軍人が語るウクライナ侵攻

ウクライナ侵攻が開始されてから約3週間後の3月17日、ユーチューブに1本の動画がアップされました。
本書のもとになった「陸・海・空 軍人から見たロシアのウクライナ侵攻」シリーズの第1回です。
投稿者は、憲政史家・倉山満氏が主宰するインターネット番組「チャンネルくらら」。
番組の内容は、防衛問題研究家・桜林美佐氏による司会進行のもと、小川清史元西部方面総監(陸上自衛隊)、伊藤俊幸元呉地方総監(海上自衛隊)、小野田治元航空教育集団司令官(航空自衛隊)という陸・海・空の軍事のプロ中のプロがロシアのウクライナ侵攻を最新情報に基づいて分析・考察するというものです。
この手の専門的(マニアック)な番組は、一般的にあまり再生回数が伸びません。
しかし、同番組に関しては、動画がアップされるや再生数が瞬く間に急上昇し(2022年6月末時点で67万回以上再生)、コメント欄には感謝と賞賛の声があふれていきました。

上記のサイトより

自衛隊の陸海空がそれぞれの観点から語るロシアのウクライナ侵攻。この本は戦況の解説のみならず、それを踏まえて日本の安全保障を考えるという点で得るものが多い。

機動戦と消耗戦

ウクライナ侵攻には機動戦と消耗戦の2つの側面がある。前者はウクライナの国家意志を変える行為であり、北部からのキーウ侵攻に代表される作戦であり、初期には失敗に終わっている。他方、後者は文字通りの戦争であり、戦力を投下し陣地を奪っていく作戦であり、東部戦線では概ね目標を達成している。戦況を見る時、それぞれの戦線の状況と目的を見る必要がある。

戦争の違法性

また、戦争にはいい悪いはないが、違法か合法かというのは明確にある。戦争に入った後は戦闘員と非戦闘員は明確に区分し、後者は攻撃対象としてはならないというのは知っていたが、戦争に入る前も国連の目的に照らして戦争をする条件がないと違法となる。侵攻初期にウクライナのネオナチ勢力がロシア系住民を迫害しているという苦しい建前は戦争に入る前の建て付けが必要なのだというのがわかる。かといって、主権国家に一方的に攻め込むことを正当化することはできないのだが。
思えば2014年のウクライナ侵攻も、2008年のジョージアへの侵攻も上記のルールを意識して、第3国が実力行使ができない程度にルールを破るというのをやっていた。今のロシアは少し異質かもしれない。

日本の役割

日本は装備品をウクライナへ提供しているが、これは戦争当事国にならず、かつ、自衛隊が海外協力できるギリギリのところであるとのこと。ここら辺はやはり元自衛官に話を聞くというのは有用。

まとめ

上記以外にも、それぞれのタイミングでの戦況の解説は陸海空のそれぞれの視点から語られるので、読む価値がある一冊。


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