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イギリスは燃えている(か) − David Shrigley と Billy Nomates

数ヶ月前のある日、ツイッターのタイムラインが面白いことになっていた。

 「我々の旗が燃えている!
  何をすべき?
  ー 火を消すために水をかける
  でも我々には水がない
  ー 困った! じゃあ旗が燃えるのを見ているしかない」
             David Shrigley(アーティスト)

これを「❤️ Billy Nomates さんがいいねしました」と出てきた。
自分の好きなアーティストがまた別の好きなアーティストの作品を好き、という状況にうれしくなった、というストーカー的な瞬間。
そこから「燃えている」繋がりで Billy Nomates の《FNP》を思い出した。

あたしは床の上で寝る
家賃も払えない部屋で
やりたくもない仕事のために
フォークをもって生まれたから
スプーンじゃなくて
そして何事も失敗に終わる
"生活" は高価すぎるし
あー、警戒しないで
何が欲しい? 血って?
あたしはポジティヴ(陽性)
そうだよ

勝つために逃げようとしたこともある
でも結局元に戻っただけ
奴らはあたしの匂いを嗅ぎ分けられるから、1マイル離れていても
だから不名誉にも降参してしまった
今やあたしを生かしてくれる
唯一の事実は
あたしが何も所有し得ないのなら
何もあたしを所有し得ないということ
何もあたしを所有し得ない
目に映るすべては

忘れ去られた普通の人々
そう、あたしたちは生まれながらに平等じゃない
燃え立つ世界はあたしたちのもの
そしてあたしは燃えている
あなたの取り決めの上で踊り
汚れたヒールを掘り起こす
この世界にあたしの所有物なんて
ひとつもないから

すべての分かれ道を試してきた
でも自活なんて、今も、これからも出来やしない
筋書きに無い方がいいこともある
こっちの方でひっそりと生きようとなんてしない
奴らが消えてほしいと願う社会の隅で
ここには奴らのちっぽけなマインドでは
扱えないほどの魂がある

忘れ去られた人々は、忘れてはならない勢力
[...]
奴らはいろいろ滅茶苦茶にしたかもね、想定外で
でもあなたはその席に座り、エンジンをかける
これはあなたのドライヴだから
これはあたしたちの車で
これはあたしたちの人生
あたしたちそのもの
[...]

以下、「火」「燃えている」「赤」のテーマで思い出した David Shrigley の絵と Billy Nomates の投稿やエピソードをランダムに。

「もうすぐわたしは噴火する
 そしてそれはあなたのせい」

「火のうえを歩く
 楽しいし、絶対に安全だよ」

          「日
           日焼け」

「大丈夫だよ
 口紅を塗っても」

「奇跡は起こらないだろうけど、きのう、31歳にしてはじめてリップライナーを使った。ちょっとした革新」

「チキンのひどく激しい怒り」

Billy Nomates が Jason Williamson とはじめて会ったときのこと。Billy Nomates 曰く、ふたりがきっちり「会った」のは Sleaford Mods のロンドン・ハマースミスでのライヴだったが

「その2年前に、ボーンマスのレコード屋さんでのサイン会に並んだ。それなのにドアの前まで来たらビビって(chikened it)逃げちゃった 笑!」

とのこと。"Chiken" ってそういうふうにも使うのか。彼女の Sleaford Mods へのファン熱が伝わってきた。

「自身の憤りを
 享受せよ」

「私の喜びを目撃しなさい
 あなたにも喜びが溢れるでしょうから」

「火が消えたら何が起こる?
 何も起こらない」

「万事、大丈夫
 心配無用」

「私は認めます
 あなたのバカなアイディアを」

「吾輩の鞄は齧歯類でいっぱいだった」

そして、燃えていないし赤くもないけど……

「逃げろ、逃げろ、逃げろ
 あなたが生み出したすべての災難から」

Billy Nomates《Escape Artist》(逃げろ/る、アーティスト)

電車通勤は、醜い
あたしの感覚は、無
あなたはプロだね、耳を引っぱられなくても通勤できる
あたしとちがって
[...]

安全・健康管理の教材ビデオ
今すぐあたしをころして
あなたがあたしに登れっていうはしご、信用できないから
ここにあたしの所有物なんてない
この車輪は誰が回す番だとか関係なく、ただ回転する
火曜には麻痺

水曜の午後には半分死んでる
大したことじゃないってあなたは言う
大したことじゃないって言うのは誰?
どんな部屋の隅にでもいる あたしを見つけて
出口を探してる、出口を探してる
出口を探してる、出口を探してる
出口を探してる、出口を探してる
あたしをここから出して
この不快な場所から引きずり出して
こんなことのために
あたしはここにいるんじゃない


火のついたユニオン・ジャックを見たのは昨年の9月、頭のなかで加古隆と Clash が流れて勝手なタイトルを思いついた。David Shrigley はおそらく、感染拡大を止められなかったイギリス政府を揶揄したのではなかろうか。個人的な連想ゲームでまとめ記事みたいなものを晒すのはいかがなものか……、と放置しているうちに数ヶ月たった。
そして今、イギリスはまた「燃えている」。それに気づいたのもツイッターきっかけだった。イギリスのミュージシャンやDJさんたちがいつにも増して Boris に怒っているなと思ったら、なんと今度は彼の私設秘書が2020年5月に首相官邸裏庭で「ソーシャルディスタンス取った飲み会します」「各自お酒持ってきてくださ〜い」というメールを大勢の関係者に送っており、実際にそのパーティーが開催されたとか……(註)。国会答弁では、ある野党議員が閣僚に対して「ロックダウンの規則を遵守」してもなお命を落とした人々、「ひとりで死んだ義母」を含む国民のためにも、警察による捜査の「詳細は全面的に公表されることを確約してください」と、涙ながらに訴える場面もあった(同上)。Boris Johnson がこのパーティーに出席したかどうかについては、これから答弁がなされる(同上)。

「今度首相に会ったら
 あなたは糞ったれですねって伝えます」


註:BBC - Downing Street party: PM to face MPs following revelations
「首相官邸のパーティー:首相は間もなく議員の摘発に応答する」(2022年1月12日更新・閲覧)

1月14日追記:
註に挙げたページはのちに再更新され見出しが変更されていましたが、上記は1月12日20時ごろに閲覧したものを反映しています。Johnson首相の答弁はその直後に行われ、概要はNHKでも報道されています。
NHK Web「英首相 おととし感染拡大中に官邸でパーティー 参加認め謝罪」(1月13日更新、1月14日閲覧)


*歌詞参考:https://genius.com/albums/Billy-nomates-uk/Billy-nomates

*以上に引用した作品、歌詞、文言の翻訳・解釈は筆者によるもので、個人研究を目的をします。
*以上に引用した作品の権利はその作者(David Shrigley、Billy Nomates ほか)に帰属します。


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