ジョジョリオン最終回の感想

 ジョジョリオンが終わりましたね。感想を書きます。メチャクチャネタバレなので本誌を読んでない人は注意してください。

よかったところ

 ケーキを選ぶところがめちゃめちゃによかったですね。憲助さんの退院祝いであり東方家の新しい始まりとしてのケーキ。『東方家の新しい始まり』とは常敏と花都さん(と虹村さん)の死を乗り越えて行く為の始まりでもある。そのことを直接的にセリフとして語らせない演出がキマり散らかしていた。皆が泣いている理由は言葉で語られない。言葉にすることのできない深い喪失がそこにある。いい。そして吉良でも仗世文でもない東方定助が東方家の一員として迎え入れられる。それも定助を目の敵にしていた常秀の言葉が最後の一押しになって。なにかと成長しないキャラであることを揶揄されがちだった常秀の全役割がここにあった。最後に放った「選べよ ひとつ」に全てが集約されていた。素っ気ないほどシンプルなセリフに”全て”が乗ってる。すご。東方定助のアイデンティティ獲得の物語としてこれ以上ないほど綺麗な着地がキマっていた。最終一話前にラヂオ・ガガ事件が始まった時にはどうすんだこれ、と思ったけど本当に最後の着地はめちゃめちゃ綺麗だったな。

 あと文くんはジョセフだったし人型のヴィジョンのあるハーミットパープルがカッコよかった。わざわざアメリカンクラッカーを投げ捨てるのに二コマ使って第二部をオマージュしてくるのもよかった。文くん、ラヂオ・ガガ事件だけで終わりのキャラなのかな。なかなかいいキャラしてるしハーミットパープルのヴィジョンも全身見てみたい。第九部で出てきたりしないかな。

よくなかったところ

 だろうな、とは思ってたけど全伏線をぶん投げて終わったのはまあよくないよね。ジョジョリオンはサスペンス色の濃い作風と見せかけて実のところ場当たり的に”サスペンス感のある演出”をしているだけにすぎないライブ感漫画だったのは本当によくなかった。こう、意味ありげな挿話がマジで『意味ありげ』なだけだったり、意味深なセリフ(夜露の「岩に生まれたのはお前の方だ」とか、つるぎの「あんたこそ早く帰ってきなよ 前にいたあのお部屋に」とか)がマジで『意味深』なだけだったりとかしたから・・・それはよくない。あと新ロカカカ収穫まで残り13分のシーンにどうやっても繋がらない問題。さすがにあの段階であれだけ豪快な矛盾を仕込んできたからにはストーリーが矛盾していることそれ自体が大きな仕掛けになってると思うじゃん。そういうのなんもないんだもん。ただただ豪快に矛盾してるんだよ。ミステリ色の濃い作風なのに。そこはやっぱダメだと思うよ・・・普通に・・・

 ・・・まあもしこの辺の問題を第九部で解決してくれたらその時は全然手の平を返そうと思う。

 ジョジョリオン全体を概観してみると縦軸の複雑さを扱い切れていなくてストーリーの破綻はさすがに看過できないレベルだった一方、テーマは最初から最後までしっかり通っていたし、テーマをキャラクターやモチーフの配置によって読ませることはできていたと思う。ストーリーが破綻しているのにテーマは通せているすごく変な漫画だった。総合的に見て面白くはあったが腑に落ちないという感じかな・・・今のところ・・・マジで異常な漫画だった・・・最終回は面白かったし綺麗に着地キメてたけど。なんだろうこの漫画。

 それと巻末コメントにあった”JOJOLANDS”というのが第九部だとすれば、"LANDS"土地ということで、壁の目とか岩人間周りの謎はまだこれから解明される部分もあるかもね。まだな〜〜〜んもわかんないけど。うん、ずっとな〜〜〜んもわかんなかったな。10年間・・・

【終】

小遣いとして使う