【400字小説】過去から感じる世界線
《今》なんてないんダヨ。
過去と未来しかない。
今を捕まえようとしても、
思考が追い付いていかないじゃん。
あの人と家族のことを思う
過去と未来。
死んだらやっと《今になれる》
のかもしれない、知らんけど。
「過去と未来の間にわたしの宇宙があるの」
「体とか精神じゃなくて?」
「精神なんてないんだよ。脳があるだけ。
ただの物質という体」
「だったら、きみのなかに
宇宙はあるって矛盾じゃない?」
「わかってないなあ、矛盾だけで
成立してるのに、この世界線」
タバコを吸うあの人が嫌いだった、
でも、まだ連絡を取っていることは、
特に妻には内緒で、
別にやましい気持ちはないのだけれど、
まあ、昔の気持ちを忘れられずにいるのは確か。
とか、なんとか。
未来のことを考えたら、
ふたりでこっそり脳内喫茶で会うような
茶番はやめたい。
あの人は死んでしまってもう会えないって、
陳腐な展開。
あの人に支配されてて過去にしかいられない。
未来をください。
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