状況にずっとモヤモヤしていました。

それはそれでおしゃれの一つのあり方と思いますが、先ほどの「人間がおしゃれを楽しむように」を目指すなら、もっと多様なおしゃれの選択肢があっても良いはずです。私たちはデバイスと一緒に「ペットと楽しむおしゃれ」も提案していきたいと考えています。その一環として、オフィスもがっつり猫様仕様を取り入れて新設されました

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Catlogを単なるデジタルプロダクトブランドではなく、ライフスタイルブランドにしていきたい。おしゃれも楽しみながら猫様の健康をしっかりと見守り、愛情あふれるより豊かな生活を実現することを思い描いています。(ちなみに先日予約販売を開始した黒猫ブラックは私大歓喜でした。早く欲しい!)


2. 明快に情報を伝える

そして、ただおしゃれなだけでなく日々使っていくものとして、テクノロジーに裏打ちされた信頼性との同居も忘れてはいません。

サービスの信頼性は、沢山の根拠や言葉を並べ立てればいいというものではなく、こちらからの伝える姿勢を利用者様に認めていただくことで成り立つと思います。プロダクトの特性上、複雑で難しい概念を伝える場面もありますが、言い回しひとつにしてもシンプルで分かりやすく私たちらしい表現をチーム全体で心がけています。

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スムーズに使い始められるよう手間を極力省いた初期セットアップや、取得したデータを見やすくサマリ化・グラフ化したアプリ画面などもその一端です。まだまだもっと良くしていける・良くしていきたい一心で、今後もより分かりやすくなるよう改善を続けていきます。


3. 猫様との生活をデジタル領域に広げる

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Catlogのアプリ体験を象徴するのは猫のアイコングラフィックです。

離れていても一緒にいるように感じられる体験を目指して、誰もが自身の愛猫を投影しやすい中庸さを念頭に置きつつ試作を繰り返しました。テクノロジーとエモーショナル、Catlogらしい遊び心、そして猫っぽさを幾何学的な線に落とし込みました。アイコンは当初からアニメーションを前提に考えられており、そばにいる息遣いを感じてもらえるよう工夫しています。

さらに、使い続けたくなる仕掛けとして季節ごとの特別仕様を用意しています。作りながら、毎回モチーフを活かしてどう遊ぼうかとアイデアを膨らませつつ、受け入れてもらえるかな…とワクワクドキドキが一気に押し寄せていたりします。

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でも、現実世界ではあり得ないようなことが出来るのもデジタルの面白さ。アイコングラフィックを通して猫様と一緒に季節や記念日を楽しんで頂けるようにと想いを込めています。

行動把握・健康管理だけでなく、猫様との生活体験がデジタル領域にも広がっていくことで、リアル・デジタルの両側面でさらに猫様との愛を育んでいけるように、これからもたくさんの仕掛けをしていきますので、お楽しみに。


思想を体現した展示設計

Catlogがどのような思想のもと作られてきたかを書いてきましたが、それらをグッドデザイン賞でプレゼンテーションすべく、展示設計にもこだわりを詰め込みました。(写真はオフィスで組み立てた際のものです)

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まず目に入るのが背面のCCO(Chief Cat Officer)ブリ丸の写真と波形です。プロダクトの表側には出てきませんが、猫様の生きた証でありプロダクトの根底にあるデータ波形をメインモチーフに据え、世界観を視覚的に表現しました。

奥側から
 背景課題&ソリューションの説明
 → デザインコンセプトや周辺アイテム
 → デバイス
という流れで、手前のデバイスを実際に触りながら理解を進める構成としました。

実はこの展示設計はver.2で、直前で作り直して完成した経緯があります。

というのも、初期案では個々の項目説明に徹しすぎて、Catlog全体の世界観を表現出来ていなかったのでした。「アートを目指しているわけではないが、何か足りない」と代表の伊豫からフィードバックを貰い、目が覚めました。自分でもどこかしっくりこないと感じながら、迫る期日に焦ってただ作り切ることしか見えていなかったと気付かされました。

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考え方の軸を変え、タイムリミットにヒリヒリしながらひたすら頭と手を動かしました。

完成間近の初期版を捨ててやり直した結果、私たちが大事にしているものや伝えたいことの輪郭がはっきりし、言葉の説明に加えて世界観をより感じ取ってもらえる形が完成したのではないかと思っています。

最後に、これまで書いたデザイン思想をまとめたのがこちらの文章です。

Catlogは専門技術に支えられたIoT製品という、テクノロジーの結晶。一見すると取っつきづらい印象になりかねない本プロダクトのグランドデザインに、ファッション性を融合。既存ペットブランドと一線を画すスタイリッシュさで、人間がおしゃれを楽しむように生活に取り入れたくなる感覚を促し、テクノロジーと日常の垣根を取り払いました。ただおしゃれなだけでなく技術の信頼性との同居の為に、難しい概念や説明はとことんかみくだき、極力シンプルな視覚表現で明快に伝えることを徹底。そして、誰しもが自身の愛猫を投影しやすい、中庸でかわいい猫のアイコングラフィックを軸に、猫様との生活をデジタル領域に拡張します。


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猫様と飼い主さんにお届けするCatlogのデザインは、このように出来ています。そして、これからも磨き続けていきます。

Catlogにご興味をもっていただけた方はプロダクト紹介ページを是非ご覧ください!スマートフォンからアクセスすると、実際に近いアプリ体験を感じとっていただけます😺


ねこもふもふ