[研究室ゼミ] 卒論・修論の学生さんによる査読
卒論・修論の締め切りが近づくと多くの研究室では悲壮感漂ってると思います。中村研は研究室内締切がクリスマスのちょっと前あたりに設定されており、そこまでみんな頑張って原稿を書き続け、締切間際に提出してくることになります(で、そのまま忘年会に突入するため忘年会はぼろぼろになりがちです)。
私は、学会などに投稿する原稿は細かく赤入れをしつつ丁寧にチェックして、修正してもらって、赤入れして、修正してもらってというやり取りを何度も繰り返しますが、卒論や修論は単著ですし、その文章も審査対象と考えているため、文章を詳細にチェックするのではなく、査読的な大まかな指示を出すに留めるよう心がけています。
そんなこともあって、卒論・修論についてはチェックシートなどを用意して、学生さん同士でチェックするというのを徹底していますが、やはり文章をなおすというのは簡単じゃありませんし、ついつい細かいところが気になるあまり、重箱の隅をつつくようなチェックになってしまって、全体的なチェックができていなかったりします。
そんなこんなで生まれたのが、学生同士の査読です。
目的
他人の原稿に対して(先輩の原稿に対しても)何が問題なのかを客観的に判断して、問題を指摘できるようになること。論理の飛躍が無いかをチェックできるようになり、自分の原稿でもそういう問題がないかを知る切っ掛けとなること。特に、細かい部分のチェックではなく、俯瞰してチェックできるようになることを目指すこと。他人はこんな感じで原稿をチェックされるんだよということを知ってもらうこと。
実施方法
中村研ではクリスマスのちょっと前に卒論・修論がすべて出揃うので、その論文について2~3人ずつ研究室の学生さんから査読割当を行い(担当するのは1人1~2本程度で、共著関係にない人が割り当てられる)、情報処理学会の論文誌の査読フォームを渡して、査読をしてもらいます。査読者名はオープンにならないので、遠慮せず査読してね!と伝えます。
査読のやり方は普通あまりわからないので、これまでの査読結果をGoogle Driveに共有しておき、参考にできるようにしています。
査読結果が出揃うと、私が学生さんたちのレビューをまとめてメタレビューをつけて、卒論・修論の採録条件として指定し、著者に渡します。これが中村研の年末年始の恒例行事となっています。学生さんがなかなか査読をしてくれないと、私の年始の時間がどんどん削られていきます。
効果
学生さんは誰も査読なんてやったことがありませんので、どうやって他人の原稿を客観的に評価したらいいんだろうということを少しずつ学んでいけます。中村研では、学生同士の原稿相互チェックを普段から行うようにしていますが、どうしても文章単位での細かいチェックになりがちで、段落や章、全体を通しての俯瞰したチェックや本質的なチェックがなかなかできていません。そんなチェックを学ぶきっかけにもなっていると思います。
また、先輩の原稿であっても真剣に読んで、遠慮せず指摘することの重要性を学んでいけます。ちなみに、学生さんたち(B3~M2)は結構ちゃんと頑張って査読してくれるので、毎年想定しているよりかなりよい査読結果がかえってきて、私も気づいていなかった点を色々指摘してくれていて驚きます。査読なので、直接原稿に赤入れをできないからこそだと思いますが、すごいなと思います。
あと、査読してもらった側も、多少厳しいコメントが付いていたとしても、「誰か知らないけど、査読してくれてありがとう! ありがたい! 」と思っているようです。また、私だけではなく、色々な学生さんたちの査読結果をもとに卒論・修論を修正していくので、論文がよりよくなります。
ちなみに、卒論と修論の件数が多い年は私が死にます。2018年度は修論11件、卒論3件、2019年度は、修論6件、卒論9件あったので見事死にかけました。まぁこれについては楽ではないですが、面白いですし、色々な査読コメントが集まりますし、学生さんたちの成長にはつながってよいなと思います。
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