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『大野君と杉山君』の映画と漫画感想文

はじめに

『ちびまる子ちゃん』の中で、二期からのキャラクターでありながら常に人気投票で上位にいる大野くん。

彼と親友の杉山くんがメインの映画『大野君と杉山君』が1990年に公開され、先生が描き下ろした漫画も出版されたのはご存知のことかと思います。

ご存知なかった方はどこかのテストに出るかもしれないので覚えておいた方がいいかも知れません。

この映画の後にアニメでふたりが登場するのですが、この頃の大野くんと杉山くんは今のアニメのふたりと性格が違っているところが多々あります。

個人的には映画やその頃のやんちゃで子供らしいふたりが好きなので、映画と漫画の違いや感想を通して、その頃のふたりの良さを語りたいなと思ったのでこのようなページを作らせていただきました。

独断と偏見で偏ったものになると思いますので、以下ご注意ください。


+++注意+++

※ネタバレを含みます。できれば本編を見てからお読みください。

※ここに記載される文章は、ちびまる子ちゃんで好きなキャラ・第一位=杉山君、第二位=大野君(ほぼ僅差同率)である人間が書いたものです。

※ゆえに、主にふたりにフォーカスを当てたものになります。

※わたくしは語彙力と文章力がないので『すごい』『かわいい』『たまらん』など、もっと言いようあろうが!という言葉が多目かもしれませんが広い心でお読み下さい。

※ほぼ無いとは思うのですが、わたくし腐女子でございますのでそのような表現が滲み漏れている可能性があります。

※何度読み返しても誤字脱字を生んでしまう身体ですのでご了承ください。

※あくまでも一個人の感想ですので、違うところも多々あると思います。正しいとは思わず「この人はこんなこと思ったのか」程度に思ってください。

※わたしは当時発売されたかもしれない脚本集他そういう類のものは持っていません。映画と漫画を見ただけで書いていますので実際と矛盾するところもあると思います。ご了承ください。

++++++++

ここでは漫画を片手に映画を流しつつ、映画と漫画の違いや思ったことを語りたいと思っていますが、見てない方にはなんのこっちゃでしょうし、最初は何も情報を入れず見て感動していただきたいので、まずは是非本編を見て頂けたらと思います。


見られる媒体

2015年に廉価版の安価でDVDが販売されたものがありますが、それは今高値で取引をされてしまっています。

このふたりを利用してそのようなことをされているのが悲しくて仕方がないので、できれば利用しないようお願いします。

(追記)

ネトフリで見ることができなくなり、落ち込んでいたところ、発表されました…

2022/12/21にBlu-rayが発売されます!

同時に映画第二作目の『わたしの好きな歌』も発売されます!

DVDにもなってない貴重なものなのでこちらも是非!


現時点見られないという方は漫画の方を手に取って頂けたらと思います。

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ちなみにわたくしはこの3冊持っており、今手に入るのは左右の本だと思うのですが、おススメは右の単行本です。

理由は、本編と一緒に未来の同窓会の話も入っている上に、先生の当時のコメントもしっかり載っているからです。

真ん中の大判は、本編を大きく読めてコメントも読めるのですが、同窓会の漫画は載っていません。

左の文庫版4巻は、『大野君と杉山君』以外にも他の神回が載っており、同窓会の漫画も載ってはいるのですが、映画に関しての先生のコメントは載っていません。

『大野君と杉山君』を完全に楽しみたい方は右の単行本、

コメントは載ってないけれど、百恵ちゃんのコンサートに行く回・お父さんとお母さんが喧嘩をする回・まぼろしの洋館回・ラジオ体操回・南の島のお土産を配る回、などの神回も一緒に楽しみたい方は左の文庫版をオススメします。

ということで、見て胸をふるわせてただいたところで(?)本題に入りたいと思います。


映画と漫画

この映画と漫画の一番の違いは、

映画は「大野くんが主役」の『大野君と杉山君』

であり、

漫画は「大野くんと杉山くんが主役」の『大野君と杉山君』

だと思っています。

映画では後々の出来事を際立たせるために、主に大野くんを目立たせている印象を受けます。大野くんが異常に可愛く描かれていますし…映画としてはそれがいいのだと思います。

対して漫画の方は、先生が大野くんと杉山くん両方が主人公のふたりの物語を描きたかったのではないかと思いました。

そう感じたのは映画と漫画で違う表現がされているシーンが多々あるからですが、それはまた追って伝えたいと思います。


1.はじまり

まずオープニングですが、とてつもなくかわいいです。(早速語彙力喪失)

先生が当時描かれていたデザインが反映されていて、キャラクターだけでなく全体的にデザインが最高です。

イルカの上で踊っているまるちゃんが登場した時点でキュンとなり語りたくなるのですが、こうやってワンシーンずつコメントすると時間がかかるので、とりあえず「大野くんと杉山くん」が目立つシーンをメインに注目したいと思います。

まるちゃんの可愛らしさや、他のキャラの映画と漫画での違いなどは、是非ご自身で見て確認してください。

ちなみに、オープニングでピーヒャラ部分を家族のみんなと踊るシーンと、クラスメイトのみんなで踊るシーンがあるのですが、丸尾くんだけが皆と逆の踊りをしている辺りがキャラクターが出ていて細かいなと思いました。

頑張り屋ではあるけれど空回りして浮いている本編でのイメージがそのまま反映しているみたいでした。


そしてまるちゃんのナレーションから始まる本編。

映画では当時の町の雰囲気、バタバタと家を出るまるちゃんの描写をまずすることで、時代背景とバタバタしがちなまるちゃんのキャラクターを表現したのかなと思います。

対して漫画では、たまちゃんとまるちゃんがゆっくり登校したシーンから始まるのですが、読んでいてさらっと世界に入り込むこの感じもまたたまりません。

そして早速教室のシーンで最初のイベントが席替えとは。席替えのこのドキドキ感。懐かしさで震えるしかない。

まるちゃんはこの席替えで大野くんと杉山くんと一緒の班になるのですが、とても嫌がります。今では頼もしさと優しさがメインになっている大野くんと杉山くんの違いがまずここで見てとれます。

クラスの皆から『乱暴者』と思われ、同じ班になったはまじからも恐れられているのは今では想像つかない人も多いのではないでしょうか。

ここで班で別れて掃除をすることになるのですが、ふたりが「校庭の草取りだぞ」「ぐずぐずするなよ」と言うシーンでは映画と漫画では言うキャラクターが大野くんと杉山くんで逆になっています。

