見出し画像

「新型コロナウイルス禍の公共交通」米Swiftly・Transit共催セミナー 詳報

翻訳・記事執筆:孕石直子
監修: 伊藤昌毅

4月8日、「新型コロナウイルス禍の公共交通」と題し、米Swiftly(交通事業者向けソフトウェア企業)とTransit(乗換案内アプリ)がオンラインセミナーを開催しました。MTA(メリーランド州公共交通局)とVIA(テキサス州サンアントニオ)の2つの事業者のほか、ジャーナリストやコンサルタントなど5名が登壇し事業者の現状や今後の見通しなどについて語りました。本記事では、それぞれの発言を伝えます。

日本でも、2020年4月24日に「くらしの足をなくさない!緊急フォーラム −新型コロナウイルスによる交通崩壊を止めろ!−」(主催:くらしの足をみんなで考える全国フォーラム実行委員会)というオンラインイベントを計画しており、地域交通を支える鉄道、バス、タクシーなどの事業者の生の声を届けようと準備を進めております。アメリカでの事例は日本の公共交通の今後を考える際にも重要なヒントとなると考えています。本記事に興味を持った皆様には、是非日本のイベントにも参加頂けたらと思います。

セミナーは6人の公共交通関係者をパネリストとして迎えるパネルディスカッション形式で、

・パネリストによる自己紹介
・新型コロナウイルス禍の公共交通の状況(Block-Schachterによるプレゼン)
・Q & A

の順に進められました。Q & Aでは視聴者から登録時に提出された質問にパネリストが答えながらその場での質問にも答えました。

冒頭、司会のJenn Golech氏が、新型コロナウイルスで多くの公共交通従事者の命が奪われ、ニューヨークのMTAで41人目の死者が出たことに触れ、黙祷の時間が設けられました。その後視聴者に画面のQ&Aボタンから、どこの地域から参加しているか知らせるよう呼びかけ、セミナーが始まりました。

以下、セミナーの内容を詳細にレポートします。

パネリスト紹介

画像1

Jenn Golech(司会)
Swiftly(交通事業者向けソフトウェア企業)顧客担当。前職はCapital Metro(テキサス州オースティンの路線バス・旅客鉄道・パラトランジット事業社)のバス運行・サービスコーディネーション部長で、危機管理も担当していた。テキサス州オースティンから参加。

Michael Helta
メリーランド州交通部 公共交通局(MDOT Maryland Transit Administration)改革担当責任者。メリーランド州のバス・地下鉄・路面電車・旅客鉄道公共交通を担うMDOT MTAで、技術的な事柄から顧客満足度まで、あらゆる問題に新たな解決策を見つける。

David Zipper
ハーバード・ケネディスクール(ハーバード大学の公共政策大学院)の客員研究員。公共交通と技術の未来、ライドヘイリングやキックボードなどその他のモビリティとの関係、どのように自治体と協力していけるかなどに興味。自治体やスタートアップ企業と共同研究をする他、CitylabやWiredなどのメディアを通し記事も多数執筆。ワシントンD.C.から参加。

Jarrett Walker
Jarrett Walker + Associates代表。自治体や公共交通事業者向けコンサルティング会社。バスネットワークの再構築で25年(社としては9年)の経験がある。オレゴン州から参加。

Steve Young
VIA Metropolitan Transit技術・改革担当副社長。VIA Metropolitan Transitは、テキサス州サンアントニオとその周辺で路線バスと観光トロリーバスを運行。

David Block-Schachter
Transit(乗換案内アプリ)ビジネス担当責任者。前職はマサチューセッツベイ交通局(MBTA: ボストンで鉄道やバスを運行)最高技術責任者。

新型コロナウイルス禍の公共交通の状況 (7:53)

Block-Schachter: 誰がいつ利用しているか、交通事業者がいつ対策をしているか。Transitは交通事業者と協力して事業を行っており、データを収集した。

公共交通の需要 (8:30)

画像2

Block-Schachter: この図はアプリからのデータを正規化して示している。ただしこれは公共交通の需要であり乗降客数とは違うことに注意してもらいたい。[平時の月曜日と比較し最近2週間の月曜日の] 需要は世界中で約75%落ち込んでいる。また、ピークの山が平坦になっているだけでなく、時間帯が早まっている。

公共交通の需要の変化 (9:08)

画像3

Block-Schachter: 地域別需要の変化。シアトルやサンフランシスコは最も早く影響を受け需要が落ち込んでいる。一方例えばフロリダ州タンパは新型コロナウイルス禍の今もニューヨークやトロントと比較すると高水準の需要がある。この理由はタンパでは対策としてソーシャルディスタンシングがあまり進んでいないことと、公共交通以外の交通の選択肢があまりないことが挙げられる。

