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鈴木 広史/Farmer's Yard

法人名/農園名:Farmer's Yard
農園所在地:兵庫県神戸市
就農年数:11年
生産品目:年間365品種の野菜をミニサイズに仕立ててブーケやギフトボックスにアレンジ
HP:https://farmers-yard.jimdofree.com/

no.54

小型野菜に光をあてる!元フローリストが作る野菜のブーケ

■プロフィール

 大学4年間、ホームセンターの園芸植物部門でアルバイトをしたことで、植物の魅力にハマって就職。バイヤーとして仕入れや買付けを担当するなかで農業への関心が高まる。造園業や苗屋を経て、花屋で7年間働いてフローリストの資格を取得した。

 2011年、定年退職した父のサポートを得て姫路市で独立するも、翌年に母のがんが見つかり、看病生活に…。しかし、これをきっかけに農業に関心がなかった妻も手伝ってくれるようになった。

 初年度は露地で高糖度トマトを苗から接木して2,000株に挑戦したが、ゲリラ豪雨で全滅。単一品目栽培のリスクを知って、少量多品目に転換するとともに、有機農園を営む社会福祉法人に入社して、二足の草鞋を履きながら栽培の基本を学ぶ。

 2016年、姫路の若手農家グループ「農家HANDS」の仲間から「ミニ野菜でブーケを作っては?」と提案されたのがきっかけで、「食べられるブーケ」のアレンジが注目されるようになる。

 2021年、農地賃借契約が終了したのを機に神戸に移り住み、新天地で再スタートを切る。

■農業を職業にした理由

 大学時代のアルバイトを通じて植物の面白さを知り、造園や苗屋、花屋などの経験を経て就農への意欲が高まる。

 2011年、元•水田だった農地が借りられたので就農。土壌条件も良くなく、経験が乏しいなか、「普通に就農しても食べていけないのなら、より険しい道を選んだほうが付加価値につながる」と考えて、農薬・化学肥料を使わない有機栽培を選ぶ。

 当初は育てた野菜の葉が茂るばかりで実が大きくならないことに疑問を感じていたが、「大きく育てるのは肥料が必要だし、肥料をやると害虫が増える。だったら小さく育てた方が面白い!」と逆転の発想に切り替えた結果、有機野菜のレストランやカフェ、旅館などからの注文が増えた。

 野菜嫌いだった妻も農作業に参加するようになってから、世界各地の個性的な種を見つけて、独自の栽培技術でミニサイズに仕立てる野菜ソムリエになるなど、夫婦二人三脚で進化中だ。

■農業の魅力とは

 最初の年はゲリラ豪雨で2,000株のトマトが全滅したうえ、母ががんになって、病院と自宅の畑と勤め先の有機農園の3カ所を往復する毎日が続き、しんどかったです。

 農業で食べていけるようになった2016年、農家仲間から、イベントで渡す花束の代わりに「ミニ野菜でブーケを作ったら?」と提案されたことがきっかけで、世界が開けました。

 アレンジやブーケ作りには自信がありましたが、花とは勝手が違うので、最初はワサビ菜を使って萎れさせてしまったり、試行錯誤がありました。でも自分が育てた野菜を使って作品に仕立てられるのは、花屋では体験できなかった楽しさを感じます。

 今は、畑で「どの野菜を組み合わせようか」というところから始められますから、創作意欲が刺激されます。当初は色どり優先で選んでいたので、後からお客さんに「美味しかった」と伝えられて初めて「アレを食べちゃうの?」と気付かされたものです。

 だったら、もっと完熟した実を入れてあげればよかったなあ!とか、お客さんやまわりの人の言葉が新しいアイディアにつながります。商品にならないような小さなニンジンでも、ブーケにすることで光をあててあげる…。そんな、自分にしかできない仕事に喜びを感じています。

■今後の展望

 2021年に姫路から神戸に移ったことで、販路も変わりましたし、新しい出会いもありました。

 以前は温泉旅館やイタリアン、フレンチなどのレストランに野菜を卸していましたが、今は9割以上、野菜ブーケのギフト需要です。

 活動に興味を持ってくれた神戸市のサポートで、大学や高校ともつながりができそうですし、2022年7月にはクラシックコンサートで、ピアノ演奏と一緒に野菜を使ったデコレーションのパフォーマンスに挑戦する予定です。

 博物館で働いていた妻の影響もあり、僕ら夫婦は美術館や博物館が大好きなので、今後はアートとしての野菜の価値を高める取り組みを進めたい。仏ルーブル美術館に僕らが育てた野菜を飾ってもらうのが夢で、そのためにも毎年、岡本太郎現代芸術賞に応募しています。

 生野菜だけでは難しいですが、長期間保存できる麦や綿などドライ素材を増やして、季節や展示期間に応じた作品づくりの構想を練っているのです。

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