2022/9/9 水木しげるの妖怪百鬼夜行展

 今年は水木しげるの生誕100年にあたるそうで、様々なイベントが開催されている。8月中旬、六本木ヒルズに「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展 —お化けたちはこうして生まれた—」を見に行った。
 『妖怪なんでも入門』(小学館)を小学生の頃よく読んでいたので、ずらりと並んだ妖怪画はどれも見覚えのあるものばかりだった。水木が鳥山石燕の『画図百鬼夜行』などを資料として、妖怪を描いていたことは知っていたが、「大かむろ」が狸の化けたもので、「大かむろ」という名前も水木の創作であることなど、はじめて知ることも多かった。江戸時代の絵師たちのオリジナルと自身の創作をうまく折衷させていたのである。
 もともと想像力の賜物である妖怪に対して、できるだけオリジナルを尊重した水木の姿勢は、非常に大事な姿勢であると思う。
 それにしても子どもの頃、どうしてあんなに妖怪に惹かれたのだろう。怖がりで、一人で暗いところに行くのが苦手だった。(その怖がりは息子に受け継がれてしまった。)怖い話や幽霊などは今でも苦手である。自ら怖い思いをするためにホラー映画を見る人の気がしれない。でも、妖怪だけはなんとなく身近にいるような気がしていたし、いて欲しいとも思っていた。
妖怪に出会ったときのために、真言を覚えたり、九字を切る練習をしたり、「勇気のある人間が苦手」(これは幽霊か?)という情報を真に受けて、心を強く持とうと努力したりした。「ぬりかべ」が出たら棒で足元を払うとか、「べとべとさん」がついてきたら「先にどうぞ」と言うとか、それぞれの妖怪の対処も覚えた。
まったく妖怪が現れそうもない東京六本木で、身近に妖怪を感じた子どもの頃に戻る体験は、なかなか不思議なものだった。


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