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思い出の1999年

フリーランスの庭師です。

先月の11月11日は結婚記念日でした。結婚記念日を迎えると、『1999年』を思い出します。世紀末のこの年はなかなかに思い出深い年でした。

先ずはこの年の4月に、当時勤めていたIT企業で課長に昇進しました。当時は『課長島耕作』に憧れていて出世欲も高かったので、念願叶っての昇進でした。

次にこの年の11月に結婚をしました。和暦は平成11年だったので、忘れないようにと語呂の良い11月11日に婚姻届を出しました。30半ばでの結婚は今では珍しい事ではありませんが、当時は両親からは急かされていましたし、一生の伴侶を得られたことは人生最大の幸せでした。

それ以上に思い出深いのは『2000年問題』です。若い人たちは知らないと思いますが、当時のコンピューターの世界では大問題だったのです。

『2000年問題』というのは、1999年から2000年に変わるときに起こりうるシステム障害の事です。

それ以前の多くのコンビューターシステムは日付の『年』を2桁しか持っていませんでした。コンピューター内では99年=1999年と言うわけです。これが2000年になりカウントアップすると00年。これをシステムは1900年と誤認識し、様々なトラブルが発生するだろうということです。

回避するには日付の年を4桁にすれば良いだけのことなのですが、膨大なプログラムを全て変更するのは大変な労力です。多くの企業が数年前から取り組まざるを得ない状況でした。

夢見がちな人たちはノストラダムスの大予言に興奮していましたが、私のように情報システム部門の人たちは2000年問題に頭を抱えていました。

2000年問題は社会問題になっていたため、それをテーマにした様々な書物が発行されました。例えば、銀行のシステムがダウンし現金を引き出せなくなるとか、宇宙衛星が誤作動しカーナビが使い物にならなくなるとか、更には大国の軍事システムが暴走し核のボタンが押されてしまうとか…。もうSFの世界です。

私が勤めていた会社も一年前からシステム対応をしていて、何とか年内に終えることができました。テスト環境で何度かテストをし、問題なく稼働していました。

そしてその日が訪れました。2000年1月1日、元旦です。

メインコンピューターは365日24時間稼働し続けているものなので、申し訳ないと思いつつも、独身の部下に出社してもらいました。

朝の8時半頃、妻の実家でお雑煮を食べていると携帯電話が鳴りました。「やはり来たか…。」と思い電話に出ると、「メインコンピューターが反応しません!」という部下からの電話でした。

「やはりすんなりとはいかないか…。」と苦い思いで「取り敢えずシステムを再起動して。立ち上がったらもう一度電話して。」と部下に伝えて電話を切りました。

食卓に戻り、妻と妻の両親に「これから会社へ行ってきます。」と伝え、朝食もそこそこに着替え始めました。

会社は東京の三鷹、妻の実家は千葉県八千代市。飛行機や新幹線を使う距離ではありませんが、近い距離でもありません。「やはり始めから出社するべきだったかな…。とは言え、結婚して初めての正月だしな…。」などと考えていると、再び部下から電話が掛かってきました。

電話に出ると、「再起動したら正常に動き出しました。大丈夫そうです。」と安堵の声でした。部下に「今日はもう上がっていいよ。ご苦労さん、ありがとうね。仕事始めの日に一杯奢るから。」と伝えて電話を切り、「ふ~、助かった…。」と肩の力が抜けたを覚えています。

こうして2000年問題は大きなトラブルもなく過ぎ去りました。テレビのニュースを観ても、大きな問題は起こっていないようでした。終わってみれば、「いったい何だったんだろう?」という感じです。メディアに踊らされていたような気もします。

昇進、結婚、そして2000年問題と何とも慌ただしい一年でした。でもそのお陰で現在でも結婚記念日を忘れることがありません。

妻に感謝する日、それが私の結婚記念日となっています。

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