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【400字小説】形

見えるようで見えないのが恋心だ。
この話の設定は寂れた町の喫茶店。

「お察しの通り、ボクはシロちゃんのことが好きなんだよ」

「全然察してないよ」

そんな会話が展開される。

「ごめんね、嬉しいけど、今ね、あたし、
大切な人がいるんだよ」

撃沈、少しは脈アリと思ったのか、クロダよ。
ふたりでお茶したいと言ったのはクロダで、
それを断られなかったからって、
そういう意味に取るのは早合点。
シロに落ち度はない。
彼女は正しい。

クロダは恋心がはっきり見えた気がした。
そう、だからって抱き締められるモノでもないんだ。

「Slowdiveってバンドがいいんだよ」と
シロは沈黙を挟んでから話を逸らした。
クロダはそのバンドを知らない。
フラれる前なら帰ってから聴いていただろうが、
今となってはSpotifyで検索する気力さえもない。

奥で店主のおばあちゃんが相撲を見ている。
恋する年ではないから、
ふたりの会話に1gも興味はない。
コーヒーの苦さは覚えているが。

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