ふたりが言う台詞が逆になっているのはこのシーンだけじゃないのですが、先生がどう思って変えたのか、もしかしたら映画の脚本では漫画のように書いていたけれど映画で変え、漫画でまた元に戻したのか、何か意図があったのか、もしくは何も考えずそうなったのか、そういうのを想像したらまた楽しいです。

命令したり「ぶっとばすぞ」と乱暴な物言いのふたりですが、こういう周りから恐れられようが自分たちの信念のまま突き進んでいる少年であるふたりが好きなので、見ていて「コレコレー!」と叫びたくなります。

最初と最後でクラスメイトからのふたりへの印象が変わってくるのですが、ふたりは最初から最後まで通して変わってないんですよね。

そして掃除が始まるのですが、ここでまた映画と漫画で違った二人のシーンがあります。

映画では長くて大きい植物を、なかなか引き抜けない杉山くんに対して「オレがやってやる!」と割り込む大野くん、それを「なにすんだよ」と譲らない杉山くん。ふたりで軽く争い、そのあと一緒に引っこ抜くのですが、

漫画では引っこ抜くのは大きな切り株であり、ふたりで相談し争わず協力します。

ちなみにこの漫画版、ここで大野くんが杉山くんに指示を出しているのですが、この関係性がまたいい。非常にいい。

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そして、ここでわたしが映画で特に好きなシーンが来ます。漫画にはないシーンです。

大野くんが前に進み石や草を拾い、その後ろでそれらを箕で受け止める杉山くん。

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このシーンで大野くんはピッチャー的役割で主役、杉山くんはキャッチャー的役割で受け止める側、支える側である事が伺えます。

先程の植物を抜くシーンとこのシーンがあることで、『ふたりはライバルで親友でもあり、大野くんの方が杉山くんより前に立つタイプである』という印象を受けました。

漫画の方の『協力して困難を乗り越えていく親友』感も大好きなので、選べませんが。どちらも大好きです。

ちなみにこの後、まるちゃんたちが「無駄話してんじゃねーぞ」と怒られるのですが、この台詞も映画では杉山くん・漫画では大野くんで異なります。

映画では若干強めな台詞を杉山くんに言わせているような気もします。

この先のアニメでもそれは時々あるのですが、漫画では大野くんがその役目なのが多いです。

…とこの調子で書いていたら一体何年かかるのでしょうか。次に行きます。


そしてここでも逆になっているシーンがあります。

教室で忘れた宿題の答えをふたりで書き写すのですが、映画版では答えを読み上げるのが杉山くんで書き写すのが大野くん、漫画版では答えを読み上げるのが大野くんであり書き写すのは杉山くんです。

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個人的には大野くんが指示を出して杉山くんに書かせるというのが好みなのですが、大野くんの方が几帳面に書きそうではあるので杉山くんが読み上げるというのも分かる気がします。

しかし何故ここまででこんなにも逆なシーンが多いのか不思議です。先生が思い描いてたのが実は映画と違ったのか、もしくはどちらでも対応できるニコイチであることを伝えたかったのか、また答えの出ない疑問で頭がいっぱいになります。タスケテ。


そして次に、あの顎クイシーンです。

丸尾くんが答えを写している二人に注意するのですが、大野くんに凄まれ顎クイをされます。

幼かった当時はコエェ~となってたと思うのですが、大人になって改めて見ると小学三年生でこの凄み方は凄いな?と思いました。

映画版では無いですが、顎クイされるまでの丸尾くんの焦りっぷりとそれを見て引いてるふたりの漫画版も面白いです。

その後、教室を飛び出る丸尾くんの映画版の描写がまたいい。

そしてその後に登場した花輪くんに丸尾くんが抱き着いて泣くのですが、通りすがったまる子の一言「あらまーやらしー」「男子も結構複雑だね」に、おや?となります。某センサーが。

映画では無いのですが、アニメ二期の『冬田さんの恋』回でも、野口さんが大野くんのことを「杉山くんと仲いいよね」「男が好きなのかもね」なんて冗談で冬田さんに言っており、コジコジでのハレハレくんとジョニーのあの微妙な関係も描かれています。

わたしは思いました…先生、その世界を知ってるな?と。

いや駄目だ。漏れ出しました。戻ります。


そのあと家に帰るまるちゃん。大野くんと杉山くんと同じ班になったことをここでも嫌がります。

このあと有名な作文のシーン。将来の夢の作文で子供らしい夢や堅実な夢、バカバカしい夢の話の発表があった後のあのふたりの夢。

ふたりが一緒に船乗りになって大海原を冒険する夢。

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ここまでピッタリ息の合った作文を、相談もせずに書けるでしょうか。もしかしたら下校しながらどんなことを書く?と相談したかもしれません。

相談しなくてもいつも二人で語ってることだから、書いたらピッタリ一緒だったのかもしれません。

後者の方がふたりの凄さが見えて良さそうではありますが、ふたりで下校しながら改めて夢を語っているのもいいですね。どちらもアリだと思いました。

その後のまるちゃんの妄想の中の大野くんと杉山くんの海賊姿も貴重ですよね。ナイス妄想まるちゃん。

そのあとのまるちゃんの作文やみぎわさんや花輪くんの作文も面白いのですが、とりあえずここでは大野くんと杉山くんをメインに書いていくのでご自身の目でご確認ください。

ちなみに映画版と漫画版で若干花輪くんの対応が違ったりするのですが、映画版の方が声がついているのも相まって、若干キザ味が増しているような気がします。そんな彼も好きです。


この話ではご存知の通り大野くんと杉山くんが喧嘩したり仲直りをしたりするのですが、同じようなシーンでありながら喧嘩前と喧嘩後で違いを表現するところが数か所あります。

次の給食シーンがまさにその内の1つです。

まる子の給食のみかんを大野くんが奪い取って杉山くんにパス。楽しそうにまるちゃんを弄るふたりが憎たらしくも見えますが、一度全て見た後にこのシーンを改めて見ると何とも言えない微笑ましさを感じます。

その後のたまちゃんと丸尾くんとのやり取りも面白くて好きです。この年で選挙法違反とか口にしたり年齢にそぐわなそうなことを言うところでクスッとするのがちびまる子ちゃんでの醍醐味だと思います。

でも実際はこの年でも大人っぽい子はたくさんいるので普通なんですよね。大人が子供を実年齢よりもっと下の子供だと思っているからこその意識のズレがこの面白さを生んでいるのかなと思います。


