アイソレーション【400字小説】
サチはサークル仲間とカラオケに行っていた。歌える曲は数少ないんだけど、ヨウも行くって言うからついてきた。サチはお酒をあまり飲めないので、カシスオレンジを一軒目同様ちびちびとやっている。ヨウは仲間から「今さら!」と言われながらも『Pretender』を歌う、神的なうまさで。サチは酔った、その歌声に。そして「わたしはヨウくんの運命の人じゃないんだな」と痛感。ヨウの隣にはサークルのアイドル・マイちゃんが笑顔でいて、かわいかった。ヨウはきっとマイちゃんが好き。みんな楽しそうに歌っている。孤独感を覚えてついついカシスオレンジに手が伸びる、伸びる。気がつくとカラオケ屋のフロント前のスペースでソファーに抱きつくようにサチは眠っていた。「大丈夫?」と言ったのはヨウ。ほかには誰もいない。彼女らをふたりっきりにしたのはマイちゃんの策略。ヨウもサチのことを好きなのはお見通しだった。でも、起きたてのサチは状況を飲み込めない。
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