にわ冬莉

カクヨムで色々やってます。 https://kakuyomu.jp/users/niw…

にわ冬莉

カクヨムで色々やってます。 https://kakuyomu.jp/users/niwa-touri よろしくお願いいたします。(。•ㅅ•。)♡

マガジン

最近の記事

螺旋の覇者

 リンゴーン リンゴーン  鐘の音が聞こえる。  俺は今、銀座のど真ん中に立っている。  日曜の歩行者天国とあって、行き交う人々の数は多く、賑わっている。そんな中、鐘の音が聞こえたのだ。  違和感。  腕時計に目を遣る。やはり、時計の針はてっぺんに位置していない。  近くの店に目を遣る。そこに設置されている壁掛け時計もまた、てっぺんに位置してはいない。それどころか…、 「なんで?」  俺の時計は十一時二十五分なのに対して、店の時計は十時五十分。取り出した携帯の時計は…

    • 女神様の言う通り!?~死に戻りエージェントは世界平和のために殺し屋を落とす~

      「そんな話ってあるっ?」  蘭は目の前にいるわかりやすい恰好をしている女神っぽいなにかに向かって啖呵を切る。 「私、今死んだわよねぇ? あの殺人鬼の仕掛けた罠に嵌って、死んだわよねぇ? 悔しいけど仕方ないわ。私の負けだもの。で、心穏やかに天に召されるんだと思ったら、急に呼び止められた挙句、死に戻れって?」 「ええ、まぁ」  女神っぽいなにかはにっこりと笑って首を傾げる。 「んでもって、若かりし頃の蓮見五郎に会って、落とせ……ですって?」 「ええ、まぁ」  同じポーズを崩さず

      • 【短歌20首】ゾウリムシになりたいうた

        出会いこそ 最悪だった 二人でも 共に歩んだ ゾウリムシなの 見たことの ない景色たち 広がって あなたと二人 ゾウリムシなの 傍にいて 温もりだけを 噛み締める 可愛さ増した ゾウリムシなの 肌と肌 合わせ存在 確かめる 幸せ思う ゾウリムシなの キラキラの 二人の時間 永遠に 続けと願う ゾウリムシなの 穏やかに 四季の変わりを 見送った 明日は晴れる ゾウリムシなの ふざけ合い 笑い合った日 薄らいで いつしか曇る ゾウリムシなの 行き場ない 私に言った 

        • リベンジ面接

          「きゃははは」  喫茶店に、友人の声が響き渡る。 「ちょっと、声が大きいって!」 「ごめん! だって、片眉で面接ってアンタ!」  先日、私はバイトの面接に行ったのだ。しかし、家を出る直前にかかってきた営業電話のせいで時間がギリギリになってしまい、慌てて家を出たら眉毛を片方しか描いていなかった、というトンでもない失態をおかしていた。 「で? 受かった? 落ちた?」 「勿論落ちた。面接官、始終変な顔して私を見てたもん」  面接落ちたのは絶対あの営業電話のせい! 「それでこれ

        螺旋の覇者

        マガジン

        • 日々の出来事
          1本

        記事

          マジで出掛ける3分前

           私には三分以内にやらなければならないことがあった。  身支度を整え、家を、出る。  次の電車に乗らなければ、完全に遅刻だ。  こんな日に限って昼まで寝てしまうなんて……。  私は慌てて顔を洗い、メイクをする。  三分しかないのだから、塗ってるうちに入らないようなテキトーメイクになってしまうが、仕方ない。描いたって描かなくたって、大して変わらないのだからこの際どうでもいいだろう。  眉毛を片方書き終えたところで、電話が鳴る。  何だってこんな時に!  私は慌てて電話を取

          マジで出掛ける3分前

          青に、潜る

           穴に、落ちていた。  気付いた時には、私は深くて暗い穴の中にいた。  手探りで辺りに手を伸ばしても誰もいない。音も聞こえない。どこまで続くのか、いつ終わるのかもしれない穴の中にいたんだ──。 「あ、目、覚めた?」  目を開けて最初に飛び込んできたのは私のよく知る顔だった。 「……矢島……君?」  会社の後輩。二つしか違わないのに、彼はとてもファニーフェイスで、そのくせ気が利くというか、抜かりないというか……営業先でもウケが良い。  そんな彼が目の前にいることに、違和感。

          青に、潜る

          人生はいつも1/2ではない選択

           生きていれば、選択の繰り返しであり、そしてそこには、悩みがつきものである。  初めて真剣に悩んだのは中学生の時だったろうか。俺は、運動部に入るか文化部に入るかで、迷っていた。  小学校では野球をやっていたのだ。だが、俺の進んだ中学の野球部はクラブチーム上がりが集まるガチなやつ。俺は仲間と楽しくやる野球が好きだったから、あんまりガチなやつは御免被りたかった。  その頃俺が仲良くしていた友人が『美術部に入る』などと抜かしていたこともあり、このままゆる~く文化部で過ごすのもい

          人生はいつも1/2ではない選択

          余命は、ずっとある。【5-5】

          5  マリアと一緒に過ごさなくなってから一カ月近くなる。  自分で決めたことなのに、なんだか心にぽっかりと穴が開いたみたいな気分だった。  やっぱり俺、マリアが好きなんだな。あの日、手を繋いだ感覚が忘れられない。ああ、ほんとはもっとしたい! 抱き締めたり、キスしたり、色んなこと!!  だけど……、  俺は罪悪感ってやつでいっぱいになってた。だってさ、嘘ついて彼女になってもらったんだぜ? そんなの、なしだろ。マリアが好きなのは秋斗なのにさ。  マリアを愛しいと思えば思うほ

