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庭ぐらしダイアリー 香りのある生活#2

9月の香り、沈香(じんこう)。香りを嗅ぎながら、冊子をめくる。


「銀閣寺」
心の中の記憶のカケラが、煙とともに蘇ってくる。

わたしは、初めて実際にみた時から、「銀閣寺」が好きだった。
「金閣寺」の派手さに比べたら、言っちゃあなんだが、とても地味だ。

そもそも銀色じゃないやん。
関西人のわたしは、生意気にもツッコミを入れていた。
色で名前がつけられてると思っていた当初、言われるまで、これが銀閣寺とすら思わなかった。

ただ、一目みた時から、目を奪われていた。
いわゆる一目惚れみたいなものかもしれない。
渋い木の構造部分、周りの静かな空気感、池の向こうのスッと立っている佇まい。
自己主張はないけれど、確実にその静かな存在感を示している。
じっとその姿を目に入れんとして、惜しみながらその場を立ち去った。
(しばらくは、携帯の待ち受け画面にしていた時代もあったのは秘密!)

帰りに余韻に浸りながら歩いた、哲学の道。
京都はどこも雰囲気があるが、ここは中心の四条河原町や三条とも、叡山電鉄の方とも違う。
考え事をしながら考えたり、ただ黙って大事な人と歩いていたいような場所だった。
その雰囲気に銀閣寺がなんだかぴったりな気がして、満ち足りた気持ちになった。
ちょっと背伸びして大人になったような、そんな幼い記憶。

そんな銀閣寺の雰囲気が、この沈香の香りにはある。
香りが記憶を引き出すある歌が、話題になったが、確かに香りには物語がある、と毎月気づかされる。

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