カリフォルニア州司法試験#5_勉強期間と使った教材

1. 受験勉強の期間

もともとTemple Law School Japanに2年ほど通っており、通学中からもぼちぼち勉強はしていましたが、本格的な受験勉強期間は1年弱でした。その間、仕事のペースは以前と全く同じでした。日常生活を送りながらの受験勉強は時間の確保もさることながら、モチベーションの維持がとても難しく、今思い返しても、受験勉強に打ち込む期間は1年が限界だったと思います。Barbriの10ヶ月プラン(後述)を申し込み、基本的にはBarbriカリキュラムに沿って勉強しました。

2. 総勉強時間/1週間あたりの勉強時間

米国のロースクール生は、卒業後、通常、約2カ月間フルタイムで受験勉強し、BarExamに合格します。1日8時間勉強するとして、約2カ月(60日)だと480時間です。ここから、①長期の受験勉強は短期集中よりも多く時間がかかること(人間の記憶は時間が経つと薄れるので)、②ノンネイティブであるハンデ、を考えると、現地学生の2倍は準備が必要かなと思い、受験までに1000時間勉強することを目標にしました。ここから逆算して、1週間あたりの勉強時間は20時間を目安にしました(1年は約52週なので、20時間×52=1040時間)。
もちろん、きっちりこのとおり勉強したわけではありませんが、かける時間のイメージを最初に持っておくことは大切です。社会人受験生だったり、ご家族がいらしたりする場合、週20時間を勉強のためだけに割くのは簡単ではないので、時間確保の方策を立てておいた方が良いと思います。

3. 使用した教材&おすすめの教材など

BarMax 

BarMax (https://testmaxprep.com/bar-exam/courses)は、最初に申し込んだ教材です。比較的最近始まったBar Reviewで、オンラインで全て完結すること、格安であること(当時は日本円で11,800円)、回数制限がなく何度落ちても教材を使い続けられること、から選びましたが、私には合わず、結局ほとんど使わないでBarbriに乗り換えました。授業が棒読みで頭に入らなかった(生徒無しで原稿を読み上げている感じだった)、全体的にシンプルすぎた(JD生ならまだしも、イチから科目を理解するにはアウトラインも授業も情報量が少なすぎた)、問題練習の数が少なかった、解説が??だったりアプリのバグが多かったりした、等々が理由です。1カ月程度やってみて手応えが得られず、これでは続かないな、と早々に見切りをつけました。

ただ、当時はそんな感じで少々残念な教材だったのですが、現状のBarMaxを確認すると、問題演習量も追加されて充実しているようでした。もしかしたら、今は私の時よりもかなり良いコースになっているのかもしれません。値段も$1899.99と上がっていました(まだ安い方ではありますが)。そのうち時間のあるときにログインして、改善点を確認してみたいと思っています。

Barbri

Barbriでは海外在住者向けに、6カ月と10カ月のコースを提供しており(https://barbri-prep.com/extended-bar-course/course-details/)、私は10カ月のコースを使いました。お値段$5,995とお高めですが、フルタイムの学生向けに2ヶ月間のカリキュラムしか提供していないBar Reviewがほとんどの中、社会人受験生としては他に選択肢がなかったので、えいっと購入しました(今は似たようなコースが増えているかもしれませんが、未確認)。アメリカで最も有名なBar Reviewコースで、内容もとても充実しています。カリキュラムの情報量はかなり多く、これを終わらせれば合格できると信じて日々こなしていくという感じでした。最終的にカリキュラム全体の85%〜90%くらいまで終わらせたと思います。全体を通して一番やり込んだのがBarbriの教材だったので、特徴をいくつかコメントしていきますね。

授業はライブ授業の録画です。穴埋め式のノートが事前に提供されており、授業を聞きながらキーワードを埋めていきます。内容は要点が押さえられており、とてもクリアです。また、録画とはいえ、目の前に生徒がいる状況での授業なので、テンポが良く、頭に入ってきやすいと感じました。先生によっては英語の聞き取りが難しい人もいましたが…。授業で使ったノートを再度見返すことはあまりありませんでしたが、しっかり授業を聞いたことで、後々の問題演習の基礎固めができたので良かったと思います。

アウトラインは薄い方1冊だけを参照すれば十分です。Barbriのアウトラインは、詳細版(MultistateとCaliforniaに分かれたページ数の多い方)と簡略版(全て1冊に纏まったページ数の少ない方、Mini Review)に分かれています。合格に必要な主要論点は全てMini Reviewに含まれているので、情報量が多すぎる詳細版は参照不要です。私は、ビデオ講義を聞いた後は、Mini Reviewを教科書兼辞書として使用し、分からないことがある度に参照していました。時には調べたい論点がMini Reviewに載っていないこともありましたが、マイナー論点を必死で調べても費用対効果が低いので、そういう時は論点ごと無視しました(笑)。

