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働かないひと

タイトルからしてまた“怠け者のススメ”みたいに思われるかもしれませんが、インタビューされている10人に共通している言葉の一つが“働いている感覚がない”という事で、そこから“働かないひと”というタイトルに繋がっている。もちろん、彼らはちゃんと仕事をしているし、周囲には“働きすぎ”などと言われる人ばかりなのに“働いている感覚がない”と答えているのはどういう意味なのか?

そもそも“働くってなんだろう”という事を、ホストから天文学者までさまざまは職業の方々にインタビューしていく。

「むかしは自分たちが食べるために畑を耕すとか、魚を採ってくるとか、“生きること”仕事だったのが、現代では“いかにストレスなく効率的にお金を稼ぐか”、ということが、“働くこと”になってしまっている。」と楽天市場を立ち上げメンバーで、現在、教育事業に取り組む本城慎之介氏は言う。

“働く”=“お金を稼ぐ”という事が当たり前の価値観のように、思い込まれてしまっているだけじゃないかと本書は問いかけてくる。

「仕事という事に関して、ああでもない、こうでもないと考える前にとにかくやった方が早いというのが僕の考え方です。」とは働き方研究家の西村佳哲氏。

エーリッヒフロムという哲学者の著書“愛するという事”を引用し、“どんな仕事もどんな風に働くか次第”だと説いてます。その本の中で現代における愛の技術が以前と変わってきているという話があり、現代の恋愛は自由恋愛で、自分が望ましい相手と出会って、その後幸せに暮らしていくという価値観。しかし、地域共同体や「家」というものが強い昔の社会では自由恋愛という考え方はなく、結婚相手を親や地域が決めてしまうため、めぐりあわせで決まった人とどうやって愛を育んていくか、つまり愛は育んいくという考え方だったものが、現代の自由恋愛は出会った瞬間がピークで、その後はどうやってその興奮と環境を維持していくか。要するに、“消費なんだ”っていう指摘がされていると。

僕らのライフスタイの中で、たくさんある選択肢の中から、自分にとって良いもの買うという消費における思考パターンが恋愛にも表れているという指摘は、すごく耳が痛い。

この考え方は仕事にも当てはまっていて、スキルアップ、キャリアアップとどんどん仕事を変えていったその先には、一体どんな充実感があるのかというと、実はないのかもしれない。今は目移りしやすい世の中なんだと。

だから充実感を得たいのであれば、今、自分の手元にあるものをどれくらいやりきるか、付き合っていくかという事はとても大事な事なんです。いかに足るを知るかということが、現代人の課題なんだと本書は語りかけてくる。

大人になるにつれ、いろいろなものに追われ、日々生きるのに精いっぱいになってしまうけれど、

“働かないひと”の働き方は、いろいろなことを気づかせてくれる事と思います。

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