2022/9/13 ゴキブリを助けたら地獄で救われるだろうか

職場で印刷していたらゴキブリを発見。これが自宅なら「親の仇」ばりに攻撃を開始し、物の隙間に隠れようと、追及の手をゆるめることはない。でも、この職場のゴキブリ、動きがとても緩慢なのである。のそのそと歩いていてクワガタムシの全力よりも遅いスピードである。攻撃にうつるか、躊躇する。
 今年の夏、息子と夜の昆虫観察のイベントに参加した。まだ日が落ちきらない明るいうちから昆虫観察ははじまり、カブトムシ、カマキリ、セミの抜け殻などを見つけては、専門知識のある講師が説明をしてくれる。果てはシデムシや腕にとまった蚊まで観察をした。クライマックスは暗くなってからのセミの羽化で、巣穴から出てくる途中の幼虫や、のそのそと歩いているもの、木にとまって「さあこれから羽化しますよ」というものまで、さまざまである。セミの羽化は、体を反ったところから、木につかまり、体を殻から抜き、羽を伸ばしという過程を20分ほどじっくりと観察した。
 帰り道、一本の木を照らして子どもたちが騒いでいる。クワガタかと思ったら、ゴキブリがいたらしい。それもものすごく大きな。その大きさと、蚊まで観察した今までの経験からゴキブリも子どもたちの人気の昆虫の仲間入りをした。
 環境によって、待遇とは変わるものだ。それはきっと人間でも同じだろう。人にもそれぞれ輝ける場所があるはずである。
 職場でゴキブリを見たとき、「ごきぶりがいた!」「どこどこ?」という楽しそうな子どもたちの声が頭にひびいてきた。それが躊躇に結びつき、ゴキブリらしからぬスローな動きから哀愁を感じ、とうとう見逃してしまったのである。次は森のなかで会いましょう。


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