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ただの映画感想『野火』

★★★☆☆
 
息詰まる作品だった。ただ冒頭の軍隊と野戦病院をたらい回しにされるシーンは滑稽でしかなかった。声に出して笑った。ジョークのように人が死んでいき、肉体もろとも吹き飛んだり、脳天を撃ち抜かれたり、笑いしかなかった。が、徐々に追い詰められ、田村一等兵(主人公)が狂っていくと一転、戦争の現実を突き付けられた。今もこの映画のような惨劇が、遠い世界で起こっていることに絶望した。すぐに近くに戦争がある。わたしには何も出来ない。ただただ兵士として戦わざるを得なくなっている人間たちを早く日常に戻してあげたいと祈るしかない。エンドロールから現実に戻った時は、何もない平和なこのわたしが住む世界に違和感を覚えた。それだけ戦争の悲劇さにのめり込んだ。塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也、森優作らの演技が最早演技ではなく限りなくリアリティだった。こんな狂気の作品に携わって、よく気が触れなかったなと尊敬の念すら覚える。

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