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niwagurashibooks 「mürren」

「庭」と言うより「山」の本なのだが、わたしが好きなZINEがある。
それが「mürren」だ。


編集者は、若菜晃子さん。山雑誌の代表格である「山と渓谷社」にいらっしゃった女性だ。
シンプルで力強い言葉と、山への愛情が詰まった本を発行していらっしゃる。
大きい出版社ではできない、一冊一冊工夫された丁寧さ。
見かけると、手にとってしまうものだった。

わたしの手にあるこの冊子は、折りたたんで半分に収納できるようになっている。
若菜さんが、年に三回東京周辺で開催していた「山でパンとスープの会」。
名前の通り、山に登ってスープを作って食べて下りてくるというものだ。
この号では、その会のことがまとめられている。

中身はスープの作り方、山の簡単な地図とエッセイがシンプルにまとめられている。
味のある挿絵、シンプルな線で記される地図、自分でも簡単に作れそうなスープのレシピ。
ページをめくっていると、ふと頭の中に山に登っている時の情景が浮かぶ。

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(写真は上高地)

一番初めに頂上に登ったのは、兵庫県の六甲山だった。
その道中があまりにもしんどくて、「ここで終わってもいい」と何度も思った。
道中はアップばかりかと思いきや、実際に中に入ってみると、アップダウンがある。ダウンのあとの急激なアップに何度も苦しんだ。
ようやく着いた山頂は、いかにも山頂!と言う感じもなく、「え?ここ?」みたいな感じだったことを覚えている。
よく聞く「達成感」もあまり感じられず、元来た道をしずしずと下りた。
下りながら、「もう一生山なんか来るもんか!」とうらめしげに思っていた。
そんなわたしが、今も時々山に登っているのはどうしたことであろうか。
恨みは長くは続かず、記憶は都合のいいように変わっていき、ふと「また登ろうか!」とか言ってるのである。
山には、好き・嫌いだけでは語れない、山に登った人にしかわからない、この感覚。
そんな苦しくも楽しい「山」と言うものに魅了された感覚がじわじわとやってくる。

この小さな冊子は、山からの招待状だ。
何も難しい事はない。
ただ、自分がただ好きなように、楽しめばいい。
山ごはんを楽しむのもよし、植物観察するのもよし。
運動がてらいくのもよし、友達と楽しむのもよし。
ただ、行く時はどんな低山でも準備を怠らないようにしていくこと。
山はいつでも、私たちを待ってくれている。

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