見出し画像

ミセス・ノィズィを観たか?

今日も一日お疲れ様です。
最近映画館に行けておらず、ミニシアター紹介ができなくて申し訳ないです。

本日は、現時点で今年の邦画ナンバー1なんじゃないかと思っている傑作、「ミセス・ノイズィ」を紹介します。

皆さんは、一時期ネットで話題になった「引っ越しおばさん」と呼ばれる女性をご存知でしょうか。
布団を叩きながら、大声で「引っ越し!引っ越し!」と叫ぶ姿に何となく見覚えがある方も多いと思います。

この作品のタイトル「ミセス・ノイズィ」は、この引っ越しおばさんのことを指しています。

都会から郊外に引っ越してきた小説家の主人公は、朝5時から爆音で布団を叩き始める隣人と口論になってしまいます。
「あの人は頭がおかしい」
そう感じた主人公は、愛娘を隣家になるべく近づけないように言い聞かせます。
しかし、ひょんなことから娘(5歳くらい)が隣人の家で夜まで遊んでいたことが発覚。
しかも、おばさんの夫に「お風呂に入れてもらった」というのです。
主人公の怒りは爆発。隣人を訴えようと弁護士に相談しにいくのですが。。。

これが前半部のあらすじです。 
この映画の凄いところは後半「引っ越しおばさん側」に視点が180度移ること。時系列も戻ります。

この演出によって「頭のおかしいおばさん」が抱えていた衝撃的な事情が明らかになるのです。

そして終盤、物語は思わぬ方向へと進んでいきます。
小説家の主人公は隣人をモデルにした小説を書き、それが大ヒット!
それをきっかけに、家の周りにはマスコミが殺到。勝手に動画を撮られたり、ネットで悪口を書かれたり・・
一般人だった「引っ越しおばさん」の日常は脅かされていきます。
そして誰もが予想しなかった最悪の悲劇が物語に起こってしまうのでした。。。

この作品を見た時、タランティーノの作品や2019年の大ヒット邦画「カメラを止めるな!」を思い出しました。
なぜなら、「視点の切り替え・時系列の入れ替え」演出が、観客の物語への興味の持続を強力に支えているからです。
それに加えて、この作品は娯楽映画としての面白さと並行して現代に対する強いメッセージ性を持っています。

劇中にこんなセリフがでてきます。

「人間というのは「白」と「黒」で分けられるような簡単な存在ではない」(筆者の記憶より)

モデルになった「引っ越しおばさん」がどんな人間性を持っていたかという点はこの作品にはさほど関係ありません。
しかし、映画が終わった時、物語の前半あれだけ「敵」だと思っていたおばさんに、観客は全く違った感情を抱くはずです。
いわゆる「どんでん返し」がメッセージの強調のためにうまく機能しているのです。

劇場を出る時「面白かった!」という単純な快感とともに、「正義とは」「社会とは」といった少し哲学的な問いを思わず考えてしまいました。

公開から時間が経っているため、ミニシアターでの公開は出町座さんに限られていますが、サブスクにもそろそろ出てくると思うのでそちらでも是非。
観た後後必ず誰かに勧めたくなるような感動が、皆さんを包み込むと思います。

ps ちなみに主人公は「あの子は貴族」で門脇麦さんのお姉さんを演じられた、篠原ゆき子さん。2本続けてみると面白いかも!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?