偉大すぎる前作がチラつく傑作映画 MADMAX:FURIOSA

2015年に公開されたマッドマックス:怒りのデスロード。とある場所までいって帰ってくるだけの映画にも関わらず、興行的にヒットし、さらに熱狂的なファンを多数生んだ映画。この映画の熱狂を生んだ要因の1つは、主人公であるマックスを差し置いて、ボウズ頭に隻腕、強くて美しさをそのまま体現したフュリオサの存在にあった。キャスティングの際にシャーリーズ・セロン当て書きかどうかはわからなかったけど、あまりにどハマりの役で、これ以降、アクションスターとしての新たな道を見つけたのだけど、今回はなんと、フュリオサ役はアニャ・テイラー=ジョイに変更。映画を観る前は少し不安はあったけど、途中から気にならなくなった。

前作とは対照的な映画の作り込み

前作は女性たちを逃すという前半と逆にイモータルを打ちに帰るというシンプルな展開。かつ、登場人物たちもほとんど過去や素性が分からず、誰も自分たちのことを語らないという現在の商業映画としては異常な出来だった。今作は饒舌な人物というのはそれほどいないが、ナレーションや会話で色々な物事を少しだけ説明する話となっている。あと、前作の冒頭に繋がる前日譚とわかっているので、展開は読みやすい。
また、前作ではポロッと一言だけ触れていた場所や人が、今作ではガッチリと見せ場だったりシーンが作られているので、前作の補完的なものにもなっている。
さらに、アクションシーンに出てくる乗り物なんかは進化を果たし、え?過去の時代の方がすごくないかとも思ったりしたけど、そうそう、この世界観においては時代が進むことと人類や技術が進歩するわけではないということをうっかり忘れていた。

この映画のいいところ

乗り物へのこだわりがすごい。異常。アクションが全般的に見やすい。これはカメラの置く位置をはじめ、撮影陣がどう撮影すると観る方が疲れないかを熟知している職人技あたりは褒めても褒めきれない。
あと、当初はこれ大丈夫かと思われたアニャでしたが、ボウズ姿になった時は前作と変わらんとなった。ボウズに黒塗りをすると同じ顔になるのかとも思ったけど、いやそうはならんよね。
キャスティングで言えば、クリス・ヘムズワースも適役。小物で頭が悪いけど土壇場ではなんとかやる役って想像以上に難しいと思うのだけど、ピッタリ収まっている感じ。

観終わった後に感じたこと

全体的には楽しめるのですが、上映時間が3時間弱、15年間の物語を描く必要があるためにあのフュリオサが登場するまで1時間くらいかかっていること、度重なるアクションシーンに疲れてくることあたりから、前作が常にちらついてしまいました。ただ、単体作品としても十分面白いし、これほどの映画が毎年観ることができるかというとそうでもないという意味でも傑作でした。

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