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ある元技能実習生のお話

こんにちは。特定技能人材紹介のNJスタッフです。蔓延防止等重点措置が解除された今回、コロナ禍で迎える3回目のゴールデンウィークを皆さまどのようにお過ごしでしょうか
今日はある一人のネパール人、スレンドラについて書いてみたいと思います 

彼はおよそ10年前、建設分野の技能実習生として初めて日本へやってきました。しばらくの間、建設の現場で頑張って働いていましたが、色々あって職を変え、フォークリフトの免許を取ってリサイクル関連の会社で働き始めました。新しい職場での彼の仕事ぶりは大変な評判で、会社からとても頼りにされていました。しかしビザの問題で帰国せざるを得なくなり、今から1年ほど前、ネパールへ帰っていきました

これはそんな彼が日本に来てすぐの頃のお話です

僕は日本に来たばかりの頃、仕事が休みの日になると当時住んでいたアパートの最寄りの駅に行って「切符を買う人」「自動改札を出て行く人」「改札を入って来る人」たちを何時間も観察して過ごした
何日もの休日をそのようにして過ごした
「大体分かった」と思った
ある日、意を決して切符を買い、ひとりで電車に乗った
2〜3駅過ぎると乗客が一斉に電車から降りた
僕はたったひとり、車両に取り残された
訳がわからない僕はそのまま座っていた
少しすると車掌が来て
終点だから降りるように言った
ホームに出るとすぐ前にドアの開いた電車が停まっていたのでそれに乗った
その電車に乗れば、最初に乗った駅に戻れると思った
最初に乗った駅の名前は分からないけれど、景色は覚えている
僕を乗せた電車は知らない景色をどんどん進んでいく
このままではまずいと思った
数駅行った所で大勢の人が電車を降りた
その駅で僕も降りた
あとで分かったことだが、それは池袋の駅だった
僕は池袋の町を歩き続けた
同じ道をぐるぐるぐるぐる何度回ったか分からない
疲れたけれど、どうやって休憩したら良いか分からない
歩みを止めることができない
お腹が空いた
食べ物のお店はたくさんある
いくつも何度も通り過ぎた
お金は持っているけれど、怖くてお店に入れない
日本語が喋れないので注文することができない

寒い
疲れた
お腹が空いた
僕の胸は心細さと不安でいっぱいだった
時計を見た
5時間歩き続けていた
目から涙があふれ出た



私は夢中で彼の話を聞いていました


親切な人が声を掛けた
つたない日本語で「帰り方が分からない」と話すと、その人は僕を交番に連れて行ってくれた
お巡りさんが一緒に駅に行って、駅員さんにつないでくれた
駅員さんが、僕が乗る電車のドアの前まで連れて行ってくれた
在留カードの住所を見て、降りる駅の名前を教えてくれた
電車が走り出した
たった数駅走っただけで知っている景色が見えてきた
アパートの自分の部屋のドアを開け、玄関に入ってドアを閉めるとようやく息をつくことができた


こんなことがあった彼ですが、その後日本での暮らしが長くなるにつれてどんどん日本のシステムや生活に慣れていき、最後の方には親しくしているネパール人が帰国することになると、自分の車を運転して成田の空港まで送って行くほどになっていました

この記事を書くにあたり、本来ならば仮名でよいところ、どうしても私は彼の実名を書きたくて、本人にお伺いをたてました。スレンドラは快くOKしてくれました。今から半年ほど前になるでしょうか、スレンドラは実習生として来日するより以前から婚約していた恋人と結婚したと言って、結婚式の写真を送ってくれました。彼は今、ネパールの首都カトマンズで新しい家族とともに暮らしています

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