カリフォルニア州司法試験#6_MBEの解き方

MBE (Multistate Bar Examination)は、全米共通の択一試験で、CA Bar Examでは配点の50%を占めます。自分で文章を書く必要がないので、英語ノンネイティブとしてはここで点数を稼ぎたいところです。

CA Bar Examに限らず、択一タイプの試験ってすごく得意な人とそうでない人とで差が出る気がします。私はどちらかというと得意なタイプでした(日本の司法試験でも択一は得意でした)。そして、以前から、択一が不得意な受験生には、「与えられた選択肢から正解を探す」という勉強の仕方をしている人が多いなと思っていました。もちろん消去法でしか正解にたどり着けない問題もありますが、択一試験では「選択肢を読む前に正解が分かっている」状態を目指す必要があります。したがって、受験生の心構えとしては、「ミニ論文試験」だと思って択一の勉強をする方が良いです。実際、問題文の長さに違いがあるだけで、問われている中身は、EssayもMBEもあまり変わらないと思います。

0. MBEのフォーマット

MBEのSample Question(全21問)が、NCBEから公開されています(https://www.ncbex.org/exams/mbe/preparing/)。以下の3つの部分で構成されています。本番のテストは科目ごとには分かれておらず、全7科目がランダムで出てきます。

Fact Pattern (問題の本文)
Call of the Question("?"で終わる一文)
Answer Choices(選択肢、四択)

1. Factが先か、Callが先か?

Barbri推奨の解き方では、常に call of the question を最初に読むように指導されます。callには、何の科目がテストされているのか、何が論点なのかのヒントが書かれていることが多く、問題文の二度読みを避けられる(重要な点に集中してfactを読むことができる)からです。callが、"Who is likely to prevail?" みたいに何のヒントもない時は、その一文上を読むと良い、と指導されます。

これに対し、factを読む前にcallを読んでもいまいち頭に入らず、かえって混乱するので、factを先に読む方が良い、という人も多くいます。

現地の学生でも意見が分かれるようなので、どちらでも、ご自身に合う方を選択するのがいいと思います。ただ、callを先に読む方法は、最初はやりにくいものの、繰り返し練習して慣れてくるとすごく効率がよくなるので、合わないような気がしてもしばらくは試してみてほしいです。上手く表現できないのですが、MBEの問題ってある程度のパターンがあって、似たようはfact patternを捻って使いまわしているような部分があるんです。callも、「よく聞かれる言い回し」みたいのがあるので、問題をこなすにつれて、そのパターンが何となく体にしみ込んできます。そうすると、callを先に読むのも違和感がなくなってきて、スピードも正答率も一気に向上します。

例えば、以下のような fact patternがあるとします。

Aが店Bから花を購入した。Bの店員Cが配達中、運転中のDにはねられて重傷を負い、約束の日時に花が届かなかった。花が届かなかったことで、Aは予定していたパーティーを開催できず、$1,000 の損害を被った。DがCをはねたのは、常用していた頭痛薬の影響で居眠り運転をしていたためだったが、その頭痛薬に眠気の作用があることをDは知らされていなかった。

先に fact を読むと、これは契約法 (Contracts) の問題かもしれないし、不法行為 (Torts) かもしれない、あるいは、刑法 (Criminal Law) としても出題できるかもしれない、と考えます。ABCDの誰が中心人物なのかも問題文からはわかりません。そこで 、次に call を読むと、

If A sues B for $1,000, is A likely to prevail?

とか書いてあって、「そうか、これはAとBに関する問題なのか、多分契約法だな」と思って、もう一度最初から fact を読むわけです。これでも正答できればOKなのですが、本番では、MBE1問あたり2分以下のペースで回答しなければなりません。いちいち二度読みしていたら間に合わないです。

これに対し、先にcallを読んでおくと、「これはAとBに関する問題だな、たぶん私法分野だな」くらいは先に見当が付けられるので、二度読みしなくても回答できるようになります。

2. 問われている科目と論点を特定する。

ここまでで、問題文(fact と call)を読み終えています。解答の第一段階として、科目と論点を特定しましょう。Essay で使う IRAC の "I" すなわち issue に相当します。後から復習できるように、見つけた issue を余白等にメモしておきます。まだ選択肢は見ません。