          余命は、ずっとある。【5-5】

          余命は、ずっとある。【5-4】

          4  私は足早に去っていくカズ君の後ろ姿に声を掛けたかったけど、すぐに携帯で電話を始めてしまった彼に、声をかけられなかった。  その時、ポロっとカズ君のポケットから何かが落ちた。カズ君は気付いてない。  私は遠くなっていくカズ君の後ろ姿をしばらく見送った。振り向いてくれないかな、って思ったんだけど、一度も振り返ってはくれなかった。  カズ君のポケットから落ちたものを、拾うと、水族館の売店の小さな紙袋。いつの間にお土産なんか買ってたんだろう。  お土産? 誰に? 「も

          余命は、ずっとある。【5-4】

          余命は、ずっとある。【5-3】

          3  俺とマリアの付き合いは順調だった。  放課後デートも楽しかったし、休日に出かけたりもしたし、テスト前には勉強会なんかもやってさ。  俺は、罪悪感は勿論あったけど、なんていうか、マリアと一緒にいられるのが嬉しかったし、一緒の時間を過ごせば過ごすほど、マリアを好きになったし、だからもう、とにかく好きだ、って言い続けてた。  マリアは、最初のうちは俺に気を遣ってたみたいだけど、一緒に過ごすうちにすごくこう、自然になっていったっていうか、昔のマリアみたいになってた。俺が好

          余命は、ずっとある。【5-3】

          余命は、ずっとある。【5-2】

          2  まさかこんなことになるなんて思っていなかった。だって私、秋斗君のことが好きだったんだもん。なのになんで…、 「わかった。私でよければ、いいよ」  カズ君の告白を聞いて、私ったら笑顔でそう答えてたんだよ!!  私の返事を聞いて、カズ君、飛び上がって喜んでて……そんな姿見てたら、なんだか嬉しくなっちゃってさ。単純だよね、私。なんか、必要とされてるってことが嬉しかったんだ。それにさ、カズ君て、昔から変わらず優しいし。 「ほんとにありがと! 俺、マリアのこと大事にする!

          余命は、ずっとある。【5-2】

          余命は、ずっとある。【5-1】

          1 「こんなこと言うのはズルいかもしれないけどさ、俺、あんまり長くないんだよね」 「長くないって……えっ?」  そりゃそうだよな。急にこんなこと言われたら、そういう顔しちゃうよな。俺、すんげぇズルいし最低なことしてるってわかってるんだけどさ、でも、同情でもなんでもいいから、どうしても振り向いてほしいって思っちゃったんだよ。 「あ、ごめん。なんか、嫌な言い方だよね、こんなの。同情買うみたいで」 「本当……なの?」  うわ! やっば! ウルウルの瞳から涙こぼれそうになって

          余命は、ずっとある。【5-1】

          まほうの て

          そこに ふたつのてがあった。 それは とてもちいさなてだ。 このてはすごい! みぎのては おかあさんのゆびをギュ ひだりては おとうさんのゆびをギュ たったそれだけで 「しあわせ」をあたえてくれる まほうの、て そこに ふたつのてがあった。 それは パンやさんのてだ このてはすごい! こむぎこを コネコネぐるん くるくるまるめて オープンへぽい ほかほかのパンができあがり おいしいね、とってもおいしいね まほうの、て そこに ふたつのてがあった それは とこやさんのて

          まほうの て

          死神さんと、俺。【短編小説】

          「死神さんよぉ、早く俺を殺してくれねぇか?」  俺はいい加減うんざりしながら、目の前の黒いもやっとしたものに訴えかけた。  こいつが俺の前に現れたのはもう数日前だ。  最初はこれがなんなのか、わからなかった。目の前がぼやっと黒いものに覆われることがあり、何か目の病気なんじゃないかと思っていた。が、ある日、そのもやが俺に向かって話しかけてきやがった。 「私ぃ、死神なんですよぉ」  間の抜けた声だった。  若い女の子みたいな、しかも頭の悪そうな喋り方。  俺は言ったね、

          死神さんと、俺。【短編小説】

          嘘から出た……【短編小説】

          「ていうかさ、高橋って未知に気があるよね」  目の前でニヤニヤしながら咲良が言った。  私は思わず口に含んだイチゴミルクを吹き出しそうになった。 「ちょ、なにそれ!」  昼休み、中庭のベンチ。朝は寒いけど、今日みたいな天気の日はお日様が心地よいぬくもりをくれる。 「だってさぁ、さっきも授業中未知のこと見てたもん!」  うりうり、と肘で私の脇腹をつつき、咲良。完全に楽しんでる。 「そりゃ、斜め後ろの席だもん、黒板見るとき私の後ろ姿も見えるでしょ」 「ちーがうちがう!

          嘘から出た……【短編小説】

          さよなら、わたし。さよなら、あした。【短編小説】

          誰かがわたしの隣に座ってね、スッ、と手を伸ばすの 伸ばされた右手が、わたしの喉元を捉える わたしは内心ドキドキしながら、だけどすごく期待しながら、少し冷たいその右手を感じる 左手もまた、添えられるようにすっと伸ばされ、ゆっくり、ゆっくりと指に力が入っていく わたしは頭の中が真っ白になって、まるで宙に浮いてしまいそうなほどフワリとした感覚に身を委ねるの トクリ、トクリと音を立てていくわたしの心臓が、次第にボルテージを上げていく… ああ、これでいい これでいいんだ、って頭の

          さよなら、わたし。さよなら、あした。【短編小説】