一人旅のときの話
島に1人で旅行に行った。暇だったからなんとなく。
2日目かな。台風が通り過ぎた翌日で、晴れてるけどものすごく風の強い日の話。
プラプラと散歩しようと思って、バスで街の方に行ったの。
最初のほうは結構のんびり散歩できてたと思う。コロッケ食べたり波止場眺めたりして。
でも栄えた観光地ってわけでもないし、なんでか殆どのお店がその曜日定休日だったから、すぐすることなくなっちゃって。
どうしようかなーと思って歩いてたら、林に続く階段があったから、とりあえず登ってみようかなと思った。
登ってる途中に海の方を向いた鳥居があって、とりあえず手を合わせておいた。
でも鳥居の中側はなんもなくて(というか台風で壊れちゃったのかも)、なんかでっかい木の枝とか落ちてた。
だから心の中で「こんにちはー。お邪魔してますー。頑張ってくださいねー。」って言って通り過ぎたの。
で、階段登り切ったら住宅街みたいなところに出て、日差しがキツいなー思いつつまた歩いてた。
なんだけど、ちょっとだけ標高があがった所為なのか、すっごく風が強くなってきちゃって。
もうさ、歩けないのよ。こけそうなくらい強い風で、ちょいちょい柱とかに掴まって踏ん張ってた。
こりゃだめだと思って、下に戻ろうと思った。
公民館みたいなところに地図があったから、それ見たんだけど、さっきの階段以外の道はすごく大回りみたいだった。
しょうがないから来た道戻って、さっきの階段を下ることにした。
なんかもっかい鳥居の前通るの恥ずかしくて、ちょっとそそくさ通っちゃった。
そしたらさ、行きはあんまり気にしてなかったんだけど、鳥居から20段くらい下くらいに、博物館みたいな建物の入り口があったの。
古いけど綺麗な日本屋敷みたいな建物。
窓からちょっと人影も見えて、看板みたいなのもあったから、あ、ここ観光用の博物館だって気付いた。
それで、そこまで興味なかったんだけど、あんまりにも風が強いから。
休憩も兼ねて入ってみたの。入場料あんまり高くないといいなーって思いながら。
なんだけど、扉開けてみたら誰もいないのよね。受付とかもなくて、観光スポットのチラシが何種類か壁に貼ってあるのと、スリッパが何個か置いてあるだけ。
入場料も無料って書いてあった。
珍しいなと思ったけど、のんびりできていいかと思ってスリッパに履き替えて中に入った。
古き良き和の建物素敵〜とか思いつつ歩きだしたら、急に視界の端に人影が見えてうわ!!!?ってなった。
びっくりしてそっちみたらさ、違ったのよ。
人じゃなくて人形だった。
かなり精巧で、サイズも実寸代のやつ。
でも全然怖い感じじゃなくて、顔も穏やかな綺麗な人形。
和装で湯呑みでお茶飲んでた。
あ、昔を再現してるんだ、、ってわかって、もう一つ気づいたの。
外から見えた人影ってこれか、って。
ああじゃあほんとに誰もいないんだーってちょっとしょんぼりしたけど、すごくよくできた人形に結構感動して。
さらに進んでいくと他の人形もいっぱいいて、宴会場ではお酒飲んでる人形とか踊ってる人形とかもいた。
楽しくなってきてニ階に続く階段登ったら、二階は人形いなくて、和室みたいなスペースと廊下しかなかった。
廊下には白黒写真が飾ってあって、人形のスペースは終わりかーって思った。
とりあえず写真見ながら進んだら、奥にある台みたいなのの上に、ボタンが置いてあったの。
「押したら動きます」って書いてあった。
そういう装置かなって思ったけど、なんで人形がいる一階じゃなくて二階に設置しちゃったのよってちょっと笑った。
でも二階の和室には日焼けした畳の跡がちょこちょこあったから、前は二階にも人形があったのかもしれない。
じゃあ押しても動かないかもなって思ったけど、とりあえず押してみることにした。
えいって押したら、一階から三味線みたいな音楽とか、ドンチャンしてる感じの音とかが聞こえはじめてさ。
あ、動くは動くんだ!って小走りで階段までもどって一階に駆け降りたの。
そしたら、人形が動いてたんだよね。
人形っていうか、人がいっぱいいた。
お酒飲んでて、手叩いてワハハって笑ってるおじさんが何人かいて、横にはお酌してる人がいたり、その前には綺麗な着物着て三味線弾いてる人とか踊ってる人がいて。
ぼーっと突っ立ってたら、後ろから「ちょっと御免なさいねー」って言われて慌てて端によけたの。
お盆持ってて、温泉旅館の従業員みたいな人が「どうもー」みたいなこと言いながら通り過ぎて行った。
たしかに誰もいなくてしょんぼりしたけども。
はーー、最近の人形は人にもなれるんだなあって感心しちゃったよね。
なんか忙しそうだったし、外見たら結構風もおさまってたからさ。
「ありがとうございましたー」って入り口の近くにいた人に声掛けて、帰ってきたよ。
田舎の人形って結構あったかいね。
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