問題演習がとても充実しています。MBEは1000問以上、Essayは1科目あたり7〜8問、PTも5問くらいはあったと思います。主要論点が上手に網羅されており、解説もしっかりしていて、これをやり切れば他に手を出す必要は全くないです。むしろ、量が多くてこれだけで手一杯になるはずです。

MBEに関して、Barbriによると、「BarbriのMBE問題は、本番よりも難易度高めに作成されているよ(なので、本番は簡単に感じられて解きやすいよ!)」とのことでしたが、受験してみて、試験本番の方が簡単だとは感じられませんでしたし、本番で時間が余るということもありませんでした。試験本番は緊張しているので実際より難しく感じているかもしれませんが、同じくらいの難易度という印象でした。

EssayやPTの問題演習の、Barbri作成の模範答案はかなーり完璧&長大です。完璧すぎて真似するのが不可能です。模範答案という性質上仕方ないと思いますが、合格ラインを遥かに上回る内容なので、真似しようとせず、参考程度に留めておきましょう(Essay対策についてはまた別途書きます)。

カリキュラム上ではBarbriがタスク毎の所要時間を設定していますが、英語ノンネイティブの日本人なら設定時間の2倍くらいは軽くかかります。例えば、10ヶ月コースでの1週間の勉強時間は10〜15時間に設定されていましたが、20時間やってようやく終わるかどうか…という感じでした。6ヶ月コースだと1週間20-25時間の設定(実際には週40時間以上…。平日フルタイム勤務と変わらない時間数です。)なので、あまり現実的ではないですね。カリキュラム自体はとても良くできていて、難解な論点は繰り返し出てきたり、最初にやった科目を忘れ始めた頃に復習するようになっていたりするので、遅れずについていければ合格に必要な準備がきちんと完了します。

Essay Exam Writing for the California Bar Exam(Essay対策)

現地の受験生も多く利用している有名な本です。Kindle版もあります(https://www.amazon.co.jp/dp/154381350X/ref=cm_sw_r_li_awdo_btf_c_S8CAFbVE5WMSE)。科目毎に、ルール集、過去の出題傾向の分析、過去問の答案例と解説がまとめられています。Essayの練習を始めたくらいの時期に、日本人ノート(後述)のRule Statement(論証)はしっくりこなくて覚えにくい、かと言って自分で作成するのは時間がかかりすぎるし、Barbriの答案例は詳しすぎ&長すぎて使えない…と困っていたところに見つけた本で、本当に助けられました!この本のRule Outlineは主要な論点のRuleがとってもシンプルにまとめられており、かつ平易な英語なので覚えやすく、試験でそのまま書けます。Essayの問題演習と並行しながら、この本のRule Outlineを繰り返し音読して、MBE 科目はそらで言えるまでほぼ一言一句丸暗記、Essay科目もかなりの部分を覚えました。

ちなみに、Amazonのレビューなどを見ると、過去問の答案例&解説もかなり有用みたいです。私は、問題演習はBarbriに集中していたため、そちらは使いませんでした。

new! (BarEssaysを追記しました)

BarEssays.com(Essay対策)

現地や海外の受験生の多くがおすすめするEssay対策です。CA Barは不合格になると採点済みの答案が返却されるのですが、その返却答案をBarEssaysが買い取って公開しています。どんな答案にどんな点数がつくのか、具体的なイメージを掴むことができます。
また、Premium Membershipに申し込むと、BarEssays作成の参考答案が読めるほか、自分の答案をBar Graderの経験者に採点してもらうことができます。Essayに力を入れたい、という方にはおすすめです。

Strategies and Tactics for the MBE(MBE対策)

MBE対策で有名なEmmanuelさんの本です(https://www.amazon.co.jp/dp/1454873124/ref=cm_sw_r_li_awdb_btf_c_ogDAFb21MKJ3W)。全部で600問以上掲載されており、解説も丁寧に書かれています。私は友人に見せてもらっただけで実際に解いてはいませんが、難易度はやや易しめとのこと。フルのBar Reviewコースを購入する前に、導入としてやってみる分には良いかもしれません。

Adaptibar(MBE対策)

実際に出題されたMBE問題で演習ができるオンラインの教材です(https://www.adaptibar.com/)。MBE問題は厳しく情報管理されていて、本物で練習できるのはAdaptibarだけだったと思います。私の受験時は、試験本番が紙媒体だったので、書き込みができないオンラインの問題演習にあまり魅力を感じなかったことと、Barbriの問題を解くので精一杯だったことから使いませんでしたが、使った友人たちからの評判は良かったです。購入する際は、FacebookのCalifornia BarExamコミュニティー等を検索するとディスカウントコードが入手できるのでお得です。

