【書評】脱炭素経営入門 気候変動時代の競争力

松尾 雄介
2021/11/19
日経BP

 脱炭素第2弾。ビジネスプランのテーマは脱炭素に決定しました。このテーマを選択した理由はいくつかあります。ご存じの方も多いでしょうが、2018年にスウェーデンで当時15歳のグレタ・トゥーンベリさんが、気候変動対策の強化を訴えるためにストライキをしました。15歳ですよ。15歳。俺38歳。2倍以上。まっとうな社会人をやっている方だとは思いますが、大人としてこのテーマを論じられないのは恥ずかしいという想いにかられ、これを機に学ぶことを決めました。彼女の主張はこうです。「気候変動の影響は非常にリスクが大きい。科学の声に耳を傾けろ。目を逸らすな。」「気候変動の影響は表出化に時間がかかり、不可逆的だ。若い世代にツケを残し、甘い汁を吸った大人たちは落とし前をつけろ。」怒りですね。もはや。若いころ大好きだったRage Against the MachineのZack de La Rochaを思い出しました。

 彼女の言動には賛否がありますが、その怒りはごくまっとうだと私自身は感じます。わかりやすい所で言えば、日本の年金制度は人口増を前提とした設計のため破綻しており、私自身が受給できる可能性は限りなく低いと思われます。人口動態と制度設計から、賢い方は早期に予見をされていたはず。にも拘わらず対策を怠り、負担は若い世代に押し付け、老人たちは時間つぶしのために病院に通い、社会保障が足りないとのたまう。これは怠慢だ。そう考えたことが私もあります。しかも金銭的な問題は自分自身で対策を取りようがありますが、気候変動対策は一個人の努力では到底覆すに及びません。

 では危機感が足りず自分事になっていない老人たちに退場いただくのか。私自身が子供たちの未来に、ムーディー○山の如くツケを右から左に受け流すのか。それは非常にかっこ悪いことだと、直観的にわかります。先人に尊敬の念を忘れず、知恵と力をお借りし、受け継いだリソースを活用し、次世代に利益以上の負担を押し付けてはいけない。見えている脅威には対策を取り、来るかもしれない不確実性に備える。自身が出来ることは? ビジネスとITという領域で、脱炭素の実現を推進する、必要性を広める、公益ではなく、事業化してサステナビリティを高める。いずれ営業許可証となるであろう脱炭素経営を顧客に提供し、共に成長の原動力とする。これはかっこいい。

 想いが溢れてしまいました。書評でしたねこれ。著者はバンカーを経てESG投資顧問、財団に移籍して環境提言を続けている方です。タイトル通り、気候変動対策をいかに経営に織り込み、事業化するかの視点を常に忘れずに語ってくれます。グローバルをはじめ、国内主要企業の取り組み事例も掲載。前提条件としての基礎知識も前段で提供してくれており、流れから損必要性や気温上昇1.5℃以内の目標根拠、カーボンバジェットの考え方など丁寧に説明をしてくれて理解が進みます。ビジネスの現場では実感がわかない人、どこか違う世界の物事のように感じる人が大半だと思います。私もそうでした。読む前に漠然とビジネスチャンスがあるのではないかと感じていたものが、読み終えた今では、どのように自社で実装し、サービス化が可能かまで考えが巡っております。

 脱炭素経営を同ビジネス化にするにあたり、大和ハウス工業環境部長の方のコメントがあり、強く同意します。

脱炭素経営のドライバーは何かと問われたら迷わず「危機感の醸成」と「ビジネスへの統合」だと答える。企業には今その巧拙が問われており、気候変動に関する「リスクを嗅ぎ取る力」と「事業機会への貪欲さ」が試されている。

脱炭素経営入門 気候変動時代の競争力(日本経済新聞出版)

 VUCAの時代、リスクを可視化・評価しない経営者は三流です。環境の変化に適合し、弱みを知って脅威に対策する、強みを活かして機会を得るというのは、古くから活用されている定番の経営フレームワークです。今グローバルの特定の層では、気候変動のリスクが声高に叫ばれ、巨大なマネーが流入しています。これは市場が出来上がってきているということであり、特に日本の中小企業の大半はレイトマジョリティ―・ラガードに属することが簡単に想像できます。であればここに事業機会を見出し、日本の中小企業の脱炭素経営を支援し、5年で100億くらい稼ぎてーなーと思った次第です。これはかっこいい。お父さん子供たちに胸張れる。

 ということで、今の会社のリソースと顧客基盤を活かしつつ、理解が乏しく能力の低い連中・組織文化との区分け、社内ルールなど制約からの解放、若くて優秀な社員の動機づけと成長機会の提供等々を狙い、別会社でのGXビジネスを提案することにしました。あと2、3冊読んでビジネスロジックを固めていくとします。

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