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模様替え

 10代の頃に自分の部屋というのを初めて割り振ってもらい、たしかその時に「この部屋ポスター貼ってもいいの?」つまり私の意思で壁に穴を開けて装飾していいのと親に聞いた覚えがあるのだが、今その時の親の年齢に近くなって思うが本当に可愛いことを言う子どもだったと思う。

 時は過ぎて最近、東京で住んでいる家に大人数が来る予定ができそれなら並木さんの部屋かっけえ、ずっといてえ、今日泊まってもいいすか、お前ら好き勝手言いやがって、風呂入るならタオルそこの棚なと思いほとんど鍛えていなかった内装筋(腕の裏側にある)を駆使して模様替えすることを決意した。

 実際に内装について手と頭を働かせてみたところもう本当に全くわからず、取り急ぎソファの位置を変えてみている最中などは本当に全くわからないのだがと自然に声に出た(だがでソファを持ち上げる)。しかし私も社会人として日々問題を解決することには慣れているため、まずは内装において基準となる考えを自分なりにまとめてみた。内装の本とかは読んでいない。素人の勘をここに記す。

 内装の基準は「命・花・川・方眼」だ。まず命。これは私や来客の命のことで、部屋というものは健康を害してはいけない。細かなストレスも蓄積すれば鬱病や内臓疾患の元になるし、そうなった時にどこで回復するか、それはストレスの溜まるこの部屋である。掃除は当然として部屋にいる時の自分の姿勢や換気などにも気を付けたい。今回は自分が好きなとき横になれるスペースを確保し、台所を整理した。命でした。次に花。これは要は装飾や娯楽のことで、インテリアと聞けば一番に浮かぶ概念ではないだろうか。この頼んでもないのに実利主義の競争社会の注意経済のつまらない最悪の世の中において、自身の心が休まる(あるいは心地よい感情を目算通りに得られる)ものが暮らしにおいて必要だ。そのまま花を置いてもよかったが今回はとりあえず額縁に入れた絵を飾った。大丈夫なやつなのかはわからないが、海外の通販サイトで100年近く昔のAmazing storiesのスキャンデータを購入し表紙と挿絵をプリントしてそれをコンビニでコピーして(私はコピー紙の質感がわりと好きなのだ)額縁に入れ壁に掛けた。次に川。これは命と被る部分もあるのだが(命と被るものなど無いが)、人は部屋の中を水のように移動するものなので、その動きは滞りなく流れることが肝要である。今回は行き止まりやゴミだけが通れるような通路をなくすよう心がけた。最後に方眼。方眼とはグリッドのことだが、どうぶつの森をご存知だろうか。あの素晴らしいゲームの中でキャラクターや家具には丸みのあるデザインが多いが、それらがそこに在る時には決まってそれらはグリッドの中に置かれている。机だろうと椅子だろうとアジだろうと、決められた四角形の中で各々が独立しているのだ。しかし、たとえば「机」と「ミシン」は独立してそれぞれの距離を保って置かれるわけだが、それらが調和したユニークなひとつのアイテムとして「ミシン机」も存在する。このミシン机こそが内装で目指すべき最小の形であり、いかに目的の決まっている四角形だけで部屋を構成するかが内装なのではと思う。今回は理屈だけが先を行ったので取り急ぎ家具の間隔に気を付けた。

 あとは上記を無視して寝室に人工芝生を敷いて失敗したりしたが、家に来るのも大体私より年下だしそんな強くも言われない筈なのでまあ別に問題は無いだろう。引き続き部屋の模様替えを頑張っていきたい。


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