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フーゴ戦のロザリス城地下空間の石像はドミナントじゃないかもしれない話

前回、少年期クライヴが身につけるだけでなくクライヴが受け継いだ父エルウィンの服をはじめ、ロザリア関連の至る所に使われていたマーク『フェニックスの復活の卵』について色々と見てきました。

で、このマークを誰が身につけているのかを考えていくと、ロザリス城フーゴ戦の地下空間にあった石像って、歴代ドミナントではなく『代理大公とナイト』なのでは? となりまして、結果的にロズフィールド家が怖くなるね……というのが今回の話です。


まず、本編中では気付けるような仕様ではなくアートブックを見て初めてわかる、フーゴと戦ったロザリス城の地下に祀られていた石像の服にある『復活の卵』マークについて。

設定画でのマークの形は、エルウィンの服装にある『復活の卵』と全く同じ。アートブックでエルウィンが持つ鞘と比べると火が立ち上っていないバージョン。つまりクライヴが受け継いだ旅装束のソードベルトにある『復活の卵』と似た形状である。ご丁寧に16体全員お揃いで彫られている。

石像の『復活の卵』


エルウィンの『復活の卵』


石像とエルウィンは全く同じ型、同じ意匠を刺繍した服を着ているわけですね。

さてこのマーク、前回言及したのですが、病弱かつ身体ボロボロな作中で最も『加護』が必要そうなジョシュアの衣装には幼少期・青年期共に『復活の卵』は使われていないという点から、そもそもロザリアでは加護を受ける側ではないフェニックスのドミナントにこのマークはふさわしくないと考えられたのでは? と勝手に考えています。 


その前提で、ひとまず代理大公であれ歴代ドミナントであれフェニックスの加護を受けられる生者でもない石の像の服に『復活の卵』を刻む理由は?

物語の設定上、死した時点で確実にフェニックスのドミナントではなくなる(英ロアの記述『新しいドミナントは先代が死んでからしか目覚めない』)ことに加えて、このヴァリスゼアには輪廻転生の概念がある。
つまりこの者たちが全員ドミナントであったとしても、少なくとも『死からの復活』は願われていないことになる。生き返られては困るし、生き返らせられても困る。
であるならば、魂が常人に戻った彼らへの「次の世でも炎の加護あらんことを」という鎮魂のためだとするとマークが像全員に彫られたのも理解できる。 像の元になった人物の命の復活のためでない理由としては、父上の鞘や種火の守り手エンブレムと違ってこれらの意匠が燃え上がっていないことも挙げておきたい。 少年クライヴの『復活の卵』が鞘だろうが左肩だろうが一切燃えていないのも『加護』全振りということかな。

アートブックにあるエルウィンの鞘のほうはインヴィクタス同様おそらく次代へ受け継がれていかなくてはいけないものだから、振るう人間より復活のニュアンスが強く出る炎ありの意匠が彫られているのもさもありなん。 種火の守り手はシンプルにその名の通りフェニックスの復活を灰の中から望んでいるから燃えている。

ただ上記のようマークを刻んでもおかしくない理由を色々と考えていっても、この像が『歴代大公全員』だとすると不自然な点が多々残っている。

結論から提示すると、もしかしてこの石像って
・歴代ドミナントに命をとして仕えた『フェニックスのナイト』 たち
・ただの人の身で次代のドミナントのためロザリアを治めた『代理大公』 たち


つまりフェニックスのドミナントたる大公の近縁者らだけなのでは?
功績あれどロザリアの歴史の表舞台に名を残す必要がないただの『人間』さんがた――ロズフィールド家のお歴々だったかもしれない。

ここにドミナントはいねぇという主張です。だからドミナントだった、クライヴとジョシュアのおじいちゃんもいねぇはず。


いやいやめんどくさいな全員大公でしたでええやんという心の声に抗いつつもまずの不自然な点を挙げていこうと思います。

これが墓であれ鎮魂であれ何であれ、この国の宝であり心の支えであるフェニックスたる真の大公の像だとすると、わざわざあんな地下深くにひっそりと置く意味がよくわからない。なぜ民に参らせない。なんでこんな陰気な場所なんだ。

