無題
一人で歩む道をなんと言おう
靴底は冷え切って
街灯がポツリポツリとしかない道を選ぶ
草はしずかにそよいで
ひとの鼓膜をさわさわと震わせる
青い顔をした月が青い顔をしたひとに言う
「犀のツノのように歩めよ 犀のツノのように……」
暗く沈んだ山がのっぺりとして
怪物が眠っているように見える
暗く冷え切った道はしんとして
たった一人しか歩かせない
冷たい風が冷え切った遺伝子に語りかける
「犀のツノのように歩めよ 犀のツノのように……」
靴底から暗い地面に吸い込まれる幻想を見る
月が目を細くしてひとを睨んでいる
山の寝息がひとを恐れさせる
一人で歩む道をなんと言おう
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?