次に運動会の隊長と副隊長を決めるシーン。

すかさず大野くんが隊長に立候補し、杉山くんが副隊長に立候補。すんなり決まるのですが、この後のクラスメイトの反応がまた映画版と漫画版で違います。

映画版ではみんなが一緒に「異議なーし!」と叫びワーワーとふたりを応援するのですが、漫画では皆まばらに「異議なーし」と言い静かに決定します。

この漫画版の静かに淡々と決まるところが妙にリアルで、実際はこうだったなという自身の過去の記憶が呼び起こされます。

その後、みんなで何係になったのか話すシーンの花輪くんの「ディス・イズ・ビューティフルフラワーさ」がまた面白くてじわじわ来ます。言葉選びが最高すぎます。

男子は騎馬戦、女子は大玉転がしと伝えられた時の、映画版の大野くんと杉山くんの目配せがまたいい。言わずとも伝わる間柄というのがこの一瞬で伝わります。


この後まる子が帰宅。お母さんに給食時間の愚痴をこぼすのですが「大野と杉山に」と呼び捨てで、今のまるちゃんからは考えられませんが、この頃のまるちゃんはまだ大野くんと杉山くんが憧れの対象になっていません。

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先生の巻末コメントにもありましたが、大野くんと杉山くんはあのクラスに『憧れ』を運んだ存在とのこと。まだ『憧れ』を知らない子供であるクラスのみんながふたりに『憧れ』を抱いていく物語でもあるのです。

今では大野くんと杉山くんへの『憧れ』が当たり前になっているのですが、この時まだそうではないと考えると、この頃のまるちゃんやクラスメイトの反応は間違ってないと思うのです。

この後のさくら家の面白やりとりは泣く泣く省略します。突っ込んでいたら本当に終わる気がしません。大好きすぎて。


翌朝の運動会の練習初日。

いきなりまるちゃんは遅刻してふたりに怒鳴られます。まるちゃんを怒鳴ったりクラスメイトに指示したり、騎馬戦でこのふたりは揃うと本当に強いということが描写され、じわじわとクラスメイトや視聴者・読者にも『憧れ』が生まれてきます。

そのあと、放課後の教室で運動会の準備をするシーン。ここでも映画版と漫画版で違うところや漫画版にしかないところがあります。

漫画版にしかないわたしの好きなシーンの1つなのですが、とし子ちゃんがお医者さんに行かなければならない日だけれど大野くんたちが怖いと帰るのを迷っているところに大野くんがやってきて、とし子ちゃんの係を聞いてから早く行けと言い放ちます。

ぶっきらぼうに言ってはいますが、この後大野くんは杉山くんと一緒にとし子ちゃんの仕事もみんなの気付いていないところで黙々とやっているのです。

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それにまるちゃんだけが気付いているというのがいい。

この話ではないのですが、まるちゃんは花輪くんが久しぶりに会ったお母さんと別れる新幹線ホームでの寂しさも、ひとり感じ取っています。

主人公だからといわれれば元も子もないのですが、周りをよく見ているんだなと思うとまるちゃんのこともますます好きになるのです。

ちなみに余談ですが、漫画版にしかないこのシーン。とし子ちゃんの係が団扇を作る係だったのでふたりも団扇を作ってるのですが、ここでも大野くんが杉山くんに作業の指示を出しています。

先生は大野くんが指示する頭脳であり、杉山くんがそれを受け行動する役割であることをちょこちょこ漫画で描いているのですが、私はそこが大好きです。

ええ、ものすごい余談でした。

運動会準備中。まるちゃんが応援の旗を作るためにデザイン案を描いていたところに横を通る杉山くん。「センスないな」とか「みっともない旗作るなよ」と映画版では杉山くんだけが言い放ちますが、漫画版では大野くんと杉山くんがふたりで覗き込んで言います。

この後の丸尾くんと花輪くん、大野くんと杉山くんのやり取りがまたいい。

丸尾くんは真面目過ぎるが故、だらしなさのあるまるちゃんに当たりが強いところがあるのですが、そのあとちゃんと報復を受ける姿がまた面白い。

花輪くんはとことん平和主義者で我が道を行く人なので、協調性を強く求める大野くんと杉山くんとは全然合わないというのがこのシーンで表現されているのもいい。

しかし先程も書きましたが、この話は大野くんと杉山くんにクラスメイトが憧れていく物語。丸尾くんや花輪くんもその中に入っていると先生のコメントでも書かれています。

この時自分の体質に合わないと言い放った花輪くんも、この後の大野くんと杉山くんの姿を見て心の奥底で憧れを持つのです。


2.ブー太郎の弟子入り

そしてこのあと。一番最初にふたりに『憧れ』を持ったと言っても過言ではないと思います。

ここでブー太郎の弟子入りシーンです。

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今のアニメでも「ブー太郎は大野くんと杉山くんに特別に懐いている」というところがあるのですが、原点はここです。

アニメでこの部分だけを切り取って再構築された回もありましたが、大野くんと杉山くんを好きになる上で、やはりこの映画・漫画でのシーンを知っていて欲しいという気持ちがあります。

ただ『カッコいいから弟子になった』ではなく、『みんなより一番最初に憧れて弟子になった』というのを知っていたらまた印象が違うと思います。

必死に弟子にしてくださいとせがむブー太郎を最初は拒むけれど、まるちゃんとたまちゃんの助言でしぶしぶ弟子にするふたり。良かったねブー太郎。

ちなみにちょっとしたことですが、ここでも映画版と漫画版でまるちゃんとたまちゃんの台詞、大野くんと杉山くんの台詞が逆になってるところがあります。対して差はないのでここでは割愛。見比べてみてください。


またところ変わりさくら家。まるちゃんが頑張って応援の旗を作るのですが、ここでも漫画にしかないお姉ちゃんとのやりとりのシーンがあります。

ちょっとしたやり取りなので映画ではカットされるのは仕方ないとは思うのですが、この漫画版でのやりとりも面白くて好きです。

そしてここでオチにもつながっている友蔵が応援の旗にやらかしたシーンが入ります。この友蔵のやらかしはストーリーに何ら関係はないのですが、あるのとないのでは面白さが格段に違うのでだいぶ印象に残っています。


そして翌朝。やっぱり遅刻をするまる子と叱りつける大野くん。

その時の大野くんと杉山くんの台詞も漫画と逆だったりするのですが、個人的にはこの流れで行けば映画版の方が自然なのかなと思いました。

その後にまるちゃんはブー太郎に踊りを教わり、踊れないまるちゃんがブー太郎に「おまえ頭悪いなぁ」と言われるのですが、漫画版ではその後ちょっとしたやり取りのコマがあります。その一コマがまた味があって好きです。

