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【400字小説】左右

横断禁止の四車線の車道を渡ろうとカズマは。
車が来ないから渡ろうとした、その時、
スマートフォンが鳴って確認するとナナからの着信だった。
出るなりナナは「今、大丈夫?」と訊いた。
その直後、中央分離帯の低い段差に
足を引っかけてしまい、見事に転倒。

そこへさっきいなかったはずの
白い軽トラックが向かってくる。
腕に鈍痛が走って、起き上がれない、
轢かれることを覚悟。

軽トラックも危険を察知、
ハンドルを大幅に切って、
歩道側の電柱に激突。
横転する軽トラック。
運転手は大けがに違いないとカズマは確信、
ナナからの電話のことは忘れて、
軽トラックに向かう。

すぐに運転手が上を向いた運転席の窓から
上半身をモグラたたきのそれのように、
ぬっと出して、左右を確かめてから、
軽トラックを脱出した。

カズマはその動きに愛嬌を感じて、笑ってしまう。
「大丈夫ですか」と話しかけたカズマの微笑みを、
運転手はいきなりぶん殴った。
カズマの脳が左右に揺れた。

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