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濱田 健吾/アクポニ

法人名/農園名:株式会社アクポニ
農園所在地:神奈川県横浜市
就農年数:8年
生産品目:水耕栽培と魚の養殖を組み合わせたアクアポニックス農場の設置・管理、資材の開発、普及活動など。
HP:https://aquaponics.co.jp/

no111

養殖魚の糞で野菜を作る究極の循環型農業アクアポニックス

■プロフィール

 文系大学を卒業後、2002年にオーストラリアに渡って小学校で日本語教師を2年間つとめる。2004年の帰国後は、専門商社に入社して、シンガポールで中古車買取事業や、ロシアで化粧品ブランドの設立など、7年間でさまざまな新規事業を立ち上げる。

 2011年、アマゾンジャパンに転職するが、効率追求が最優先の仕事に疑問を持ち、退職。アグリイノベーション大学校のWebサイトを発見し、農業の勉強を開始。

 趣味の釣りを通じて関心を持ったアクアポニックスをベランダ菜園で試すうちに、ビジネスの可能性を感じる。2014年4月、アクポニの前身「おうち菜園」を創業し、普及活動を本格化。

 2015年には日本初となるアクアポニックスを学べるアカデミーを開講し、企業や農家、個人への導入支援を開始。2017年から約2年間は、アメリカを拠点に、アクアポニックスを導入している農家で研修を受けながら、技術や資材調達について学ぶ。

 帰国後は、取り入れた知見を日本の気候や栽培環境に適応させるための試験用の農場を設立。導入を検討している企業や家庭、大型商業向けにさまざまな水耕栽培装置の開発や導入支援など、幅広いサービスを展開中だ。

■農業を職業にした理由

 農業や畜産業が身近な宮崎県で、魚屋を営む両親のもと、子供の頃から釣りを趣味として育つ。世界最大の淡水魚ピラルクを釣る夢を見てネットサーフィンをしていた時に、ピラルクを養殖しているブラジル在住の鴻池達朗さんを知り、養殖した池の水を畑に撒くと美味しい野菜ができることを教えてもらう。

 その後、魚の糞を肥料にして野菜を育てる「アクアポニックス」を知って興味を持つようになる。商社勤務を経て、アマゾンジャパンを退社後、アクアポニックスを使った養殖と水耕栽培を組み合わせたビジネスを思いたち、アグリイノベーション大学校に入学して有機農業を学ぶ。

 その知識をベランダ菜園で試すうち、まずは当時、誰も知らなかったアクアポニックスを広めようと、ブログを立ち上げて、海外の情報を翻訳して情報発信するうちに、興味を持った人から問い合わせを受けるようになった。そこで、2014年、「おうち菜園」を設立したが、当時は家庭用の小さな栽培キット販売や、講座の開催などが中心だったという。

 次第に企業からも相談が増えるようになったことから、食料生産を目的とした大規模農場の必要性を感じて、アクアポニックスが発祥した米国に渡り、2年近く研修を受ける。

 2019年の帰国以降、まずは日本の気候に合わせたアクアポニックスのノウハウを研究するため試験農場(湘南アクポニ農場)を設立。用途別の栽培設備の展示を行うとともに、導入を検討している企業向けに、計画作りから農場の設計施工、運営サポートのほか、独自開発した生産管理システム(アプリ、IoTセンサー)を使った営農支援にも力を入れている。

■農業の魅力とは

 アクアポニックスは、水耕栽培と養殖を同時に行える究極の循環型農業だと考えています。この先、農業人口が飛躍的に増加することは難しいと思いますが、アクアポニックスであれば、栽培だけでなく、さまざまな知識や技術を持つ人が集まってくる可能性があります。

 アクアポニックスについて教えてくれた研究者や生産者をはじめ、興味を持ってくれたお客さんも全員ポジティブな人ばかりです。 一方で、国や行政側の理解や対応は遅れていると思います。

 国が掲げる「みどりの食料システム戦略」では、化学肥料や農薬を減らし、家畜の糞由来の堆肥を使って、環境への負荷を低減する持続可能な農業を目標としながらも、アクアポニックスについては触れられておりません。そもそも現在の法律では、養殖部分が農業の一部として認められていないため、養殖部分については農地の地目変更が必要だったり、農水省の各種補助金の対象にもならないなど、法整備が必要なのです。

 しかし、アクアポニックスをめぐる状況は日々進化しています。技術ひとつ取っても、1年前とは全く異なります。農業と魚の養殖を別々にやっていても、持続可能な資源循環の実現には到底及びませんが、アクアポニックスならば、その2つをつなげた循環があることで、使える資源やエネルギーが飛躍的に増えて、その分、環境負荷も下がります。ひいては、一次産業全体を活性化する大きな可能性があるのです。

■今後の展望

 アクアポニックスの可能性は食料生産だけでなく、農業サービスとしてもさまざまな用途で活用することができます。メーカーやIT企業、観光業や飲食業などさまざまな産業の人たちが、この技術に興味を持ってくださっているので、アクアポニックスが産業として根付くためにも、成功事例のビジネスモデルを作っていかなければならないと考えています。

 とはいえ、すでに人工の光でレタスを育てる植物工場がありますから、アクアポニックス産という付加価値をつけた野菜をブランディングする必要があります。

 私が考えるのは例えば環境負荷が低い循環型の有機農法として、再生エネルギーやスマート農業などのテクノロジー系と組み合わせて「有機野菜を大規模に周年栽培できる農法」として付加価値をつける方法。

 もう1つは、例えばサービス業や複合施設などに隣接する小規模な栽培施設を設けたり、障がい者を雇用したモデルなど、多くの人に栽培のようすを見てもらったり、実際に体験してもらうことで、アクアポニックスをツールとして既存のサービスに新しい価値を付加する方法です。

 アクアポニックスは、工場や下水処理施設などの公共施設でも導入できますし、将来的には宇宙ステーションのような場所でも、循環型農業を実現できる日がきっと来ると思います。

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