日本人ノート

LLMに通う日本人留学生の間で代々受け継がれてきている日本語の解説ノートです。いくつかバージョンがある?ようで、入手できたのは、各科目の日本語での解説と、試験で書くRule Statementのまとめ(論証集)でした。私の場合、論証集の方は、Essay Exam Writing for …に乗り換えるまでしばらく使ったものの、解説の方は全く使いませんでした。このあたりは好みだと思うのですが、私の場合は、夜間LLM (Temple Law School Japan)で主要科目の授業を受けており、かつBarbriの講義ビデオを見ていたので、英語で理解することにそれほど支障は無く、日本人ノートを参照する必要性はあまり感じませんでした。逆に、「下手に日本語を混ぜると、頭の中で日本語→英語翻訳が必要になりこんがらかってしまう」気がして、最初から英語だけの方が覚える量が少なくて楽だと感じました。

もし、Bar Reviewコースをフルパッケージで購入せずに(講義を受けずに)、テキストだけで勉強する場合、英語のアウトラインを読むだけで各科目を理解するのは厳しいかもしれません。そのような場合は日本人ノートが役に立つと思います。

YouTube

あえてYouTube?と思われそうですが、検索すると解説動画がたくさん出てくるんです。そしてビジュアルと組み合わせて説明してくれるので分かりやすい。しっくりこないルールがあるときや、聞いたことのないケース名が出てきたとき、検索して10分未満の動画を2〜3個見ると、ざっくり理解できてとても便利。テキストで検索してちまちま読むよりもずっと早いですし、おすすめです。

Facebookコミュニティ

FacebookでCalifornia BarExamなどで検索すると、受験生のコミュニティーページが複数ヒットします。日本語のコミュニティもいいですが、英語のコミュニティの方はとても活発です。フォローしても合格に直接役立つということはありませんが、勉強法や問題演習の疑問点が共有されていたり、参考になる失敗談があったり、State Bar of Californiaからのアナウンスメントがいち早く共有されていたりします。日本からの受験生は情報不足になりがちなので、こういったコミュニティで情報を拾っておくと色々と安心かと思います。

勉強仲間

法律に関わる方には理解してもらえると思うのですが、法律を扱うにあたっては、「誰かと議論する」ことは避けて通れません。一人で本を読む勉強と、誰かと議論する勉強とでは、格段に理解度が違います。なので、疑問点を質問しあえるような仲間がいると理想的です。

また、Essayの問題演習は特に、煮詰まって独りよがりになりがちです。自分で書いた答案を自分で採点すると、どうしても足りない部分が出てきてしまいます。自分が「何を書きたかったか」は自分でわかっているので、「書きたいことが伝わるように書けているか」が検証できないからです。そして、英語が第二言語である私たちにとって、これは大問題です。英会話でよくある、「きちんと言ったはずのことが伝わらない」という状況が、そのまま試験の答案上で起これば、わかっているはずの論点でも点数ゼロになってしまいます。これを防ぐため、できるだけ他の人に答案を読んでもらいましょう。友人と答案を交換するか、採点サービスを利用するのが有用です。

4. 教材の選択方法(これから受験勉強を始める方へ)

既にフルのBar Reviewコースを買うことを決めている方は、大手のBar Reviewコースであればどこも大差ないと思います(なんだかんだ昔からあるやつが手堅いです)。受講期間と自分の受験勉強期間、お値段などを考慮して選びましょう。一度買ったら、よほどのことがない限り、他の教材に浮気せずに1点集中しましょう。勉強期間が半分経過したあたりで不安になってきますが、この時期に他の教材を試したりフラッシュカードを買い漁ったりするのは、受験勉強的には最悪です。Bar Reviewコースは全部終わらせることで受験に必要な範囲を網羅するように作られています。複数のコースや教材に中途半端に手をつけると、どこまで終わったのかもどこに穴があるのかも分からなくなってしまい、時間だけが足りなくなっていく…ということになりかねません。教材を新しく買うくらいなら、今持っている教材を二度解く方がよほど合格に近づきます。

まだフルのBar Reviewコースを買うのはちょっと…という方は、アウトライン(BarBriだとMini Review)、または日本人ノートを読んで、Strategies and Tactics for the MBEあたりをかじってみると良いかと思います。本格的な受験勉強の前の助走的な感じです。

フルのBar Reviewコースを買うつもりはない、という人は、本だけ購入して(Amazonとかで中古も売っています)自力で勉強することも可能です。Barbriの本を購入する場合は、Mini Review + MBE Questions + Essay Questions + PT Questionsを入手し、必要に応じて日本人ノートを参照しながら勉強する感じになるのかな、と思います。MBE Questionsの本は買わずに、MBEの演習はAdaptibarを使うのも良さそうです。アウトラインを自分で読み込んで勉強する根気のある方向けです(私は無理だったので、講義ビデオのあるフルのBar Reviewコースにしました…) 。この方法ならかなり安く済むと思います。


California Bar Exam 受験生を全力で応援しています!