そして「こっちで踊れ」と言うのも映画版では大野くんで、漫画版では杉山くんです。映画でここで大野くんに言わせることにより、映画版の主役である大野くんを際立たせているような気もします。

このシーンの後、映画版ではすぐに運動会になるのですが、漫画ではさくら家のやり取りが少しあります。遅刻したでしょと言うお母さんに対して「今はこのお菓子のおいしさしか語れないよ」とまるちゃんは言います。言い回しが絶妙です。


3.運動会

そして運動会の日。

懐かしい競技の描写、お姉ちゃんが妹のクラスメイト達にも応援されて恥ずかしがる姿、あるある!と昔を思い出しつつ共感します。

ここで応援の旗を出せと大野くんに言われたまる子が旗を出し、友蔵のやらかしを指摘されて映画版では「こんなのしらないよ!」と旗を放り投げるのですが、

漫画版では大野くんに指摘され旗を手放さずに持ったまま青ざめるまるちゃん。

漫画版ではまるちゃんはその後も静かに旗を掲げたまま(私って一体…)ってなっているのですが、このシーンは個人的には漫画の方が好きです。

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ですが、映画版の通りここで旗を放り投げることによって、運動会後に丸尾くんの手に旗が渡る描写が生まれ、最後のオチに繋がるという自然な流れができるのでしたら、放り投げさせた方がいいのだろうなとも思います。


そしてまるちゃんの借り物競争シーン。ここも映画版と漫画版で大きな違いがあります。

まるちゃんがクジで「ひもぐつ」を引き、ひもぐつを探し回るのですが、映画版では大野くんがすぐに「おい杉山!」と声をかけ、それに気付いた杉山くんが大野くんの紐靴をキャッチ、まる子に手渡して事なきを得る、という流れです。

しかし漫画版では、杉山くんが横のクラスメイトから大野くんのひもぐつ情報を聞き、杉山くんの方から大野くんに叫んでひもぐつを受けとり、まる子に投げて渡します。

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映画版のまるちゃんはその姿を目で追っているのですが、漫画版のまるちゃんはそれを見ておらず、知らない間にふたりに助けてもらったと気付きます。

運動会準備中のとし子ちゃんのことといい、この杉山くんの行動といい、漫画版のみで味わえるふたりのさりげない頼もしさがとても好きです。

映画版では大野くん発信だったこのシーン、最初にわたしが書いた「映画は「大野くんが主役」の『大野くんと杉山くん』である」と感じた一番の理由はここにあります。

わたし自身が杉山くんのファンであるからこそではありますが、漫画版のふたりのこのやり取りがとても素敵なのに何故映画版ではこう描写されたのだろうと考えた時、映画では大野くんが主人公であり目立たせた方がいいのだろうなという結論に至った時、とてもしっくりきました。

漫画版ではこのあと、クラスメイトが大野くんと杉山くんのキャッチボールならぬキャッチシューズがすごいと褒め、杉山くんからまるちゃんへの投げもすごいと噂します。映画版にはないシーンですが、ここでもクラスメイトのふたりへの『憧れ』がじわじわと生まれているのです。

まるちゃんがゴールした後。

映画版ではまるちゃんのお母さんが一人で大野くんだけに声をかけ、まるちゃんが靴を返す時も大野くんは一人ですが、

漫画版ではお母さんとまるちゃんが一緒に大野くんと杉山くんの元へ行き、ふたりに直接お礼を言い靴を返します。

この違いも「大野くんが主人公」だと思うと仕方ないのだとは思うのですが、杉山くんも好きな自分としてはハンカチを噛み締めてしまいます。花輪くんのことで暴走するみぎわさんのように。

そう、花輪くんと言えばこの後のやり取り。相変わらず我が道を行く花輪くんに笑い、みぎわさんとのやり取りに笑います。

この時の花輪くんとみぎわさんの写真が、今のアニメでもみぎわさんの部屋に飾ってあるのを見かけるたびにこの映画のこのシーンを思い出します。


次にお弁当のシーン。

大野くんと杉山くんが映画ではモグラ山の上で、漫画では運動場に敷いたシートの上で、ふたりでお弁当を食べて騎馬戦の相談をしたりしていて、子供の頃はブー太郎と一緒に「カッコイイな!」と思って見ていました。

大人になって改めて見て、大野くんと杉山くんの家族は運動会に来ないような家族ではなさそうなのできっと応援には来ている、でも家族と食べずにふたりで約束してふたりで食べているんだ…と思うとなんだかこう、尊さがこみ上げてきます。

もしかしたら、どちらかの家族が来られなかったのかもしれない。それで一緒に食べようぜとなったのかもしれない。どちらにせよ、ふたりの世界は邪魔できないなと改めて思いました。

お弁当シーンの後、まるちゃんが沖縄民謡でやらかし、映画では杉山くんに踊り中に「お前練習に遅れてくるから恥かくんだぞ」と言われます。さりげないシーンではありますが少し呆れも混じってる言い方がとても好きです。漫画では踊りの後に大野くんに言われます。

余談ですが、なぜ沖縄民謡だったのかという作品内でのツッコミに子供の頃は深く考えて見ていなかったのですが、まるちゃんが7歳のころに沖縄返還があったのでその流れで学校が取り入れていたのではという意見を見かけて、なるほどなー!と思いました。

民謡のあと丸尾くんがやってきて謎にヒロシを困らせます。本当に謎です。他のクラスメイトの親にも言って回っているのでしょうか。そう思うとある意味大物です。


そしてこの映画の3つの山場の内の1つ、騎馬戦。

正直このシーンはあまり見たくないです。大野くんが落ちてしまうところを見るのが辛すぎて、映画を見返すたびにこのシーンだけ飛ばしてしまうことが多々あります。

慌てて助けに行くけれど道をふさがれ叶わず、大野くんが落ちるところを見ていることしかできない杉山くんの気持ちも考えるだけで泣けてきます。

そのあと喧嘩になるわけですが、その理由がふたりとも八つ当たりなんですよね。悔しい気持ちが八つ当たりになってしまったんですよね。

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杉山くん側は描写された通り「助けたかった、助けられなかった、悔しい」で、大野くん側は「本当は杉山のせいじゃない、負けた自分が悪い、悔しい」のだと思います。

