空想日記「アニマトロ二クス動物園」

先日オープンした動物園に行ってきました。
「活きているのはスタッフとゲストの皆様のみ!」という思い切った宣伝文句に惹かれて入り込んだ世界はどこもかしこも機械だらけ、動物愛護とかそういうのよりは園長の趣味とのこと。

入ってすぐに目に入ったのは大きなキリン、あいにく目の調子があまりよくなかったので顔の細かい部分はよく見えなかったけれど、遠目に見ると違和感がない。
入口で手に取った小冊子型のパンフレットは一見普通の動物園のようだが、ページをめくると様子がおかしい、一階の次は地下一階の水族館、最後には大きくハテナの描かれた地下二階。
なるほど整備士さえ居ればその種類など関係ないのか、とやけになっとくした。

一階、動物園のメンバーは象にライオン、ゴリラなど検索に出てくるような種類は一通りそろっていてどれも言われなければ少しの間違和感も抱かないほどの精巧な作りで、やけにケージが綺麗なことを除いて園の名に恥じないクオリティであった。
地下一階の水族館はさらに素晴らしく、ガラスと水を挟んでいるせいかよくみても機械とわからないほど。プログラムがよくできていてちょうど見ていて楽しい動きをしてくれるのでずっと見ていられた。地上は少し珍しいものを見られた、くらいだったがこちらは生きている方と同じくらい気に入ってしまった。
パンフレットに一階丸々ハテナを盛り込むようなところなので、外部への宣伝では地下の存在すら内緒にされていた。もしこの園の存在すら行かずに否定していたものに地下一階を見せることができたなら、一部の意見は変わっていたかもしれない。

地下一階に降りる時とは違い、地下二階へは階段ではなくエレベーターのみ移動手段として許されていた。このエレベーターというのが途轍もなく大きく、美術館にある作品用のエレベーターよりも大きいほどで客の数に対してあまりにも広い空間だったがあれもおそらく園長の好みに違いない。

エレベーターを降りると出てきたのは恐竜、一周回ってアニマトロ二クスらしい種類になったと思ったら後ろから顔を出したのは見たこともない生き物たち。ペストマスクのような顔をして左に三本右に一本腕のある猿のような生き物やピエロの化粧をした歯並びの良いマンモス、初めは昔読んだ「アフターマン」の生き物かと思ったが説明用の板には「生息地:海馬」と書かれていたため違うらしい。確かに生物学を少しでも考慮していたら奥で痛がっていた奴の足の裏に目が付いているはずがない。

一番最後の柵の中には人間と書かれた札を下げたおそらく機械がおり、数少ない来園者たちとしきりに話していた。ふざけて昼食のおすすめを聞いたらご丁寧に住所付きでラーメン屋を教えてくれたがその住所は廃墟だった。

アニマトロ二クス動物園、時間と耐用年数に余裕のある方は是非行ってみてほしい。


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