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漫画の話『ぢるぢる旅行記』〜傍観者としての旅人〜

さて、漫画の話をしましょう。保険の話なんてつまんないしね。

今日紹介するのは、ねこぢる(なんてペンネームだ)の旅行体験に基づくルポ漫画、『ぢるぢる旅行記』です!旅行記に限らず、自分の体験を作品にするのはよくあります。ただ、正直言って作者の体験記で読む価値がある作品は少ないです。その点、この作品は素晴らしい。では行ってみましょう!

インド編表紙(Kindle版)

あらすじ

共に漫画家の夫婦、ねこぢると山野一(やまの・はじめ)はインドやネパールをこれといった目的もなく旅する。地元民しか乗らない、指定席が意味をなさない列車。ガンジス川の横で次々と死体を焼いては骨を川に捨てる光景。ガンジャ(大麻のこと)でのトリップ…。さまざまな異文化や人々と出会う。

偽大理石の神像で詐欺られる、
ねこぢる(猫の方)と旦那の山野一(人の方)


さまよう旅人

この漫画、あらすじでも書いたように言ってしまえば「海外で旅行して異文化に触れる」というだけの作品です。しかし、その描写が素晴らしい。異国の文化を情感タップリに描写する?いえいえ、その逆です!この作品では異国の文化や人々に触れながら、全く感情移入をしないのです!

ガンジス川での火葬と散骨

人も文化も、生も死も、あくまで傍観者として見るだけ。そして、その酷薄なまでに乾いた視点だからこその、残酷なまでの観察力が光ります。

あっさりと描かれる子供の死体

もちろん、ねこぢるも人間なので(絵は猫だけど)怒ったり不安になったりする描写もあるのですが、そういった感情すらどこか人ごとのような無責任さで描かれます。

山野の買った安い切符のせいでさまよう2人

ドラマチックな作品を描く才能を持った作家は大勢います。しかし、ここまで冷めた目線で淡々した作品を生み出せる作家は滅多に居ません。しかもそれが面白いとなればもう…非常に貴重な才能と言えるでしょう!

まとめ

異国や異文化は一種の異世界です。旅人はその中に入りこんでも、あくまで部外者です。この作品はそんな異世界を覗き見るという行為自体がある種の狂気である事、その事自体に目を向けさせます。旅行記のはずなのに、何か酔っ払ったような、悪夢のような…そんな不思議な世界を体験したい人にはオススメできます!

どこに帰るのか?物悲しいカット

ちなみに、作者のねこぢるはこの作品を描いた3年後、31歳で首を吊って自殺しました。もちろん理由は推測されているものから、本人にしか分からないものまで様々でしょう。ただ、この作品を読むとそんな最後もなぜか納得できてしまう気がします。それほどにこの作品は、狂気と正気、生と死の境目を曖昧にしてしまう怪作です!

本日の漫画紹介でした!

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