資産運用は非科学に溢れている(1)

 資産運用とは何ぞや?年金とは何ぞや?をゼロベースで考えなおしてほしいです。調べれば調べるほど、現在の資産運用の多くが、非科学的であることに気づくはずです。

 例えば、私の所属しているMarket Hack Salonでは広瀬隆雄さんが「iDECO、積立NISA、全米株式or全世界株式、1本だけを黙々と」と唱え続けています。これは、ごくごく簡単なそろばん勘定で出てくる明確な解です。科学とは言えないほどの簡単レベルです。しかし、我々はこんな事すらやれていません。

 小学校・中学校・高校・大学を出て、いったい我々はどれだけ非科学的世界に生きているのでしょうか?そんな風な気持ちで今までの資産運用の常識を疑っていただきたいです。

 例えば、長期時系列でチャートを見れば「日本株はダメ!」。これは科学的な根拠に基づくものです。それなのに、「俺は日本人だから」「いや日本株も悪くない」と考えるのは、非科学の最たるものです。

 例えば、積立て方式は、収入の一部を資産運用にあてるための唯一の方法ですが、あたかもこれが有利な方法、ローリスクな運用方法であるかのように語られています。しまいには、ドルコスト法なども偉そうに語られています。しかしこれらは全く非科学的です。ドルコスト法というのは、方法論ではありません。そうせざるをえない結果でしかありません。ましてや有利な運用方法でもありません。

 基本的には、もしも収入(フロー)だけではなく、すでにある程度まとまった現金資産(ストック)を持っている場合は、積立やドルコスト法で積立て投資することは無意味です。ローリスクにはなりますが、それ以上に大きくローリターンを招き、資産を棄損させます。

 例えば科学に基づくならば、一日も早く資産運用に資金を投入すべき、というのが大原則です。資産運用で勝ちたいならば、とにかく若いうちに爪に火を点すような努力でより多くの金額を積み立てるべきです。何故なら積立ては原則として不利な方法だからです。資産運用期間を短くすることは不利でしかありません。他人よりも早く資産運用を開始して、その金額を増やして、運用期間をより長くすることが最大のリーリスク化の手段であり、またハイリターン化の手段です。

 しかし、ドルコスト平均法が・・・なんて惑わされていると、この事実にたどり着けません。より大きな金額を、より若い段階で資産運用に回した奴が、人生の価値ポジションにつく権利を得るという事実を遠ざけます。若い時に1mmでも多くの努力をしたやつが、その後、永遠に勝ち続けるというのが、科学的に正しい世界です。

 老後のための資産運用は、決して老後のためだけではありません。適切な資産計画が完成すれば、若いうちから裕福な生活を出来る可能性もあります。したがって正しい資産運用は、即生活を豊かにするものでもあります。

 例えば子供の時からお年玉を資産運用に回して、やがて子供が大人になり家を買うとき、ローンの金額を少しでも少なくすることが出来れば、その後の人生はずっと豊かになります。資産運用に関しては、最初の勝ちがほぼ永遠に続きます。お年玉は通常は使い込むことは無く貯金を励行すると思います。しかしそれは非科学です。若い時から非科学を持ち込み子供の資産運用を邪魔することは最悪の損です。国家はそのことを知っており制度も完備しています。ジュニアNISAという制度があり、小学生でもお年玉で米国株・ETFを購入でき、それらは非課税です。その制度を利用して、子供が大人になった時に裕福に生きていけるように考えるのが、科学に戻づいた子供への愛情です。

年金2000万円問題も、問題提起の役割は果たしましたが、非科学的です。
 例えば「30歳から毎月2万円を積み立てると、65歳の時に1500万円にしかなりません。それだと500万円足りません。」などという考え方は、全く非科学的です。現実には、年金は65歳以降、死ぬまで運用され続けますので、その通過点たる65歳時点の資産総額だけにクローズアップする意味はありません。

 我々がクローズアップすべきなのは、一つには「65歳で引退することが正しいのか?」という事です。何歳まで働かねければならないのか?何歳でFIREなのか?です。人によっては、70歳まで働かなければ老後資金がたまらない人もいれば、40歳で十分な資金が集まる人もいるはずなのです。

 もう一つには、一般にリスクを考えるとき、積立期間に対して極端にクローズアップしすぎているということです。積立期間しか見ていないから安易に65歳という区切りにクローズアップしてしまうわけですが、しかし現実には、我々は積立期間と同じぐらいの長い期間の取り崩し期間を持っています。30歳から積み立てて60歳で引退して90歳で死ぬとすれば、
  積み立て期間30年
  取り崩し期間30年
となります。したがって、我々がリスクリターンを語る場合、取り崩し期間についても十分に考慮する必要があります。仮に65歳の時に1500万円しかなくても、500万円たりないということではありません。90歳で死ぬまで資産運用しているわけですから、それまでに500万円程度の追加リターンを得ることは難しくないというわけです。

高齢になるほどリスクの低い商品を選ぶべきだ、という非科学
 上記の例では、積み立て期間と取り崩し期間の両方を足すと、60年もの超長期で資産運用することになります。よく、50歳ぐらいの高齢になると、債権などの保守的な資産を一定割合持った方が良い、とわれますが、実は全く非科学的です。

 現実には、60歳までは、資産額によっては70歳ぐらいまでは、全額株式の方が優位です。無論これは、もし90歳まで生きるとすれば、です。ただ、資産運用については、早死はリターンであり、長生きはリスクですので、早死にすれば資産運用の面では勝ちです。もしも60歳で突然死ぬと分かっていれば、これほど優位なことはありません。毎日有り金全て使ってよく、貯蓄の必要はないです。

 という訳で、今の日本人の資産運用の考えかたは、間違えだらけの非科学に染まりまってあるのであり、我々は科学に基づいて資産運用知識を大幅にアップデートする必要があります。

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