この時大野くんの心情は細かくは描写されていないので、もしかしたら本当に杉山くんが悪いと思い込んでいるかもしれません。そう考えると「助けたかった」と思っていて、この後の描写でも仲直りのきっかけを作ろうとする杉山くんの方が少し大人なのかなと思います。

この喧嘩で、どっちも悪くない、けれど八つ当たりするしか方法が分からない子供なんだ、と改めて思い知らされました。

運動会の片づけ中にまるちゃんとたまちゃんが「胸がギュウっとする」と言うのですが、それは視聴者・読者を代弁しているようでもあります。何度見てもギュウっとなる山場です。

そして映画でしかない、丸尾くんが旗を意気揚々と貰うシーン。

このシーンがある事でオチの伏線にもなるのですが、この空気の読めなさ、まさに丸尾くんです。変わらないでいて欲しい。

このあとはさくら家のシーンなんですが、本当この頃のおじいちゃんは謎な行動をしてぶっ飛んでいますね。周りのツッコミなどの言葉のチョイスも面白い。さすがさくら家です。


ふたりがケンカ中の学校。

給食シーンの時に『同じようなシーンでありながら喧嘩前と喧嘩後で違いを表現するところが数か所ある』と書いたのですが、ここでもそのシーンがあります。

映画でしかないシーンです。体育でポートボールをしており、大野くんと杉山くんは同じチーム。大野くんがパス先を探しているところに、杉山くんが笑顔で「おうっ!」と手を上げます。

ですが喧嘩中のため、大野くんはプイと目をそらし、それを見た杉山くんもムッとして目をそらしてしまいます。

このシーン、この先のあるシーンと比較されるためにあるシーンなのですが、笑顔でパスを受けようとする杉山くんに「もしパスが来たら仲直りできるかもしれない」という期待があったんじゃないかと思っています。

ただ真面目に授業に参加してたから、この時だけはケンカのことは置いておいただけかもしれませんが。

杉山くんは実は天然なところもあるので、喧嘩していることを一瞬忘れてたという可能性も否めませんが。

ここで一度、仲直りのチャンスがあったと思います。叶いませんでしたが。


合唱コンクールの役割決めのシーン。ここは映画と漫画ではあまり違いがありません。

花輪くんのピアノの先生であるギルバートのことを花輪くんがみんなに突っ込まれるくだりが面白い。花輪くんは声もいいのですが、アニメーションでしか感じられないあのきざたらしい動きもより花輪くん味が出てていいですよね。

ピアノは花輪くん、女子の独唱は山田さんで男子は大野くんに決まります。

映画では、まるちゃん・たまちゃん・はまじが高音パートだと話していて、その後ろで杉山くんも「オレも高音だ」とぼそっと言うのですが、まるちゃんたちは気付いていません。

漫画では、杉山くんは直接「オレも高音だよろしくな」と笑顔でまるちゃんたちに話しかけ、まるちゃんもそれに応えます。

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ここで映画では杉山くんを寂しく一人にさせたのは、やはり喧嘩中の微妙な雰囲気を出したかったのかなと思います。漫画のまるちゃんたちと仲良しな杉山くんも好きなのですが。

課題曲である『おおきな古時計』。この曲を聞くたびにこの映画を思い出す身体になってしまった人は多いのではないでしょうか。わたしもその一人です。

悲しい歌だとみんなで話し、まるちゃんは家でもその話をするのですが、ここは本当の歌詞の意味に気付く前の大事なシーンなんですよね。

そして練習に入るクラスメイトたち。

なぜか勝手に指揮者をやっている丸尾くん。ここでも空気が読めていません。それでこそ丸尾くんです。

そしてピアノは上手だがやはりきざたらしい花輪くん。今のアニメではみんなに一目置かれる存在ですが、映画ではまだみんな花輪くんの凄さに気付いていません。みんなまだ花輪くんに『憧れ』を持っていない状態であり、花輪くんもまだ育ちの違うクラスメイトとの距離感を掴めていないのだと思います。


4.合唱コンクール

12月24日コンクール当日。

前日のさくら家ではヒロシが風邪をひいた描写がありました。不穏。非常に不穏です。

朝、大野くんと挨拶をし、大野くんの声に違和感を感じるまるちゃんですが、否定されて気のせいかと思いそれ以上追求しません。

この時、大野くんは不安だったと思います。本番声が出なかったらどうしよう、みんなで練習したのに、と。

大人の目から見れば、後々周りに迷惑がかかるのだから早めに言っておかないと、と思うのですが、大野くんは意地で親友と喧嘩するくらいのプライドの高い子です。

誰かに助けを求めるなんてできなかったと思います。そう思うといたたまれません。


そして本番。この話の大きな山場、2つ目。

問題なく始まる「おおきな古時計」の合唱。花輪くんのピアノもとても上手いです。山田さんの独唱もとてもきれいで聞き惚れます。

この先のことはこの映画をなんとなく知ってるだけの人でも知っているでしょう。

独唱で途中声が出なくなった大野くん。花輪くんのピアノも一瞬止まりますが、違う歌声が響きます。杉山くんの声です。

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もう何度も繰り返し見返したので号泣とまでは行きませんが、今でも泣きそうになります。この時の杉山くんの歌声がまたいいんですよね…

普通なら、友達の声が出なくなったとしても助けるのに迷うと思います。上手な人の代わりに歌って比べられたら恥ずかしい、勝手に自分が歌っていいものなのか、実際は自分がその立場なら考え過ぎて動けないでいると思います。

あの短い間で助けることを即決した杉山くんの勇気と男気、惚れるしかありません。

そして歌声に合わせて弾き始める花輪くんのピアノ技術もすごい。

杉山くんが歌ったことで見方が変わり、悲しい歌ではないと感じたのは、気持ちが上を向いたからですよね。

きっとこの時、クラス全員がまるちゃんと同じ気持ちになったと思います。ふたりがかえってきた、と。

この時点でクラスみんなが大野くんと杉山くんに『憧れた』のではないかと思います。少しずつ育っていた『憧れ』の気持ちがここで完全なものとなったでしょう。現に自分は憧れました。

このあとの描写はありませんが、この後ふたりは何を話したのでしょうか。

コンクール終わってすぐはきっと言葉が出ずに沈黙が流れたでしょう。

ふたりのことなので「ありがとう」「ゴメン」の言葉無しに、自然と仲直りする可能性もありますが、やはり大野くんがまず「ありがとう」とは言うと思います。「悪いな」だったかもしれない。

