■連載【大山の宿願】(中) 全力疾走

今年143試合、公式戦全試合に出場した大山は625回打席に入ったが、そのうち104の四死球を除く521打席ヒットになる可能性のある詰まったゴロはもちろん、野手正面のゴロも、内外野への平凡飛球でも1塁に全力で走った。こんな4番打者は皆無だ。

 シーズン中この大山に岡田監督が「お前4番やで。なんでもかんでも1塁に全力はやめとけ。疲れるだけで良い事はない」とたしなめたが大山は聞かなかった。その後も全力疾走は続けた。誤解があるといけないので書くが大山は岡田監督を心酔している。「采配がずばずばと当たるんですよ。積極的にコミュニケーションをとる方ではないのですがたまにもらうアドバイスは適格です。言われた通りしたら結果が良くなる事が多いのです」。

 そんな岡田監督のアドバイスを「毎回全力はやめとけ」に限って聞き入れなかったのは大山の決め事にそれは無かったからだ。「全力疾走は僕の中で決めている事で凡打でも次の塁を狙うのは当たり前の事です。それに試合中の全力疾走はトレーニングの一つだと思っています。練習では中々全力で走れないけど試合中は10割で走れる。ずっと続けていれば1年間戦える体になると思うんです」。

 信念でその大山の理想の4番像は「打線の中心なのでチームから信頼されなければいけません。そのためには日常生活や練習から常に後輩たちから見られている事を意識していました」。

 来季の目標はチームも大山も連覇。毎日が全力疾走になる。

令和5年12月30日

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