2023/1/16 受験シーズンに考える

藤沢数希『コスパで考える学歴攻略法』(新潮新書)と、齋藤孝・西村則康『なぜ受験勉強は人生に役立つのか』(祥伝社新書)を読んだ。語られる教育内容に関しては共通点が多いように思ったが、得られるものが違った印象がある。

『なぜ受験勉強は人生に役立つのか』は、受験(ここでは中学受験)が人生に役立つことが前提で話が進められ、受験勉強によってさまざまな力が涵養されるという書名そのままの主張であった。書名にある「なぜ」の部分には明確な答えは与えられず、「受験勉強によって鍛えられるから」というどんな素人にも分かりそうな答えをにおわせて終わる。齋藤特有のなんにでも「力」をつける話法がいかんなく発揮され、「共感力」「予測力」「配分力」「質問力」「融通力」と、とにかく数値化できない能力(いわゆる非認知能力)には「力」をつけてまとめようとする。既視感のあるような話が多く、あまり得られるものがなかった。

また受験を経た優秀な中学生がこれだけいるのに、大学までいって今一つパッとしないことに対しては、指摘にとどまり、答えが与えられないままだった。

 『コスパで考える学歴攻略法』は、ところどころ筆者の自慢らしきものが鼻につくが、海外で活躍するというゴール設定が明確で、そこから中学受験、高校受験、大学受験、海外大学を比較し、逆算していく。コスパと銘打つとおり、経済的な負担や、勉強の負担なども具体的に比較しており、その点で得られるものが多かった。勉強の負担に対しては、安易に逃げをすすめるのではなく、社会人になってからも活かせる能力を受験を通して、身につけようという主旨であり、好感がもてた。

 とにかく今の日本では、受験をするにしてもしないにしても、ただのんびりとしていたのでは、生活できないということに変わりはなく、できれば好きなことで自分の能力に見合った仕事につき、イキイキと暮らしてほしいという願いは、教育関係者でなくても、一人の親として当然の気持ちである。

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