石像の間に続くおそらく唯一の回廊。
大人数を参らせる気はまるで無い。


ロザリア国民が偶像を建てての個人崇拝をするのは、英公式にある実写版動画に幼少期ジョシュアの像が立っている点からもわかる。あれが28歳クライヴの現実であれ妄想であれ夢であれ、その文化がクライヴをはじめとするロザリア国民に根付いているのが公式解釈なのは確かである。まあ実際に地下にも誰の手によるものか御供物が置いてあるし。

FINAL FANTASY XVI - Requiem Live Action Trailer


にもかかわらず民が訪れられない城の地下に? 偉大な大公の像を? ますますおかしい。クライヴとジョシュアのおじいちゃんなんかその治世を生きましたって民がまだまだ城下に居るだろうに。

ロズフィールド家が筆頭となり、公国としての建国からは約300年。代理・正式/人間・ドミナントを問わずこの像全員が大公位についた者だとすれば妙に数が多いのも気にかかる。後者であれば譲位なく死ぬまで大公なのに、石像は全部で16体。

しかもエルウィンの発言によりロザリア国内では同じ大公を継いだ者でもその権利にも扱いにもかなりの差があるはずの人間・ドミナント両名を、特に区別もなく同じ場所で同じくらいの祭壇に同じ素材で同じ頭身の像として作るのも心底謎。
そして『クライヴ』がぐるりと像に囲まれたあの場でわざわざ戦わされたということも気に留めたい。

ここにフェニックスのドミナントであった真の大公はいない。この者たちは、主人のために死んだ歴代のナイトや王と王の繋ぎを果たした、ただの人。玉座の足下深くで静かに眠るにふさわしい素晴らしき凡人……
であれば加護たる復活の卵を服に刻まれることも、民が参る必要がないことも、全員が同じ扱いなのも、数が多いということにも納得がいく、かな?


また一番興味深いのが全員ガッツリ武器持ちであること。 改めて16体全員を見ていこう。


アックス6人、ロッド5人、ソード5人……

いや、クリスタルを嵌め込んだっぽいロッドを持ってるのは流石におかしくない!? ドミナントが、ロッド!?

身体や四肢へ自由自在に炎を宿せるフェニックスのドミナントがロッド=黒魔道士ウェポンをメインに選ぶのも、後にそれをお供に石像が建つのも、わけがわからない。要らないでしょう。
ドミナントなら素手でいいよ素手で! 実写ジョシュア像はちゃんと素手だったし! あの胸の前に握り拳掲げようよ! 作中でもジョシュアがよくやるかっこいいポーズ!
ちなみに実写版ジョシュア像は、ラスト回想の祝福シーンやアルテマ封印時の胸前ポーズの手を右左逆にした姿をしている。これにより「素手は威厳に欠けるな」という発想はロザリアでは一般的でないのがわかる。

ところでいきなり脱線なんですけど一方で、ラリマーみたいなクリスタル付きのロッドを私室に飾っているクライヴ兄さんどうしたどうしたと思うけど、あれただ古代の戦士みたいにぶちのめした敵の戦利品持ち帰ってるだけですよね?

クライヴの私室にある武器コレクション

武器スキンが魔法敵のものとまったく同じだし。そもそも『33歳クライヴがクリスタルを持って戦う』って心情がもうあり得ないし。クライヴの扱う武器ではないのは確か。
クライヴの隠れ家ってフーゴの襲撃への教訓から至る所に武器があるけどドミナントの持つ自分の力以外は黒の一帯で魔法が使えないので仲間の武器にすることも一切想定にないはず。
あのロッド、マジでただの観賞用ですね。拾い物する犬なの? もしくはあのミスト島の剣みたいに実は武器は全部トルガルの拾い物でそれを処分出来ないクライヴの図、とか考えると愛いですね脱線おわり。



話を戻して……アートブックのエルウィンのページを見ながらこのソード持ちの石像と見比べてほしい。


わ〜〜そのまんま同じ剣! 『復活の卵』ついてるやつ!

