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遠く遠く晴れていた冬の空陰にこそ雪は白くあるもの(抒情詩)


遠く遠く晴れていた冬の空陰にこそ雪は白くあるもの

あの遠く遠く晴れていた
冬の空の下で
寒々とした陰にあった
残り雪のように

それはいずれ消えていく
けれど
またいつかの寒い夜に
疲れ果てた家路の
街燈にひらひらと舞う雪のように

愛とは何か
わたしたちは知っている
言葉は未だ知らないままに
形だけを置き去りにした

光の渚に裸の足跡だけを残して
やがて消えてしまった影は
夢にももはや表れはしない

とても寒い月の夜に
裸足のままで消えてしまった
何処にも帰る処の無いもの

遥かな北の地を想いながら
冷たい解放を待ち望んでいたものは

やがて
そのことすら分からなくなって
二度と戻れない
何もない空へと
消え昇っていった