3. ルールを思い浮かべる。

Issue が特定できたら、対応する論証を思い浮かべます。IRAC の "R" すなわち rule の部分です。rule には複数の element (構成要件)が含まれるので、その中でキーになるもの(解答に影響を与えるもの)をメモしておきます。例えば、契約法の問題で、契約の成否が問題になり、その中でもconsiderationが問題になる場合は、"K formation, con" とかメモしておきます。ここで、rule が思い出せない場合はあとでみっちり復習が必要なので、ruleを思い出せなかったことがわかるように必ず印を付けておきます。まだ選択肢は見ません。

4. 答えを思い浮かべる。

思い出した Rule に、問題文の fact を当てはめて(IRAC の "A" すなわち application)、結論を導きます("C", conclusion)。もし当てはめで迷った構成要件があれば簡単にメモしておくと見直すときに便利です。

5. 選択肢は「必ず」最後に読む。肢を見比べて選ばない。

上記4まで終わったら、初めて選択肢を見ます。MBEは大部分が yes/no で答えられる質問で、"Yes, because..."の選択肢が2個、"No, because..."の選択肢が2個、みたいなパターンが多いです。上記4で導き出した答えが yes なら、まず yes 選択肢だけを見て、because 以下の説明が、自分の当てはめと合致するものを選びます。最後に、ダメ押しの確認で、選ばなかった選択肢をざっと読みます。これでおしまいです。

なぜ答えを導いてから選択肢を見るのか、それは出題者の立場を想像してみるとよく分かります。出題者は、受験生を悩ませるように選択肢を組んでいるのです。最初から選択肢を見て選ぼうとすると不必要に迷って、却って正答から遠のいてしまいます。そもそも、1問あたり2分以下という時間的プレッシャーの下では、選択肢を見てあれこれ悩んでいる暇なんてありません。

また、選択肢のなかに知らない知識が出てくると、パニックになってよくわからない肢を選びがちです(自信がないので、理解できない肢が正しいような気持ちになってしまう)。消去法でそれしか残らない、というような場合を除いて、知らない単語が出てくる選択肢を「それっぽいから」と感覚で選ばないでください。特に本番は思ってもいない選択肢をうっかり選んでしまいがちなので注意です!持てる範囲の知識で、確実に解いていきましょう。

6. 答え合わせは、IRACの各ステップについて行う。

点数アップする勉強のコツとしては、「正答を選んだかどうか」ではなく、「IRACのステップを正しく踏んで正答にたどり着いたか」を答え合わせすることが大切です。正解したかどうかではなく、正しい理由付けで正解したかを復習する、ということです。例えば、Issue(問題提起)やRule(規範)があやふやだった場合、正解していたとしてもただのまぐれです。ノーヒントだとぼんやりとしかRuleを思い出せないけど、選択肢を見たら分かった、というのは、覚えているうちに入りません。次に同じ論点が出てきたら間違う確率の方が高いし、ぼんやりとした知識のままでは簡単な引っ掛け問題にまんまと引っ掛かることになります。Ruleの暗記は全ての基礎、と肝に銘じて復習しましょう。

逆に、Application (当てはめ)やConclusion (結論)の段階でのミスは、問題数をこなして色々な Fact Pattern に触れれば、勘所が分かって自然と正解率が上がってきます。

7. 最後に:時間を計って沢山解きましょう

少し慣れてきてからで構いませんが、できるだけ時間を計って解く練習をしましょう。本番の時間的プレッシャーは相当です。わたしが使っていたBarbriの練習問題では、30分あたり18問という本番よりも厳しい時間設定になっていました(本番では1時間あたり33.3問)。始めのうちは最後までたどり着かないことも多かったですが、繰り返すうちに自分なりに効率良く問題文を読めるようになり、本番でも全部解ききって見直しの時間も確保することができました。

MBEは現地の学生でも最後までたどり着かない人が多いようです。実際、早く終わって席を立つ人はほとんどいませんでしたし、終わりの合図がなる瞬間まで沢山の人が問題冊子にかじりついていました。簡単な問題と難しい問題の比率は前半も後半も変わらないので、最後まで解いた、というだけでも十分にアドバンテージになると思います。



California Bar Exam 受験生を全力で応援しています!