見出し画像

niwagaurashi books 「百羽のツル」

本日は、友人からいただいた「百羽のツル」をご紹介します。
とてもシンプルな冊子。
百羽のツルが集団になって、渡りをしている姿が描かれています。
文章も、絵も、シンプルさと余白が印象的でした。
だからこそ、奥行きを感じるのです。
ツルと、彼らが飛んでいく風景が、まるで自分の目の前にあるように迫ってくるようです。

この物語を書いたのは、花岡大学さん。
仏教の僧侶でありながら、仏典を元に作家活動をされていた方です。
だからなのでしょうか。
この物語にも、お寺のような静けさと清らかな空気を感じるのです。

物語を読んでいて、渡り鳥が協力して厳しい渡りを行う話を思い出しました。
と同時に、登山と似ているなとも思ったものです。
先頭に行くものは、どうしても一身にその厳しい風を受ける。つまり、一番負担のあるものなのです。
冬の登山でもそうです。
近いうちに紹介したいのですが、わたしが大切にしている本の一つに「孤高の人」という小説があります。

装備も十分でなかった当時、1日で約100キロもの六甲の登山道を縦断してしまった男・加藤文太郎をモデルにした作品。
その作品の中に、先に雪の中に道を作る人が、後ろからついてくるだけの文太郎に苛立つシーンがあります。
前で道を作ってくれれば、後ろをついている人は、そこをスキー板で滑っていくだけで楽。だからこそ、しんどい立場の先頭の人は、怒るのです。「泥棒だ」と。
だからこそ、負担を軽減するために、パーティを組んで、交代で道を作っていくのです。

このツルたちも同じです。
ともに、ツルは協力して、渡りを行います。
ある時、突然一人のツルが力尽き、気を失って落ちていきます。
そんな時、他の99羽のツルはどうしたのでしょうか。
続きは、ぜひ冊子を開いて自分の目で見て欲しいです。

秋の夜に、一人静々とこの冊子を開きます。
この短いストーリーを何度も読んでいます。
読んでいる、というより、見ている、が近いかもしれません。
きっとまた、ことあるごとにこの本を開くことでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?