特許法105条 書類の提出等

 おそらく、論文式試験では出題されない条文です。

・105条1項
 侵害行為、損害額の立証の容易化のための規定であり、原告又は被告の両方ができます。当事者が書類を提出「しない」場合は、裁判所は相手方の主張を真実と認めることができます(民事訴訟法224条)。真実と認めることが「できる」という表現なので、必ず「真実と」認定されるわけではありません
 また、相手方を妨害するために書類を処分した場合等も105条1項の適用があります。具体的には、侵害行為の証拠となる書類や、損害額を算定するために用いる書類が焼却処分された場合、侵害の証拠が見つけにくくなりますし、損害額の算定も難しくなります。この場合には、105条1項の適用がありえます。


・105条2項
 書類不提出の理由を確認するために、裁判所「だけ」が書類を確認する手続き(インカメラ手続)の規定です。


・105条3項
 当事者(文書提示を申立てた者)に対しても書類を開示して意見を求めることができます。この場合、当事者の代理人等にも、書類を開示することができます。

・特許法105条

(書類の提出等)
第百五条 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。
2 裁判所は、前項本文の申立てに係る書類が同項本文の書類に該当するかどうか又は同項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。
3 裁判所は、前項の場合において、第一項本文の申立てに係る書類が同項本文の書類に該当するかどうか又は同項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかについて前項後段の書類を開示してその意見を聴くことが必要であると認めるときは、当事者等(当事者(法人である場合にあつては、その代表者)又は当事者の代理人(訴訟代理人及び補佐人を除く。)、使用人その他の従業者をいう。以下同じ。)、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該書類を開示することができる。
4 裁判所は、第二項の場合において、同項後段の書類を開示して専門的な知見に基づく説明を聴くことが必要であると認めるときは、当事者の同意を得て、民事訴訟法第一編第五章第二節第一款に規定する専門委員に対し、当該書類を開示することができる。
5 前各項の規定は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟における当該侵害行為について立証するため必要な検証の目的の提示について準用する。


・民事訴訟法224条

(当事者が文書提出命令に従わない場合等の効果)
第二百二十四条 当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
2 当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする。
3 前二項に規定する場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。

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