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特許法38条の5 特許出願の放棄又は取下げ

 特許法38の5では、特許出願の放棄、又は、取下げに必要な承諾について規定されています。
 一人で特許出願した後、何もしなかった場合には、特許出願の放棄、取下げに他者の承諾は必要ありません。しかし、仮専用実施権者がいる場合、特許出願の放棄、取下げによって将来の実施権者としての地位を失い、甚大な不利益を被る恐れがあります。このため、特許権の放棄と同様に、自由な放棄、取下が制限されています。

特許権の放棄制限は、特許法97条に規定されています。

・特許出願人は、その特許出願について仮通常実施権を有する者がある場合でも、その者の承諾を得ることなく、その特許出願の放棄又は取下げができることとした理由
 平成23年の一部改正前は、仮通常実施権の登録制度を前提として、特許出願の放棄又は取下げには、仮通常実施権者のうち、特許庁が把握可能な登録を備えたものの承諾を必要としていたが、同改正により、仮通常実施権の登録制度が廃止され、仮通常実施権者を特許庁が把握できなくなったこと、また特許出願の放棄又は取下げがなされた場合には、承諾を条件としなくとも、仮通常実施権者にとって実施ができなくなるという不利益が生じることはないためである。
 なお、特許出願人が、仮通常実施権の承諾時に金銭を受け取っていた場合における損害の補償に関しては、特許法の守備範囲ではありません。


(備考1)
 平成27年の一部改正において、特許出願の日の認定に係る規定の新設に伴い、従来の38条の2が、38条の5になっている。

・特許法38条の5

(特許出願の放棄又は取下げ)
第三十八条の五 特許出願人は、その特許出願について仮専用実施権を有する者があるときは、その承諾を得た場合に限り、その特許出願を放棄し、又は取り下げることができる。

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