公共交通事業者による新型コロナウイルスに対する措置 (9:50)

画像4

Block-Schachter: Transitは、90以上の交通事業者において、交通事業者が取っている措置と、それが時間とともにどのように変化したかを追跡するデータベースを実行した。調査した半数近くの事業者が運賃を無償化したことが分かった。また現場の従業員を守るため半数以上の事業者が乗客の乗降口を後部ドアのみに切り替えた。

新型コロナウイルス禍 乗客調査 (10:37)

画像5

Block-Schachter: 最後に、どのような人が今公共交通を利用しているのか。米国だけで12,000件の回答を得た。50%の人が医療従事者や食料品関係、販売に携わる人だった。1つ目のグラフで公共交通の需要のピークの時間帯が早まっていると紹介したが、これらの仕事はいずれも比較的早い時間帯に通勤する職種である。また現在公共交通を利用している人に通勤がどのように変化したか質問したが、3分の1が以前より出勤時間が早まっていると回答した。

公共交通の利用を続けている人の中で35%近くの人が失業したあるいは勤務時間が減少したと回答している。これには現在公共交通を利用していない人の数は含まれない。また、新型コロナウイルスの影響はどの人種や層にも平等に及んでいるわけではないことも分かった。回答を得た60%がヒスパニックあるいはアフリカ系アメリカ人であり、学生を除いた半数以上の人の世帯収入が年間30,000ドル(約320万円)以下であった。このような人たちが今も公共交通の利用を続けている人たちである。これを念頭において、この状況下でどうすれば最もお客様に喜んでいただけるか考えなければいけない。

私たちは皆、新型コロナウイルス禍で市民にどうサービスを提供していくか考えているが、まず現状を理解することが最善の決定を生む。収集したデータは全ての人に公開している

Q & A (13:06)

Golech: セミナー参加登録の際に提出された質問に答えるとともに、この場で寄せられる質問にも答えていきたい。

Q. 運転手や現場スタッフの安全を守るためにはどうすればいいのか。MTA(メリーランド州公共交通局)とVIA(テキサス州サンアントニオ)の例を知りたい。 (14:06)

Helta : スタッフの安全は最重要。MTAが物資面でしていることは、疾病予防管理センター(CDC)の基準に従い個人用保護具の供給。運転手に手袋を配布し、またマスクの調達にも尽力している。入手困難品について、各地の事業者が地元の企業と協力して得ていると聞いている。MTAは地元の縫製工場に洗って再利用できるマスクの生産を依頼した。手指の消毒剤は、テキサス州は蒸留酒製造業が盛んであり、手指消毒剤の生産も始めたため近く入手できると期待している。教育面では、運転手が安心して乗務できるよう乗客の後部ドアからの乗降を徹底し、運転手と乗客の接触を避けるため運賃の回収については優先順位を下げている。また一運行ごとと一日の終わりに車両の除菌を行い、車両頭部の行き先表示器に「必須の乗客のみ」と表示している。市民の意識を高め、自らマスクを着用しソーシャルディスタンシングを行うよう促すことも重要。座席の一部を座れないようにして強制的にソーシャルディスタンシングを行っている事業者もあると聞くが、とてもいいアイディアだと思う。ソーシャルメディアを通してメッセージを発信していくこと、医療従事者にアドバイスを求めること、同業他社と連絡を取り合いどのような措置を行っているか共有することも有効。皆で協力して良い方法を見つけましょう。

Young (17:30): Helta氏の紹介したことの他にVIAでは1車両あたりの乗客数を制限している。そのため待っている客がいるのに停留所を通過することがある理由を車両前面の行先表示器に表示している。また、Helta氏が言及したように乗客が隣り合って座ることのないよう一部の座席に使用不可の掲示を置いている。というのは掲示を置かない状態で実際に客ともめたから。MTAと同様個人保護具の供給も行っている。今週VIAの乗務員で初めて新型コロナウイルス陽性者が出て危機感が一層増した。安全は最重要だが一方で最前線で働く人たちに交通を提供していかなければならない。一定のリスクは存在する。そのリスクをいかに最小限に抑えるか、多くの事業者が事業者間で情報交換を行っている。

