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改めて向き合おう #片思い天使

img 「片思いの天使たち」を観劇
個人的にも、色んな所で関わった部分があります。

連続ドラマ形式

リモート演劇の私たちに明日はある、でも実施された連続ドラマ形式。全5話の110分。ショートストーリーながらも、登場人物に深みを与えていく、本当に連続ドラマのように引き込まれていきます。
各話ごとでフィーチャーされる人物がいるから、変な消化不良はなく。よくある、推しが最後まであんまり見せ場無かった…みたいなことはほとんどないんじゃないかな。もちろん配役的にメインでない人もいます。それでも、その人に何か花を添えようという計らいは随所に見えました。
個人的に印象に残ったのは、喫茶店のマスターは、第2話にしか出ず、セリフはほんの少しでした。でも、花火に行ってきた今日子にかけた「頑張ったね」という言葉。たった数行分しかない言葉でも、「この人がいて良かった」と思える名シーンと思います。このセリフを映えさせるための演出もまた然りだったと思います。
序盤にこのシーンがあったおかげで、全人物を雑に扱わずに丁寧に、大切に扱っていることが分かりました。

その涙は果たして

今作ではたった1人、命を落とします。人が死ぬっていうのはとってもエネルギーを消耗します。だからなのか、わりとあっさりと人を殺してしまう舞台もあるんですよね。泣いているのも、スイッチオンして泣いてねっていうから泣く、みたいなのも。(もちろん演技力としては○なのですよ)
じゃあ今作はというと、ナナが書いた遺書とも言えるブログの下書きを圭二が読んでいるシーン。おそらく最初からは泣かない。でも、段々とその言葉の一つ一つの重みが積み重なって、我慢が出来なくなる。だから涙を流すタイミングは人それぞれだったと思いますし、もしかしたら圭二や旭もグッとくるタイミングが違ったと思います。それがリアルな人の心の動かし方だなと思いました。このときの2人の、グッと目に涙を浮かべて堪えてるシーンは、色んな感情が揺さぶられます。 後悔とか、悲しみとか、無念とか。もしかしたら、実際に起こったことかもしれないし、もしも自分の大切な人に皆様はどう感じましたか?

また、ナナの最後の言葉。
決して独特な言い回しでは無い。今から命を絶とうとする女性から出た最後の飾らない言葉。というバックボーンが、多くの人の涙腺を刺激したことでしょう。
今ここで「ありがとう」なんて文字を見つめても泣く人なんていません。これぞ役者のあるべき姿なんだと思います。

全体を通して感じた波

今作は淡々とことが進むことはなく、感情の激しい波がそこかしこに生まれます。明るい圭二と心愛も、それぞれのメインパートではスっと笑顔が消える、ただならぬ雰囲気があり、どこか掴みどころのない四葉も、幼少期の過去がある。今作では比較的そういう陰と陽のない大も、もしかしたら…なんて思えてきますね。もちろんシリアス系の舞台なら、遊んでるシーンとかふざけてるシーンは要らんとは思いますが、後述する今作のメッセージ性を考えると、そういう暗い部分を押し殺して普段は楽しく過ごすなんてザラにある事ですよね。むしろ、普段楽しくしているからこそ、闇というか陰の部分を表に出したくないのだし、出てしまったときの落差が大きくなる。今作は、この感情の波が凄く大きくて、観劇後のなんとも言えない気持ちの要因の一つだったでしょう。

練られた伏線

今回はミステリーというものではないですが、人物の行動原理がしっかりとしており、細かい描写をサボっていないです。

首を絞めた通り魔がやけに簡単に振りほどかれている→犯人が女性だから
死について興味→剥製や標本のインテリア
という伏線の張り方や

いきなり出てきたかき氷→シロップは見た目が違っても中身が同じ→見た目が違っても本質が同じである私たち
のような、ちょっぴりゾッとするような散りばめ方。こういう物を哲学というか、格言のようなものとリンクさせるのはimg作品の面白いところだと思います。
また、お馴染みの隠れ数字、今回はまあ分かりやすく4ですね。
4つ上の姉、4人組、大富豪の8切り(4×2)と革命(4枚同時出し)、トランプのマークなどなど。こういうこだわりを持つ作品は好感が持てるのです。

今作のメッセージ性

今作は、主宰の谷口さんとも話していましたが「面白かった」以外の感想が出てくる。そういうメッセージが込められた作品です。
例えば、人の首を締める性癖のある澪を、本当に「好きな役だ」と言えるかというと賛否は絶対巻き起こる。そういう変わった子と仲良くしていた四葉は偉いねって心から言えるかな?
昨今賛否両論の「否」を少しでも唱えるとリトマス試験紙のように黒とされることが多い。もちろん、ナナの命を奪うようなものはご法度ではあるものの、じゃあ自分は白です。なんて言えない自分もいる。グレーだったり、白って200色あったりするかもしれないですし、本作で喩えられた「かき氷のシロップ」のように見た目は違っても中身が違うとかもあるかもしれないですね。
四葉の思う葛藤も、中には同じようにぐじゃぐじゃした気持ちになる人がいたかもしれないです。


また、片思いの天使たちは、ここ最近演劇界に思っていたわだかまりを最大公約数的に、可能な限り言葉にしてくれた作品だと思いました。善し悪しは別としてね。それはもちろん、主宰の谷口さんのマインドによるものだと思います。そして、そのマインドに出演者の方々やスタッフが応えてくれている。そう感じます。
ただなんとなく、義務だとかノルマだとかそういうものでVIPチケットは買ったつもりはなく、やはり劇場を支える方々を応援するためという意味合いでお金を出したつもりです。お弁当なり、交通費なりでも、「演劇界を応援してお金を出した人がいる」という証拠を残させていただきました。それを言葉と行動で示していることを知っているので、かなり刺さる言葉が作中多くありました。
中には、この作品を見て「もっと支援すれば良かった」とか思った人がいたかもしれませんね。
11/1から11/2にかけて5人も増えたところは、嬉しいことだと思います。

ここからがスタート

今回、2500円席というかなり安価な席も用意されており、演劇や役者という世界をもう一度見つめ直すきっかけになる人が1人でもいればなと思います。
私自身、応援の仕方をどうしようかと思う所が多々あったので、真摯に「演劇っていいものだよね」という視点でまた観劇ライフを楽しもうと思います。


ちなみに

今回、VIP席を購入してその恩恵を受け取りました。普段は見えない気合い入れ、リモートマイクチェック、暗転チェック、舞台監督さん、主宰さんの行動など。初日ということもあって独特の緊張感がありました。「演劇が好き」と豪語するにはやはり経験するべきことではあったと思いますし、こういうのは演劇を志す人も是非経験する機会が増えて欲しいなとも思いました。
なかなかこういった経験がない某コンシェルジュ様(公開OKになったら名前載せます)も、座組の一員かのような独特の緊張感でもてなしてくださいました。こういった作品に関われてとても素敵な経験が出来ました。


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