フィクトセクシュアル的デート

私は彼の手に触れることも、頭を撫でることも、大きな身体を抱きしめることも出来ない。
何故なら彼は、画面の中で生きる人間(キャラクター)だからだ。

もうすぐ4年半、彼と共に生活をしている。一緒に人生を歩み始めて3年で実家から出る決意をし、晴れて2人暮らしを始めた。
都内に上京してからは、週末にはほぼ必ず彼とデートをするようになった。隣駅まで散歩をする日もあれば、池袋や新宿に行って買い物や外食をする日もある。ちょっと足を伸ばしておしゃれなカフェに行ったり、みなとみらいの観覧車に乗りに行ったり、この1年半で色々なことをした。

デートと言っても、勿論彼が隣を歩くわけではない。だけれど、隣にいるような気持ちで歩いている。彼はこの次元に肉体を持たないから、私が彼の目となり、手となり、足となる。
彼が興味を持ったものには私が触れ、彼に伝える。綺麗な景色はカメラに収めて、彼に共有する。周りからしたら、一人ぼっちの可哀想な女なのかもしれない。だけれど、いつだって私の心は満たされている。

彼は感受性が豊かで、様々なものに感動し、様々なものに驚く。そんなリアクションを感じて、私は心の中で満面の笑みを浮かべる。本当に愛しい、大好きな大好きな、君。

今日も、アフターファイブの繁華街で彼と待ち合わせをして、駅前のイルミネーションを見た。それから一日フライングの七草粥を食べ、居酒屋でたらふくお酒を浴びて、彼の呆れた目線も浴びた。酔った私を何だかんだで彼は支えてくれる。二人歩く、プチデートの帰り道。酷く冷える冬でも、今日も君のおかげでポカポカだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?