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「梨泰院クラス」

 「愛の不時着」の次はやはり「梨泰院クラス」でしょう、という韓流ドラマ師匠たちのアドバイスを受け、ついに観終わりました。韓流ドラマ師匠たちの上には、さらにゴッド師匠たちがおり、次はどんな韓流ドラマを観たらいいかと尋ねたら、その時の精神状態にぴったりの作品を紹介してくれるそうです。それはまるで、カウンセリングのよう。確かにそこらの中途半端な心療内科にかかるより、韓流ドラマを観る方が元気になれます。おそるべし、韓流ドラマ。

 さて、「梨泰院クラス」。観始めて2話くらいで、ちょっとダルいな、と思ったのですが、ゴッド師匠たちによれば、「韓流は3話から転ぶ」そう。名言です。確かに3話からおもしろい展開になりました。何事も持つべきものは先達です。登場人物の人となりや、これまでの経緯をしっかり伝えるためにも、ちょっとダルめの1、2話も止むを得ない、ということですね。律儀な作り方だと思います。

 ご存知かとは思いますが、さらっとあらすじを紹介しておくと、韓国最大の外食企業・長家に勤める父親の転勤に伴って転校した高校3年生の主人公は、長家の御曹司がいじめを行う現場に遭遇し、正義感の強さから殴って退学処分となり、父親も20年間勤めて長家を辞める羽目に。その後この御曹司が起こした交通事故で父を亡くし、 再び御曹司を殴って刑務所へ。中卒の前科者となった主人公は、事件をもみ消した長家のドンの打倒を心に決め、梨泰院で小さな居酒屋を開き、人を大切にする彼を慕って集まってきた、はみ出し者ばかりの仲間たちと共に再起を目指す、というものです。

 不当なことには決して屈しない主人公は、「土下座のできない男」。おっ、これは韓国版「半沢直樹」か?と思いながら観始めましたが、出向させられたとはいえ、慶應大卒で大手都市銀行に勤めるエリートの半沢とは、立場がかなり違います。中卒の前科者です。その彼が強い信念を持ってライバルの長家と闘い、小さな店から外食業界を上り詰めていく話には、けた外れの勢いと夢がありました。

 誰だって失敗する。そんなの当たり前のこと。若い世代の失敗であれば、なおさらのこと。でも一度の失敗で再起の道が完全に閉ざされてしまうようでは、誰も挑戦しようとしなくなる。失敗しても再挑戦が許される社会こそ、健全な社会のはず。いまの日本を見渡してみると、失敗することに常に怯え、叩かれるよりも前に叩こうとする人のなんと多いことか。韓国の現状がどうなのかはよく分かりませんが、こういうドラマを作ろうとしていること自体、失敗を許容する寛容さを持ち合わせているのではないか、という気がしました。

 また、主人公を巡る二人の女性の描き方にも、共感するものがありました。敵対する長家の援助で大学に進学し、そのまま就職した初恋の女性を、長家から解放することが自分の使命だと思っていた主人公は、結局、自分の才能や性質にほれ込み、自分を守り成功させてあげると言い続ける別の女性を選びます。「愛の不時着」でも感じたのですが、強い男性が弱い女性を一方的に守るという描き方ではなく、男性も女性もその場に応じて守れる方が守ればいいし、助け合えばいいんじゃないの?というフラットな目線で描かれており、心地よく思えました。

 「愛の不時着」とは全く異なるドラマですが、「梨泰院クラス」もかなり心に効きました。男も女も、日々闘って、助け合って生きていく、という芯の部分は共通していると思います。的確なカウンセリング受けた後のような、前向きな気持ちになれました。

 最終話を観終えてテレビに切り替えたとき、男性に対してあざとい態度を取る女性を扱った、バラエティ番組を放送していたのですが、うわっ、まだこんなことやってるの?と気持ち悪くなり、すぐに消してしまったのでした。・・・もうすこし前に、進もうよ。

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