アートブックの石像設定画では潰れていて形状までわからなかったけれど、鍔というかガードの突起が全く同じですね。

・単なる繋ぎであり代理の大公エルウィンにドミナントが持つべき剣が受け継がれているのはやや不自然。
・フェニックスのドミナントがこの『復活の卵』が刀身にも鞘にも刻まれまくりの剣を持つ意味も必要もない。

……やっぱりドミナントじゃね〜なこの石像さんたち。

フェニックスを務めた歴代大公の像は、さんさんと陽の光が当たる地上、城のどこかにちゃんと民に花でもお供えされて立っているのかもしれない。襲撃で真っ先にぶっ壊されたかもしれない。

ちなみに父上も石像もみんなお揃いのあの形状の服自体は、赤でなければ青色バージョンで今もみんなだいすき叔父さんが着てるから、少なくともあれは王たる大公の為だけの装束というわけではない。
むしろこの服、『復活の卵』刺繍するならコレ!みたいな衣装だった場合ドミナントである大公は着用しない可能性すらある。

お揃い色違いの兄弟

ただ逆にロズフィールド家以外が着れるとも思わないから、『復活の卵』を持つべきナイトの中でも英ロアにある通り選ばれし首席の盾かつロズフィールドの血に連なる高貴な人たちだけがここには祀られてるのかな、と。 

石像では服の色がわからず大公の赤と決まったわけでないのがニクイな!と思います。
この仮説、『代理大公の像だけだと流石に数がおかしいから、じゃあ同じただの人間である血縁のナイトの像が混ざってるんじゃないの他でもない復活の卵いっぱい与えられてたナイトのクライヴがここで戦ってたんだし』からフワフワ始まったので、助かる。とはいえ大公しか赤を身に付けてはいけないとかはなさそうですが。フレーバーテキストのメティアの赤もあるし。
きっとエルウィンがフェニックスのドミナントだったなら、バイロンは装束に復活の卵マークをつけたナイトになるよう教育されたんだろうなぁ。


さて、この石像らがドミナントでないという結論に辿り着いたので、じゃあこれが『人間たち』の像としてどうしてこんなところにこんなものを作ったわけ? 何をしたかったの? という次の話に参りましょう。


そりゃあおそらく「心の支えである救国のフェニックスじゃないロズフィールドのただの人間たちなんか秒で忘れるんだぞ皆の者」かと。

フェニックスはいちばんすごい! ロザリアでいちばんだいじ! だからそれを産むロズフィールド家がいちばんえらい! フェニックスを崇めよ! という考え方なら、どれだけ良い治世を敷こうがただの人である代理大公が大々的に次の世にも続いて讃え続けられるのは、その根本が揺らぐレベルに差し支えがある。大公派にとっては。

『呪い』を持たない凡たる人間にこの国が良く治められるならフェニックスのドミナントが自動的に大公になる必要もなく、力を戦場で見せつけて国を繁栄させるだけなら、隣国ザンブレクで象徴的なバハムートのドミナントのようただの武人でいい。
おそらく長きに渡る貴族派との確執もここの理由になっていて、伝承を信じるべき民からの『フェニックスじゃなくてもいいんだ』は国主の権利へ付け入る大きな隙を与える口実になってしまう。

ナイトも同様に武勲をあげて歴代大公から頼られて命をかけて誉れに死んでも表舞台に像を建ててまで民に愛される必要はない。それは国を救うフェニックスのみが受けるべき賞賛だから。