Q. 現場のスタッフをどうねぎらうか。この業界では伝統的にドーナツ差し入れのイベントを---テキサス州では朝食のタコスを用意したり---するが、ソーシャルディスタンシングが求められる今そういったことができない。(19:49)

Young: 手紙などで我々が現場スタッフのために何をしているか、どういう対策を講じているか伝える。メールや電話でつながらないスタッフとも綿密にコミュニケーションを取るのが重要。

Helta: MTAの運転手もメールアドレスを持っていない。運転手に十分に情報を伝えられていると安心してもらうことが重要。企業として何をしているか伝える。CEOから、事務方は現場スタッフからの質問や疑問に対してその解決を最優先事項とするよう言い渡されている。また建物に入る前に全員に健康チェックを行っている。

Q. 運転手全員にメッセージを伝えるのにどのようなプラットフォームを使っているか。

Young: Pocket StopのRed Flagというツールを使っている。SMS、音声メッセージ、メールを送れる。運転手に事業社としてのメールアドレスを配布していないが、雇用の際に個人のメールアドレスを聞いている。また、SMSやメールなどスマートフォンでコミュニケーションを取るようにしている。

Q. どのような姿を成功と考えるべきか。これまで通り乗客数を第一目標とすべきか別の成功の姿があるか。(25:23)

Walker: 乗客数が全てではないと分かった。昨日Citylabに寄稿した記事に書いたが、文明の維持を可能にする、それが公共交通が実現していることだ。公共交通が、医療従事者や食料品関係者など、彼らなしには文明が崩壊してしまう人々を支え、文明を成立させている。今後乗客数が徐々に回復していく中で、公共交通事業者の貢献や、その理由について、人々の中の意識を変えるべきだ。

Q. 資金について。議会の救済措置として助成金が出ることが決まったが、これで事業者の財政危機が解決できるか、さらなる支援が必要か。(28:33)

Young: 助成金が出るのは評価したい。助成金なしには運営できない。サンアントニオは他の地域と比べて乗客数が45~50%程度にしか減っていないが、他の多くの事業者と同様に運賃を無償化したため運賃収入がなくなり、またVIAの運営資金の大部分を占めている消費税の収入も財源が枯渇しているため激減する。経済が復活せず休業や閉店が多くなれば乗客数は回復せず公共交通事業者にも大打撃になる。おそらく復活には1~2年以上かかるのではないか。今回の救済措置だけでそのように長期間は支えられない。政府は長期にわたって必須サービスを支えるために何をすべきか考えなければならない。

Zipper (31:17): 現在エッセンシャルワーカーのみが公共交通機関を使うよう言われている。いつかそれが解除されても、しばらく乗客は満員電車やバスを避けるだろう。250億ドルで足りるのかどうかは誰にも分からないが、アメリカより先にこの困難を経験していくだろうアジアやヨーロッパを参考にすることができる。中国では武漢を除く各地が2週間前の3月中旬ごろに感染のピークから脱した。その時朝の自動車の通行は平時の96%まで復活したが、公共交通の乗客数は50%強にとどまった。北京などは50%を下回った。それを見ると乗客数はすぐには復活しないと私も思う。乗客数が復活する要因は複数あるが、交通手段によっても異なると思う。通勤電車が特に乗客数が復活しにくいと予想する。通勤客は電車の代わりに車で通勤をすることもできるし、テレワークを行うことも出来る。

Q. 交通手段の変化について。公共交通の利用者が減っている一方でオンデマンドサービスの需要が増えた。(34:20)

Helta: 現在のMTAの路線バス利用者は、他の地域と比較すれば多い方だがそれでも平時の60~65%に減少している。利用者の減少に対して減便という措置が考えられるが新型コロナウイルス禍の現在、混雑は避けたい。現状、路線の減少や減便は困難。Walker氏がサービス提供範囲について言及したが、乗車率が低くてもそこに住んでいる人がいるかぎり通勤の需要に応えなければならない。そこでMTAでは地域の医師や医療従事者に聞き取り調査を行い、複数の病院に対して希望の乗降場所と病院との間を走らせるシャトルバスサービスを提供し、余っている車両をエッセンシャルワーカーの通勤や必要物資の輸送に再活用している。

