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"不耕起"という農法を知った。

これを読んでくれている人は、有機栽培、オーガニックという言葉は聞いたことがあると思う。
農薬や化学肥料を使わない農法で、健康や環境に良いとされている。

私も有機栽培こそが最も身体や健康に優しい農法だと思っていた。

しかし「不耕起」つまり「耕さない農法」があるということを知って目から鱗どころか、牛乳瓶の底でも落ちたのかと思うくらい世界が広がった。

なぜ耕さないのか

一般的に農業といえばまずはクワや犁で土をふわふわに耕すイメージだ。
土を耕す目的は次のようにいわれている。
①作物の種や苗を植えやすく、根を張りやすくする
②雑草が生えないようにする
③有機物の分解が進み栄養を増やす

しかに不耕起栽培では畑は絶対に耕さない。
それは長期的に考えた時に得られるものが大きいから。

1.土壌の侵食を防ぐ

想像してみてほしい。
土を系(いと)と混ぜてビニールシートを被せた山と、ただの砂の山を公園の砂場に放置したとき、長く形を保っているのはどちらだろう?

誰でも前者と答えるはず。
系が骨組みとなって土を支える上に、ビニールシートが雨や風から守ってくれるから。

それと同じで、不耕起では植物の根や菌糸(土壌にいる細菌がだす納豆の系みたいなもの)が土をしっかり掴んでおり、さらに地表には草が生え、土は雨や風の刺激を直接受けることはない。

数十年、数百年という長いスパンで考えたときに、土を耕すということは、土壌や土壌に含まれる栄養素がどんどん流れだしてしまうということ。
だから持続的に農地を使うためには耕してはいけない。

2.土壌の生命活動を守る

土で遊んでいると必ず出会うのがミミズやダンゴムシをはじめとした無数の虫たち。

こういった土の中にいる生命体たちは、葉っぱや死骸を食べて分解して土に戻している、いわばお掃除やさん。
お掃除やさんは目に見えるサイズだけではなく、細菌類も分解者として重要な役割をはたしている。

実は、細菌(菌根菌)と植物は密接な依存関係にあって、植物は光合成でつくった糖分を根を通じて分泌して、菌にあげている。
菌は何をしているかというと、植物から糖分を貰う代わりに、畑の有機物や鉱物を分解して、微量栄養素(リンとかカリウムとか窒素とか)を植物が利用できるようにしている。

植物が根を張るのと同じように、菌も菌糸といって長い糸を土の中に張り巡らせる。菌にとってのライフラインみたいなもの。

畑を耕すと、ミミズや虫の生活する場所がなくなるのはもちろん、菌にとってのライフラインをズタズタに切り裂いてしまうことになる。
菌の居場所がなくなると、植物にとっての微量栄養素の供給源がなくなり、化学肥料に頼らざるを得なくなる。

化学肥料から抜け出し自然の力で微量栄養素を作物に供給するには耕してはいけないのだ。

3.水の浸透をよくする

近年、異常気象という言葉をよく耳にする。
干ばつもそのうちの一つ。
土の中の水分もカラカラに抜け、作物も枯れてしまう。

不耕起では干ばつによる被害を減らすことができる。
一見、耕した方が水が浸透すると思うかもしれない。

しかし、植物の根を侮ってはいけない。
耕さない畑では被覆植物(作物の他に肥料や土の乾燥を防ぐために植える植物)の深く張った根が、雨水の土壌への浸透を助け、さらにその根が雨水を土壌中に長い間保持する。

一方、耕した畑は土の表面に水が溜まり、土に浸透せずに流れてしまう。
小麦粉をいれたボウルに水や牛乳を入れるのを想像してほしい。液体ははじかれ、なかなか吸収されないと思う。


以上の3つの理由から、畑を耕さない不耕起という農法が持続的な土壌利用という観点で素晴らしい選択肢だと思う。

持続的な農業という意味では、不耕起に加え、
被覆すること、有機物を増やすこと、混作(一つの畑に複数の作物を植えること)や輪作(同じ場所で複数種類の作物を代わる代わる植えること)などが必須。

ただ不耕起という、本を読まずには知り得なかった選択肢はもっと色んな人が知っていくべきだと思う。

これからも畑たのしむぞー!


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