杉山くんは大野くんがそこでなに言おうと「別に」や「いいよ」など言い、そのまま一緒に下校して仲直りしたのではないでしょうか。

このコンクールでの出来事は、この先一生忘れることがないと思います。ふたりも、わたしたち自身も。


時は流れ初詣シーン。

まるちゃんがおじいちゃんと初詣に行くのですが、ここで完全に仲直りしたふたりと出会います。この映画・漫画を見ている全員がホッとしたのではないでしょうか。

まるちゃんの「夜遅いのに平気?」の問いかけにふたりが答えるのですが、ここも映画と漫画では逆になっています。

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本当にここまで逆になっているのも不思議なのですが、ここまで逆でもあまり違和感がないのは、ふたりが行動も考え方もいつも一緒だからなのでしょう。

ちなみに服装も映画では大野くんがコートで杉山くんがジャンパーなのですが、漫画では大野くんがジャンパーを着てます。先生のイメージはそうなのかな?と思ったり。公式4コマでも大野くんが買ったジャンパーを、杉山くんが羨ましがったものもありましたし。

お願いもまた、お互いにお互いとのことを願ってるのがいいですね。「大野と一緒に」「杉山と仲良く」…この先のことを考えると胸が苦しくなります。


三学期。ふたりが仲直りした後の学校生活が始まります。

休みのことで花輪くんはクラスメイトに弄られます。大野くんと杉山くんが今のアニメと違うと言われますが、花輪くんもだいぶ違います。

もしこの3人が1人でも今の優しい性格だったらクラスはまた違った雰囲気になり、話は変わってくるでしょう。この3人だからこそ、この感動のストーリーが成り立つのです。

ここから大野くんと杉山くんの仲復活劇が始まります。

授業で意気揚々と意見を述べる丸尾くんの意見に、反対意見をぶつける大野くんと杉山くん。お互いの意見に同意し合い息がぴったりです。

そして体育の時間。

以前、映画にしかない喧嘩中のポートボールのシーンがありましたが、ここでその対比シーンがあります。ちなみに漫画ではバスケなのですが。

ケンカ中では杉山くんにパスを出せなかった大野くんですが、即座に杉山くんにパスを回し、杉山くんも大野くんにパスを返します。そのまま大野くんがゴールを決めてガッツポーズ。

漫画ではふたりで視線を合わせて指を立てます。漫画は映画に比べて感情表現が静かなのですが、この静かさもリアルで好きです。

ブー太郎も、他のみんなも嬉しそうです。ここで花輪くんが「まったくかなわないなァ」と口にするのですが、ここで花輪くんは最初合わないと言っていた二人を完全に認めたのだと思います。

続いて給食のシーン。

大野くんがまたまるちゃんのみかんを取り杉山くんにパス。前のまるちゃんはそんな二人に対して怒って終わっていましたが、ケンカをしていたふたりを知っているため、ここでは怒りつつも少し嬉しそうでもあります。

ふたりが戻ってきたなら仕方ない。自分がまるちゃんの立場でもそう言うでしょう。


5.転校

ここからまたやってきます。波乱が。誰もがもう起こってほしくないと思っていた出来事が。

大野くんの親が転勤することになり、大野くんが東京に転校することになりました。

そのことをまるちゃんがお母さんから聞かされた翌日。杉山くんは「うそだろ?」「いくなよ?」と大野くんに詰め寄りますが、大野くんは「しょうがねぇだろ」と繰り返します。

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この繰り返される「しょうがねぇだろ」は大野くんが自分に言い聞かせているようにも思えます。きっと親に聞かされた前日、大野くんも親に何度も確認したでしょう。それで何度も聞かされたんだと思います。「決まったことだからしょうがない」と。

大野くんも「しょうがない」と何度も繰り返し、気持ちを抑えてこの日学校に来たのかもしれません。そう思うと本当にやり切れない。

杉山くんの「オレたちの夢はどうなるんだ」の問いかけに、大野くんがまた「しょうがねぇだろ」と答えることで、ふたりの中に大きな亀裂が入るのですが、本当はこの時ふたりの中では相手の答えの最適解がすでにありました。

騎馬戦の時は自身の悔しさから八つ当たりをしてケンカになったのですが、今回のケンカは少し違います。

大野くんも杉山くんも、ここで転校することが悔しいわけではなく、どうしようもないことも分かっています。前回のケンカよりふたりとも少し大人になっているような気がします。

ふたりとも転校することは悔しいけれど、それよりもお互いに「夢は変わらない」という言葉が欲しかった、ただそれだけだったと言います。

どちらかがそれを伝えてたらケンカは無かったでしょう。でもお互いが相手の口から聞くことで、相手が本気でそう思ってくれているということを確認したかったからこそ、どちらも自分から言い出せずこのような事態になってしまったのだと思います。

本当にやり切れません。

一人教室に残った杉山くんの涙にまるちゃんが、外に出てサッカーをいている大野くんの涙にブー太郎が気付きます。


大野くんと杉山くんがまた口を利かなくなって数日後の帰り道。

まるちゃんが大野くんを見つけ一緒に帰りながら、杉山くんと仲直りしなよと説得をします。この辺りのシーンは実際に見て欲しい。この時の空気感は言葉では言い表せません。

まるちゃんが言った「大野君と杉山君のコンビが好きなんだよ、別々じゃ駄目なんだよ」という言葉は、見ているすべての人の気持ちを代弁していると思います。

一緒にいられる時間はあと少ししかないのに。早く仲直りしなきゃこのまま離れ離れになる。誰もが思っているでしょうし、なにより大野くんと杉山くん自身が一番分かっていると思います。

大野君は杉山くんが泣いているのを見たと聞いても「うそだ!」「あっちいけ!」と最後まで態度を変えませんが、この時は『転校する』『しょうがない』『悲しい』でいっぱいいっぱいだったでしょうし、ゴメンと謝れば済むケンカでもないのでどうすることもできなかったのだと思います。

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『今まで自分と相手は同じ気持ちでいたと思ってたけれど、もしかしたらあっちは違うのかもしれない』という不安は、大人になっても友達・恋人に対して生まれます。大人でも上手く処理ができない人も多いでしょう。子供なら尚更です。

まるちゃんは大野くんを説得できず、みんなが寂しい気持ちを抱えたまま時が過ぎます。


大野くんが清水を発つ日の前日。

給食時、まるちゃんは大野くんが近づくのに気づき咄嗟にミカンを守りますが、大野くんは素通りします。このシーンは映画のみにあります。

2度の大野くんと杉山くんが楽しそうにする給食シーンがあった後このシーンを見ると、なんとも言えない寂しさを感じます。まるちゃんもそんな表情をしていました。

「東京は遠い」と話すまるちゃんとたまちゃんのところに、花輪くんが「遠くにありて近きもの」と言います。深く考えることはない、そこまで悲しまなくてもいい、と言っているようでもあります。