Young (36:50): VIAでもオンデマンド交通(Paratransit)を行っているが、路線バスよりも乗車率が高い。他にもいくつかのプログラムを実施しているが、1つはサンアントニオ・フードバンクと連携した家庭への食品配達。フードバンクは現在かつてないほど需要が多く、この危機的状況下に、失業者や食に困っている家庭への配達にVIAの車両を振り替えて地域のモビリティを担うことは重要な役割だと認識している。昨日も約200の家庭に配達を行った。2つ目はVIAの車両で人々をスーパーマーケットに商品の引き取りに連れて行っている。3つ目に明日からサンアントニオ市住宅局と連携して、市内の小中高生のためにVIAのバンを移動Wi-Fiホットスポットに活用する。現在学生は自宅学習をしているが、特に市中心部の多くの家庭ではインターネットを導入していない。そこで学生が学習を継続できるように市営住宅などに移動Wi-Fiホットスポットを持っていく。我々は地域の一員なのだという意識を持ち、創造的に、関係機関や人々と協力して地域が今一番必要としていることを提供していく。

Walker (39:00): ここで重要なのは、どのサービスを削減するかということ。公共交通事業者は事業の優先順位を、素早く付けなければならない。やり方は3つある。1つ目は営業時間の削減。終了時間を早める、あるいは開始時間を遅らせることで営業時間を削減できるが、これはサービスが必要な人を見捨てることになる。2つ目は減便。しかしこれはYoung氏が言及したように混雑を増大させるだけでなく、移動時間も増大させる。Block-Schachter氏が紹介したデータで人々は以前よりも早く出勤しているとあったが、それはおそらく交通機関の減便によって通勤時間が長くなっているためでもある。今回多くの公共交通事業者がすぐに土日の運行ダイヤに切り替えたが、土日の運行ダイヤはこのような事態を想定して作られたものではない。ここでサンフランシスコではどうしているかというと、営業時間も本数も維持する代わりに停留所を1つおきに減らして乗客の徒歩時間を増やしている。もちろんサンフランシスコのように徒歩に適した街ばかりではないかもしれない。私が言いたいのは、交通事業者はゴールを明確にし、何を削減するか様々なやり方を考えるべきだということだ。

Zipper (40:27): 他にもいい例があるので紹介したい。マイアミの公共交通事業者は夜間のバスの運行を停止し運転手をより需要のある昼間の運行に振り返ると発表した。彼らはUberおよびLyftと連携し午前0時から5時までの間に移動が必要な人に対して40~45ドルまで負担するそうだ。今、公共交通事業者は想像力を持ってキックボード事業者でもライドヘイリング事業者でも話を聞き必要なサービスを行うべきだ。

Q. 連邦公共交通局(FTA)や疾病予防管理センター(CDC)は公共交通サービスを維持する方法についてより具体的な勧告を出してくると思うか?(42:44)

Zipper: 先のことは誰にも分からないが…今公共交通事業者は日々危機管理を行っていてうまくいくことも想定外の結果になることもある。オハイオ州シンシナティでは、最初は運賃を無償化したがすぐに運賃の回収を再開した。無償化後、オハイオ州の他の市に比べて乗車率が上がり、人々が必要のない移動をしていると気が付いたからだ。運賃の回収を再開する決定に対しては大きな反対運動も起きた。FTAが一つの解を示すよりもTransit CenterやNACTOのように各地の公共交通事業者や市がどのような措置を行っているのかリストを作ればよいと思う。そうすれば他の事業者や市の創造的なやり方を参考にできる。私も創造的な措置を見つけたらツイッターで共有するようにしている。今の段階で全ての事業者が一様にこれをやるべきだ、と示すのは時期尚早だと思う。

Walker (44:54): アウトリーチについて簡単に述べたい。ツイッターは一方向の発信には便利だが、我々は何か簡単な双方向のコミュニケーションを確立すべきと思う。我々のような人も事業者も正式な調査結果を示すだけでなく、人々に「こういう問題があるが、それに対しAをすべきかBをすべきか…」というように多肢選択式の質問を発せられればと思う。

Q. 各地に公共交通支援団体があるが、今、彼らはどのように公共交通事業者を支援できるか。(45:55)

Helta: 彼らにしてほしい重要なことは2つある。1つは公共交通事業者は市民に対して状況を知らせているが、それを手伝ってほしい。例えばサービスの削減や変更について知らせたり、ソーシャルディスタンシングや感染防止のために自分でできることについて教育・推進したり。もう1つは、マスクや手袋など必要なものの入手を手伝ってほしい。交通事業者は一日一日サービスを提供し職員の安全を守るので精一杯。市民から情報があればそれを事業者に伝えて欲しい。

Young (48:11): 公共交通を削減すべきとか、まだ運行しているといった記事をよく見るが、公共交通はウイルスを広めているのではなく、第一線で働いている人々、病院で働いている人々や食料品関係の人々など、彼らがいなくてはウイルスに対抗することはできない人々のサポートを通して疫病に対する解決策を広めているというメッセージを広めて欲しい。

