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科学教育のための基本的な指導実践



■□■はじめに

理科教育 Advent Calendar 2020の8日目の記事です。

今回、紹介する内容はScience Education Book Club in Japanで行ったChapter. 18「Essestial Instruction Practices for Science Teaching」について議論したことについてまとめたものです。
この章では、理科教育において重要な指導実践についてまとめられています。


□■□指導のサイクルについて

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教師は、理科の指導を通して、学習者に日常的に豊かな学習体験を提供することが求められています。このため、質の高い理科の指導を行うための、「指導のサイクル」として、『Planning:計画』、『Instructing:指導』、『Reflecting:振り返り』の3つが設定されています。そして、それぞれの各過程には質の高い理科の指導を行うための重要な役割があります。


□■□Planning:計画

『Planning:計画』の段階では、教師が指導計画を立てる前に、その授業や単元で核となる概念や考え方を明確にする必要があります。そして、授業の一連の指導目標を明確にしておくことも大切です。

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核となる概念や考え方を考える際、教師は、「生徒が〇〇を知るために不可欠な核となる考えは何か」や、「自分が理科教師として取り組んでいる核となる考えは何か」といったことを念頭において、指導計画を立てる必要があります。具体的には、遺伝学の授業において「分裂」について授業計画を立てる際に、生徒が単に、有糸分裂や減数分裂そのものを覚えることを授業目標とするのではなく、それぞれ分裂の仕方は違うが、同じ遺伝物質が含まれているという「共通性」を見出し、その遺伝物質は複製と再結合をしていることを学ぶことを授業目標として設定します。このように、今回の例であれば、「共通性」という考え方を用いて授業目標を設定し、一連の指導計画を立てることが重要となってきます。



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また、指導計画を立てる際に、生徒の既有知識を知ることで、生徒に合う適切な教育方法を選択できる場合があります。そして、一貫した授業を行うために、前時の授業との関連や、次時の授業との関連など、それらがどのようにリンクされているかを考えたり、キーとなる活動や考えの順序なども構成したりすることが重要となってきます。


□■□Instructing:指導

『Instructing:指導』の段階では、教師は学習者に思考を促すような言葉がけや、活動、形成的評価などを通して、学習者が、本質的な理解ができるようにしていくことが必要となってきます。

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本章では、学習者の思考を促すためには、協同学習やグループ活動を行うことも一つの方法だと紹介されていました。その際、生徒が発言したら、その考えを認め合ったり、全ての生徒が会話に参加できるようにすることが重要だと述べられていました。このため、普段から、教室の環境や生徒同士が発言しやすいような学級運営といった取り組みが大切になってきます。

教師は、生徒の授業中の会話や説明している内容を聞くことを通して、授業の効果に関しての情報を集めています。これは、授業改善を行う上で、重要な役割を果たします。

また、近年では、形成的評価の研究において、具体的な評価方法や適切なフィードバックのタイミングに関する研究が行われています。


□■□Reflecting:振り返り

『Reflecting:振り返り』の段階では、学習者の授業の理解状況や、教師の指導法の有効性を評価するために、学習の成果物や、生徒の授業中の反応など、さまざまなアセスメントを利用します。

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このように、今後の授業のために授業の改善点を明らかにすることが重要となってきます。そして、これらの3つのサイクルを繰り返すことで、教師の授業力は向上されると述べられていました。


■□■おわりに

今回の読書会では、議論の最後に、教師教育や、教職に関する講義の充実の必要性や、学習者の適性の違いによって教授方法の効果が異なる(適正処遇交互作用の存在)ことを仮定した場合について検討を行いました。そして、読者会に参加しているメンバーのそれぞれの研究分野について、この10年間の進展について情報を共有しました。


議論に参加していだいた読者会のメンバーのみなさん、この記事の草稿に有益なコメントくださった、雲財寛さん、中村大輝さん、ありがとうございました。










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