清水と東京の距離は大人・金持ちには近く感じるけれど、子供には遠く感じると改めてここで思い知らされます。

今ではネットで遠くに行っても簡単に繋がっていられますが、当時はそれらは全く無く、家の電話と手紙だけ。町がふたつみっつ離れるだけでも疎遠になることも多かったでしょう。

だからこそ、この頃の転校は余計に悲しかったし、このお話がここまで愛されているのもこの時代だからこそだと思います。

明日、大野くんのお別れ会をすることがクラスみんなに伝えられます。

その日はお別れ会が済んだ後、すぐに大野くん家族が清水を発つのですが、もう少し日を開けられなかったのだろうか??と思います。忙しすぎる…


そしてこの後、映画版にはないけれど漫画版にある、わたしが一番好きと言っても過言ではないシーンがあります。

映画ではこの後はまるちゃんとたまちゃんの下校シーンになるのですが、漫画版ではブー太郎と杉山くんの下校シーンが入ります。

ブー太郎もまるちゃんと一緒で、ふたりに仲直りしてほしくて杉山くんに説得をします。

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杉山くんは「しょうがない」を繰り返す大野くんに対して、「自分は一緒にいたかったのに向こうはそう思っていない」と思い込んでいるのですが、ブー太郎に大野くんが泣いていたことを伝えられると「ほんとか」と表情を変えます。

漫画版に追加されたこのシーンはほんの5コマなのですが、このシーンで『相手に何を言われても頑なに意見を曲げない大野くん』と『相手の言葉を受け入れる余裕がある杉山くん』ではっきり分かれているのが分かります。

もちろん、転校する方と残る方では違うと思います。どちらも悲しいでしょうが、転校する方が余裕がなくなると思います。

そんな余裕がない大野くんに対して、自分から歩み寄ることを決めたであろう杉山くんのこのシーンがわたしは大好きです。

家に帰り、まるちゃんは手品セットを探します。

杉山くんはお姉ちゃんに夏のセーラー服を2枚借ります。

杉山くんはこの時、あの出し物にしようと決めていたと思うのですが、不安だったと思います。大野くんがちゃんと乗ってくれるのか。

成功するのかという不安と親友が転校してしまうという不安を抱えてその夜を過ごしたと思うと、胸が苦しくなります。


6.お別れ会

2月27日お別れ会当日。この話の最後の山場です。

映画では黒板に「大野くんのお別れ会」と書いてあり、漫画では「大野くんさようなら」と書いてあります。ちょっとした違いではありますが、「さようなら」はなんだか悲しさが増している気がします。

みんなが次々と出し物を披露します。漫画では数人が披露した後にはまじが出てくるのですが、映画では1番目に出てきます。確かにクラスメイトに面白さが浸透しているはまじだと掴みは完璧でしょうから1番目がふさわしい気がします。

最前列にいる主役の大野くんも笑顔で楽しんでいます。楽しそうでよかった。

花輪くんは手品を披露しますがさすがお坊ちゃま。完璧です。

空箱から花を出してばら撒くのですが、映画では「ヘイベイビー」とまるちゃんにウィンクして手元に花を投げます。わたしならこんなことされたら惚れてしまいます。みぎわさんと同じくわたしもキャーキャー言ってたかもしれません。

そのあとのまるちゃんはお金が宙に浮くという仕掛けまるわかりの手品をするのですが、花輪くんと比べられなんとも悲しい結果に。もっと順番どうにかできなかったのでしょうか。この方が面白いので見てる方は楽しいですが。

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もしかしてそれも見越してこの順番にしてるのかと思うと、やはり司会の丸尾くん、侮れません。このあとの関口くんとブー太郎の漫才でも審査員ぽいコメントをしていましたし。

そしてここから。杉山くんの出し物です。

セーラー服(上)を着て登場し、周りがざわついている中、大野くんに「これを着ろ」とセーラー服を渡します。大野くんは暫く持ったまま動きません。

杉山くんがまるちゃんに通学帽を借りフチを曲げてかぶり、大野くんの反応を待っているのですが、不安でいっぱいでしょう。拒まれてしまったらおしまいです。

だからこそ、大野くんがセーラー服を着た時に見せた杉山くんの嬉しそうな笑顔は、本当に眩しかった。何度見てもここの笑顔が一番好きです。

その笑顔に大野くんも笑顔で返します。仲直りの瞬間です。

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映画版ではここで仲直りをした!と感じるのですが、漫画版は少し違うイメージがあります。

漫画版ではセーラ―服を着て準備をするときも淡々としており、ずっと二人に笑顔はありません。真剣です。航海が終わって大野くんが「ありがとう」と言った瞬間に完全に仲直りしたと感じるのです。

そんな漫画版もいいのですが、やはり映画版の表情と動きや音、みんなの協力作業も本当に完璧すぎて…何度見ても感動します。ここは映画で一番実際に見て欲しいシーンです。

航海が終わった後の杉山くんの台詞「また次の航海も待っているんだぞ、忘れるな」は、ふたりが喧嘩したあの日、お互いが言ってほしかった言葉です。

あの日、言葉だけでは伝わらなかったかもしれない。でもこうして一緒に身体を張って伝え、相手もそれに応えたからこそ、お互いに同じ熱量のものが伝わったのだと思います。

この出し物考えた杉山くんは本当にすごい。どうやったら伝わるか、どうやったら大野くんの気持ちが確認できるか、一生懸命考えたんだろうな。

ふたりの航海が終わり、大野くんはコンクールの時の借りを返せていないから歌うと言います。その宣言を聞いている杉山くんが照れ臭そうにしているのもいい。

そして大野くん、反則である。ここでこの『友達の歌』は泣く。泣くしかない。

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この感想文を書くにあたって同時に映画を流しているのですが、涙を浮かべています。今まさに。何度も見た、聞いたシーンなのに、なぜこんなに心に響くのでしょうか。

初期のまるちゃんは、時代背景も、その時代で人が感じていたことも、人の良いところも悪いところも、とてもリアルに描かれていました。リアルで誰もが知っている感情から生まれている話なので、自然と自分もあのクラスメイトたちの中に混じって歌を聞いている気持ちになります。だからこそ泣けてくる。

