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【400字小説】ここにはいない人

オオサワさんが好きだった新聞記者時代。ボブの髪をオレンジに染めて怒られていたオオサワさん。胸の膨らみも印象的だったよ。自分を持っていたオオサワさん。彼女の校正にも説得力があった。スピッツの音楽の魔法にかかっていたオオサワさん。猫を2匹飼っていたな。誰からも好かれた可憐なオオサワさん。交通事故に散って、それ以来、目を覚まさない。

彼女のこと、よく思い出すんだけど、どうしてるかなって。まだ目を覚ましていないような気がして仕方がない、多分、生きている。死んでいるのと変わらないけど。新聞社を喧嘩して辞めたから誰とも連絡は取れない。そもそも誰の連絡先もわからなくて、相手も忙しいだろうし、わたしのコメンテーターの仕事も多忙で暇はない。

彼女のやさしいところに惹かれたと言ったら、単純だけど、そうとしか言えない。嬉しそうに猫の話をするのが好きだった。もう会うことはないだろう。だからね、会いたいと強く願うんだ。

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