Q. 各自最後に言っておきたい事を。(49:12)

Walker (49:42): 2ヶ月前の世界はもう戻ってこない。新型コロナウイルス感染終息後にある世界は別世界だ。そしてその世界というのは、今下した決断で作られる。長期的に考える余裕がなく急いで下した決断も含めて。コロナ危機以前のメディアの公共交通についての伝え方は不公平で、批判的で、人々を混乱させるものだった。しかし今私たちはこの危機の中で、それを変える機会にある。昨年、マイアミのメディアがマイアミ・デイド郡公共交通を、空っぽのバスを走らせていると非難した記事を見た。公共交通事業者は乗車率を評価基準としている限り勝つことはできない。コロナ危機の中で我々は英雄的な仕事をしていると思うが、その仕事をどう評価するかが課題。公共交通が通常の状態に---おそらく前とは全く異なる市場に---戻った時に、人々はなぜ公共交通というものが存在するのか、なぜそれを支えなくてはいけないのか、以前よりも正しく理解しているだろう。

Helta (51:15): 事業者全体でイノベーションを起こすことができるようにすること。従業員一人一人にアイデアを出してもらい、行動に移し、そのアイデアが日の目を見るようにすること。運転手や技術者、経理担当者など、普段声を上げないような人たちにも意見を聞くようにすること。自宅勤務をする中で自分が会社の役に立っていないと感じている従業員もいるかもしれないが、皆役に立ちたいと思っている。アイデアを持っている。だから、今抱える様々な問題について、自分の事業社の全ての人に関わってもらい、解決策を探してみて欲しい。社内で解決策が見つからない場合は業界の関係者、事業社の入っている保健福祉機関、市の部局などがどうしているか、参考にできる部分があるか見て欲しい。そして遠慮せずに他の公共交通事業者に質問して欲しい。今は皆で助け合う時なのだから。公共交通はこれまでもずっと存在してきたし、これからも存在していく。そのために日々お互いに助け合っていく。

Young (53:24): 公共交通業界が今こそ活躍すべき時だ。我々が現在やっていることは非常に重要なことだ。今日はそのことをもっと伝える努力をしなくてはならない、それが日々現場で働く人々を支えることになる、という意見が多くあった。最も危険な仕事に携わっているのはこのオンラインセミナーに参加しているような我々ではない。現場で頑張っているたくさんの人々が地域にしていることを見て、私たちはこの仕事に誇りを持てている。彼らをサポートし、公共交通機関と地域社会が前に進めるようサポートしていきたいと思う。

Zipper (54: 05): セミナーの最初は、今は公共交通機関にとって非常に困難な時で、しばらく乗車率は回復しないだろう、これは存続の危機であるという共通した意見があった。しかし全体を見ればポジティブな変化もある。公共交通は決して孤独ではなく、地域の中で運行している。現在、人々が地域の中をどう移動するか、インフラや道路空間をどう全く新しい方法で配分するか---歩道を広くできないか、自動車進入禁止の道路を増やせないかなど---様々な疑問が提起されている。これらの決定は公共交通の乗客数に長期的に大きな影響を与えることになる。同時に自転車使用率の上昇にも影響するだろう。実際多くの自転車店や企業が売り上げが上昇していると言っており、シカゴなどシェアサイクルの使用率が上がっている市もある。こうした変化は、公共交通関係者が都市のモビリティ・エコシステムにもっと広く関わっていく、そしてきっと長い間私たちの間で当たり前になってきたバスの乗車や電車の乗車を不利にしている前提条件のいくつかを再考させる機会となると思う。

Block-Schachter (55:53): [訳注: Block-Schachter氏は途中で電話が入りセミナーのほとんどの間席を外していた模様] 長期的な話を。私がよく考えていることの一つは、パブリック・コミュニケーションの面で世界がどのようになるかということ。今回分かったことは、毎日変化する状況の中で、運転手だけでなく、顧客とも継続的にコミュニケーションが取れるようにしなくてはならないということ。また、公衆衛生への懸念はこれから長期間新型コロナウイルスと闘うにあたって人々の最大の関心事になると思う。もし私がまだ公共交通事業者にいたら、乗客が情報に基づいた選択ができるように、混雑状況が分かるようにする投資を考えていると思う。そうすればバスが今どこにいるか分かり、外で不安な思いをして待つ必要がない。それから、運賃のやり取りについて。現在接触を避けるという意味で非接触型あるいはスマートフォンでの運賃回収を2~3カ月くらいの短期間に素早くできるようにしなければならない。

画像6



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?