クラスメイトのみんなと同じように涙を浮かべながら聞き、ここで杉山くんの泣きそうな顔が映し出されます。ちょ、やめて…涙止まらんよ…

この歌は、今ではおなじみ杉山くんのことを好きであるかよちゃんのモデルになっている方の小学生の頃の作品とのことですが、小学生でこの作詞…神過ぎない???そしてそれを忘れておらず作品に埋め込んだ先生の力偉大過ぎない????知ってましたけれども。

お別れ会のあと、みんなで大野くんのお見送りで新幹線ホームにいます。

映画版の大野くんはネクタイを締め正装をしています。その姿がとてもかわいい。

映画版ではこの大野くんと杉山くんのお別れのシーンは二人とも笑顔です。仲直り出来て、お互いが同じ気持ちだと確認出来てスッキリしたのだと思います。

それに対して漫画版のふたりのお別れはとても悲しそうです。ふたりとも両手を重ねて涙を浮かべています。

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せっかく仲直りできたと思ったらすぐにお別れ…そりゃ泣きたくなりますよね。

映画版の笑顔でお別れする大野くんと杉山くん、漫画版の悲しそうにお別れする大野くんと杉山くん、どちらも気持ちが分かりますし、どちらもあり得ると思います。

実際自分がその立場だとしたら、泣いている方かもしれません。

そのどちらのパターンも見られるのはこの映画・漫画ならではではないでしょうか。

そしてここからですよ…このまましんみりと終わらせてくれないのがまるちゃんですよ…

散々伏線を張ったあの応援旗。運動会の日最後に丸尾くんが手に入れたあの旗をホームで振り始めます。運動会の思い出でありクラスみんなの思い出にも残っているであろうあの旗を取り出すのは悪いことではないとは思います。


でもその後です…そのあと、周りの人にくすくす笑われてしまった丸尾くんがいたたまれなくなったのか、作者であるまるちゃんの名前を大声で…そりゃ恥ずかしいですよね…

そしてまるちゃんがやらかします。ここまで細かく書いておいてなんなんですが、あのやらかしたまるちゃんのいたたまれなさ…直にご確認ください。

そしてエンディングでそれまでの話を思い返しつつ共に泣きましょう。


番外.同窓会

漫画本編の最後に、成長したクラスメイトが出てくる描き下ろしが載っているのですが、これがまた…やばい(語彙力喪失)

大野くんと杉山くんのお話の後ですので出てくるキャラクターは限られているのですが、大野くんと杉山くんファンとしては絶対見ておくべきお話だと思います。

26歳になったクラスメイトの元に、同窓会の招待状が届きます。

会話やストーリーは実際に読んで楽しんで頂くとして、ここで出てくるキャラクターを簡単に書き記せていただきます。


とし子ちゃん=イラストレーター

はまじ=漫才師になろうと上京したがやめてトラックの運転手に

花輪くん=変わらずヒデじいを連れておりヒデじ曰く「立派になられた」

みぎわさん=花輪くんのためにお嫁にいかずに待っていた

たまちゃん=結婚した

ブー太郎=結婚して奥さんの酒屋を継いでいる

大野くん=宇宙を目指し物理学者として研究所で働いている

杉山くん=宇宙を目指しパイロットとして研究所で働いている

ケンタ=サッカー選手

永沢くん=喫茶店「たまねぎおじさんの店」マスター独身

関口くん=バンドをやっているフリーター

丸尾くん=堅実なサラリーマン

まるちゃん=漫画家

藤木や笹山さんも出ていますがここでは職種などは描かれていません。


ここでやはり注目すべきは26歳の大野くんと杉山くんです。

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『共に船乗りを夢見ていた少年』が、今度は『共に宇宙を目指している』とか、エモい以外の言葉が見つかりません。

未だにずっと一緒に夢を追い、同じ企業で働いている。本編を見て『ふたりの仲がずっと続きますように』と願った視聴者・読者の夢が叶っているのです。先生本当粋なことをしなさる…

ちなみに杉山くんが「おれたち」と言った後「ぼくたち」と言ってるのはミスなのかなと思いつつも、(もしかしたら仕事先で上司や先輩に話す時には「ぼく」と言っているからここでポロっと出ちゃったのか…?)と思ったらたまりません。

見たい…ふたりが研究所で働いているところが見たい…

杉山くんが髪を下ろしているところも杉山くんファンとしてはポイントなんですが、よく考えたら先生の描く杉山くんの箒頭のままだと研究所で働く大人に見えないからなのかもしれない。と考えるとまたおもしろいなと思いました。

そしてやっぱりまるちゃんが最後にやらかすのがまた…本編ともリンクしてて、まるちゃんはいつまで経っても変わらないな、という気持ちになります。

みんな大人になっても変わらず元気にそこにいる。その様子が見られるだけで幸せです。


最後に

ここまで読んでくださりありがとうございました。

普段ちゃんとした文章を書くことがないので、小学生の作文になってしまったのですが…この作品を布教するため、ひたすら愛を込めて書かせていただきました。

わたしがこの作品を見て感じたのは大きくまとめると

・映画は大野くんが主役であり、漫画は二人が主役である

・『友情物語』と同時に、『憧れを知らない子供たちが憧れを知っていく物語』である

です。

よく、今の優しい彼らに慣れている視聴者の方が、この作品の彼らを見て「ショック」「今のふたりでリメイクしてほしい」と呟いてるの目にすることがあるのですが、『憧れを知っていく物語』なので最初は憧れられているキャラじゃないのは当たり前なんですよね。

キャラクターが違うとかクラスメイトのメンバーが違うとか声が違うとか、この作品に関してはどうでもいいんです。

むしろ今のキャラクターでリメイクされてしまうと、感動は薄れるでしょうし全く別の作品になると思います。別物・別格なんです。

このキャラクター、このデザイン、この音楽、このストーリー、全てが合わさっているからこそ、ここまでみんなに愛されている作品であり、

この作品があるからこそ、今でも大野くんと杉山くんの関係に深みを感じられるのだと思います。


当然「わたしが感じたことは全然違う!」と言われる方もいらっしゃると思います。十人十色ですから。「他のキャラのことももう少し書いてほしかった!」と言われる方もいらっしゃるかもしれません。それらの熱い思いを是非ご自身で書き残していただけたらと思います。


なんだか思ったことを色々勝手に書いてしまって、いいのだろうか??という気持ちでいっぱいなのですが…

1人でも興味を持ってこの作品を見ていただけたら嬉しいです。知っている人も改めて見返してみてください。わたしもまた見返します。


見るたびに、またわたしは彼らに憧れるのです。


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