良くも悪くも信仰が自由で尊ぶべきはフェニックス一辺倒の国だからフェニックス=大公=ロズフィールド家の構図を盤石のものにしたいロズフィールド家にしてみれば、死後だろうが民の中で『あの人偉大でしたね』とただの人の存在が大きくなってしまうと厄介。次のドミナントを産むまでの繋ぎでしかない歴史の不純物が長々と表立ってもらっては困る。
だからそういう考えに至る要因はもうしまっちゃおうね、という流れであの石像たちはあんな暗い地下にいるのかもしれない。

このあたりの『ただの人間たち』の頭の低い認識は卑屈なまでにエルウィンにもクライヴにも教育が行き届いていたし、それを自尊心が低いと咎める人もロザリスにはいないんですね、彼らはわかりきったフェニックスじゃないただの支えの駒なので。

アナベラがたった9年で周りからフェニックスを宿す子はまだなのかと謗られているあたり、ロズフィールド家は歴史を振り返っても一世代しか空けず、かなりコンスタントにドミナントを輩出していたことがうかがえる。アルティマニアにも『つぎつぎに誕生させていた』とあり、北部の『ごくまれにシヴァのドミナントが生まれ』との対比が興味深い。

世界を見回しても他に例がないくらいにこれだけ当たり前のようポンポンと救国伝承大好きな民をコントロールできる『呪い』の生き神を手中にできるなら、そりゃあもう有無を言わせず能力や人柄も一切関係なく譲位で国主に座らせる脳死コンボキメちゃうわな。

そして続けば続くほどこのシステムを変えられなくなっていく。本来なら炎の民であることと本人の能力が高いっていう単純な遺伝の問題で、神的な存在の意思とか召喚獣に選ばれたとかではないんだけど、ロズフィールド家という『有り難いけどどうしてドミナントがこんなに生まれているかはわからない』側からすれば、もしドミナントを大公位にさせなければフェニックスの反感を買うかもという考えが起こっても不思議はない。だって、とりあえず血ぃ濃きゃいいんだろ! で近縁婚しまくる人達だし。もう脳みそカチカチ。 やめられない。


幼少期ジョシュアが兄にぶつけた葛藤は体験版時点ではただ自分に自信がなくて怖いんだなでもクライヴには残酷な言葉だな、と感想を持つけれど、その実、ジョシュアの言葉こそ考えることを放棄してこれらに固執し続けてきたロズフィールド家の愚かな芯を突いた新風の疑問で、それを習わしや伝承で説得する父上やクライヴの方が頭を毒されてる……っていう構図と後になってわかるの、深い。


そう思うとますますあの謁見の間の地下って、ロズフィールド家の闇そのものに見えてきた。
血に拘りまくっているあたりを考えてもロズフィールド家の在り方って凝り固まって腐ってるし、アナベラのような血脈モンスターを生むし、ジョシュアの病弱がその予兆かもしれないよう近く確実にハプスブルク家やメディチ家や、フィクションなら名前を呼んではいけないあの人的な魔法界の○ーント家になっていただろうなって。滅ぼされずともロズフィールド家のロザリア公国の終わりは避けられなかったことは想像に難くない。
不死鳥教団なんて暗部がある時点で洗脳教育だいすきドス黒いお家なのはお察しですね。

でも逆に完全に葬り去らずにちゃんとひっそり祀っているのだからあの地下空間はロズフィールドの良心とも言えるかもしれない。

天井の穴を見るに深さはせいぜい一階分。
作中の遺跡のような深さはない。


とにもかくにもきっとあのままロザリア公国で生きてたら、この石像の仲間入りしてたのはジョシュアでなく父上とクライヴかもですよ~~!というふわふわ結論が今回のふにゃふにゃ話の果てですが、ゲーム初見時の『うお誰! ドミナント! 絶対歴代大公だ! おじいちゃんどれだ!』を思い出して書くのは新鮮でした。いつか件のおじいちゃんが見たいね。





でもこのおようふくちょうかっこういいからうるせぇフェニックスの大公もきるんだよでいいとおもいます。着てくれジョシュア。



おわり

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